子どもの頃けっこう好きだった遊びに山崩しがある。地面の砂をかき集めて作った山のてっぺんに棒をさす。その砂山を囲むようにしゃがみ順番に両手で砂をかき取っていく。自陣に運んだ砂の量ではなくて山に突き刺した棒を倒してしまった人が負けという単純な遊びなのに、飽きずに繰り返した覚えがある。
最初のうちは欲張ってできるだけ多くぶんどる。山の斜面が大きくえぐられていまにも棒が倒れそうになってくると息をひそめてちょっとずつかき取る。このあたりのかけひきがたまらない。刻々と近づくカタストロフィーに胸が高鳴る。
子どもは遊びのかたちで人生をシミュレーションしているようだ。ちょっとずつ人生の持ち時間が削られ砂山のてっぺんの棒の傾きが気になる今日この頃。しかし山崩しの勝負が面白くなるのはこれからのはず。山崩しの山が人生のメタファーになるなんて考えもしなかった、あの頃は。