webちくまに隔週で連載中の華恵さんのエッセイを(以前もふれたように)私はとても楽しみにしている。ちょっと前の第48回「朝食を笑うな」はときどき読み返したくなる文章だ。前半は高校の家庭科実習での朝食作りのエピソードが華恵さんらしく軽快に生き生きと綴られている。後半はちょっと重い。「将来どういう人と結婚したいの?」という、この年頃の少女になら誰でもちょっと訊ねてみたい質問に真面目に答えようとした華恵さんのこころに、小学校二年生の頃のある日の朝食風景がよみがえってくる。
簡単に言えば華恵さんのトラウマが引き出されてしまったわけだが、そのあたりの微妙な感情のアヤが見事にすくいとられていて、小説の一場面のようにそのエピソードが胸にくいこんでくる。華恵さんのみつけた「相手の朝食を笑わない人」という答えも秀逸だ。華恵さんの家庭はふつうの家族とちょっと違う。そのことを幼いながらに感じ取っている少女の気持ちを17歳になった今書けるということがすばらしい。
家庭と食の情景とは切り離せない。ことに朝食にはそれぞれの家庭の素顔が出る。華恵さんの見つけた真実はちょっとせつない。