朝日新聞の土曜版に「悩みのるつぼ」という人生相談コーナーがある。昨日は「私の万引きをやめさせて下さい」という16歳の女子高生の相談に評論家の岡田斗司夫氏が「なぜ人は商品にお金を払うのか?」という文章でこたえている。
「どうしてもほしい!」という欲望と「その理由づけが甘い!」という理性が葛藤したあげく万引きにいたると相談者はいう。あるものがほしい。けれどもそれは自分にとって絶対に必要なものではない。だからお金を払いたくない。ずいぶんと自己チューな三段論法があったものだ。自分がなぜ万引きをするのか、どうしたらやめられるのか教えてほしいという相談者は、自己分析にはたけているが社会の成員である他者への想像力が欠けている。
そのあたり、岡田氏は頭ごなしに叱りつけるのではなく実にソフトなアプローチでものの道理をときほぐしてみせた。近所のたい焼き屋の閉店という身近な話題をきっかけに生計を立てることの厳しさ、商品に正当な対価を払うことでまわっていく経済の仕組みを小学生にもわかるやさしい言葉で説明してくれた。商品を買うことで好きという気持ちを目に見える形で伝えることができるというメッセージは彼女に伝わっただろうか?
この世界は、あなたが思っているほど強くもないし、安定もしていません。はかなくて、びっくりするぐらい不安定です。誰か一人の善意で美しい話も生まれるし、誰か一人の悪意でも残酷で醜くなってしまいます。
ひとりひとりのふるまいがもつ意味を考える、そういう想像力なのだろう、いま求められているのは。