岩澤の梵鐘・銅像

梵鐘・銅像造りや京都の話題を綴っていきます。

沙羅双樹の花言葉は・・・

2013-06-28 19:52:02 | 梵鐘

庭に沙羅双樹(さらそうじゅ)の花が咲き始めました。沙羅双樹、仏教とは深い関わりがある花です。自分の寿命を悟ったお釈迦様は「形あるものは必ずこわれ、生あるものは死ななければならない」と最後の説法をして沙羅双樹の下で涅槃に入り、現世での生涯を閉じたとされています。

庭に、沙羅双樹の花を見つけた嬉しさに任せて、会社の事務所内にて、花瓶に入れて飾りました。ところが花瓶に入れて数十分もしないうちに、散ってしまいました。
平家物語の冒頭にも
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす・・・」とあります。

鐘の声と同じように、沙羅双樹の花は、人生のはかなさや全てのものが移り変わるものであることを表わすのだなと、しみじみと感じられました。

人生は、はかない、だからこそ一瞬、一日、一年を大切に精進しよう、そう思います。

先日も四国へお寺様に梵鐘のお納めに参りました。ご住職様、檀信徒の皆様、関係者の方々がお集まりになり、大変喜んで頂きました。お納め後、ご住職様がお撞きになった鐘の音を聴かせて頂きながら感じたのは、そのお寺様にとっても、檀家の皆様にとっても、作り手である私共にとっても、その梵鐘を作るのはたった一度きりということでした。二度とないご縁に感謝して、一つ一つの鐘、銅像、銅器に心を込める大切さを改めて、感じました。

ちなみに、沙羅双樹の花言葉は「愛らしさ」だそうです。たとえ仮に生涯は短くても、いつも笑顔で愛らしい、そんな人を目指してこの夏を乗り切りたいですね。


お釈迦様の生まれる前~壁面レリーフ制作

2013-06-21 18:40:58 | 銅像

夏至になり、ようやく梅雨らしい恵みの雨が降り出しました。京都では、あと1週間で祇園祭が始まります。町が祇園囃子の音色と熱気で包まれ、地元にとっても待ち遠しい季節です。

話は変わりますが、先日、関西のお寺様に会館の壁面に付ける、レリーフをお納めしました。写真の通り、お城の上空を象が舞う絵です。これは、お釈迦様が生まれる前の夢のお話です。

お釈迦様を懐妊する前夜、母親であるマーヤ夫人が、空を舞う白象が右脇に入る夢を見たそうです。インドのヒンズー教では象は神聖な生き物とされているため、縁起の良い夢でした。

そのお話を物語っているレリーフを制作させて頂きました。初めにスケッチを起こし、粘土型を制作します。

その後、鋳型制作に入り、梵鐘と同じく、溶かした金属を流し込む火入れを行いました。

磨きの作業が終わり、着色する前の写真です。

完成し、お納めした写真です。

象が空を舞い、お城へ向かうロマンチックな様子が表されています。

枕草子で書かれるように、昔から「夏は夜(が風情がある)」と云われます。日中は暑さが続きますが、夜はレリーフのように、素敵な夏の夜の夢が見られるといいですね。


 


おかげさまで創立69周年

2013-06-14 18:21:10 | 梵鐘

 

全国的に夏日が続きます。京都でも日中35度を越える日が出て参りました。夕方の風が心地良く感じられる季節です。

おかげさまで、当社は今月の3日で、創立69周年をお迎えすることができました。会社組織として創立以来、約5000口の梵鐘、数々の銅像・銅器をお納めさせて頂きました。これもひとえに、全国・海外のご寺院様、檀信徒・関係者の皆様、先代より工場を支え続けてくださった従業員の皆さん、関係者、有縁無縁の方々のおかげさまです。

創立記念日当日は、社内で創立者 岩澤 宗徹(初代 岩澤 徹誠)の眠る、京都市 嵯峨釈迦堂 清涼寺様へお参りに行って参りました。「現代の琵琶法師」としても有名な、当寺の金森昭憲上人のお勤めとご法話を頂戴させて頂きました。

その中で、次のお言葉を頂戴致しました。

「咲いた花見て喜ぶならば、咲かせた根元の恩を知れ」

良いこと、成果があると、ついつい目の前の結果だけに目がいきますが、その成果、自分の姿の前には先人の智恵・努力、諸先輩方からのご指導、ご先祖様の足跡、父母のおかげさまがあってのことなんですね。身に沁みて、心がけようと感じました。

来週は山陰から梵鐘の火入れ式にお寺様がお越しで、暑い中ですが工場は大忙しです。来年70周年に向け、一日一日を大切に精進致します。

*写真は、先日、広島に行った折、拝見した当社昭和25年製の梵鐘です。鋳物師としての号、 初代 岩澤 徹誠の名が鋳込まれています。

 

 


世界に一つだけの鐘

2013-06-07 18:32:03 | 梵鐘
 
 
 
雨が降らない梅雨が続いていますが、蛍が見頃になりました。京都でも、岡崎の哲学の道、鴨川の一部などで見られます。
 
今日は梵鐘の鋳造火入れ式でした。今回は大変、暑い中、東京と関西から2箇寺の御住職様、壇信徒の皆様がお越しになりました。砂でできた鋳型に金属の液体を流し込む、梵鐘づくりのクライマックスの場面です。
 
ところで、梵鐘はどのくらいでできるか、ご存じでしょうか。
よく「梵鐘は1ヶ月ぐらいでは?」とか「作り置きしてる分があるのでは?」と言われるのですが、そうではありません。
通常、半年から一年以上かけて制作します。まず、天然の山砂で固めた鋳型を作ります。これに約1ヶ月から2ヶ月、鋳造火入れをした後に仕上げ作業にかかります。これにも約1ヶ月から2ヶ月かかり、その上で養生と呼ばれる枯らし作業(詳しくは当社ホームページ「梵鐘の製作方法」をご覧下さい)を行います。すべて、職人による、手仕事の中で梵鐘は生まれます。
*写真は、砂で作った梵鐘の鋳型、鋳型の組み立て、鋳型への火入れの様子です。
 
梵鐘をお作りになるお寺様、皆様の想いはそれぞれ、世界に二つとありません。同様にその想いに応える梵鐘も世界に一つしかない音色を響かせてくれます。