かんだ

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悪天下での行動

2013-08-15 16:15:41 | Weblog

 7月下旬、中央アルプス ・ 宝剣岳で韓国人20人パーティが遭難し、4人が亡くなられた。新聞と週刊誌から電話取材があって、「無謀登山ですよね」と同意を求められた。悪天下での行動を無謀登山と決めつけるのは容易いことだが、その背景を考えることの方が重要だと思う。今回の遭難が無謀登山だとして、それは韓国人の問題ではなく登山者の問題なのだ。

 低体温症で8人が遭難死亡した、トムラウシ山の事故は、今回の事故と同根だと、ぼくは考える。悪天候なのだから、登山中止にしたらいい。言うのは簡単である。しかし、せっかく北海道まで来て、あるいは、せっかく日本まで来たのだから登山は中止にしたくない、という気持ちが働いて登山を強行するパーティも少なくない。トムラウシ山然り、宝剣岳然り、であろう。

 トムラウシ山でも同日、事故パーティと同じコースを悪天候の中行動し、問題なくトムラウシ温泉に下山したパーティもある。宝剣岳でも同じことが言えよう。彼らにとっては悪天候も折り込み済み、登山強行ではなく予定内の行動だったのだ。で、あるとすれば、それは無謀登山ではないということになるのか?

 7月25日、ガスの中、北アルプス ・ 薬師岳に登って来た。前々日富山駅前のビジネスホテルに泊まり、前日雨の中、折立から太郎平に上がった。ホテルを出るときから雨降りだった。登山を中止するなんてことは頭に浮かんでこなかった。雨具をしっかり着込み、折立から登り始める。やがて土砂降りとなり、コースは川になった。登り始めは暑いくらいで風もなく、低体温症の心配はなかった。雨の中でも登りの辛さを楽しみながら、太郎平小屋を目指した。

 中央アルプスを縦走したときのこと、木曽殿山荘を出たときは雲一つ無い青空だったのに、熊沢岳を越えた辺りだったろうか、気がつくと空が灰色になっていた。すぐ雨具着用を指示、着込むか着込まない内に強い西風が吹き、冷雨が降り始めた。パーティを二つに分け、比較的歩ける組はサブリーダーと先行させた。足の弱い組はぼくと行動を共にする。「極楽平まで休憩しません。こんな風雨の中で立ち止まったら低体温症を招くからね。バテないようにゆっくり歩くから頑張ってね」「はいっ」という元気のいい声が返ってくる。

 極楽平まで頑張り、一歩千畳敷側に下ると風はなく、空気は温もりを取り戻して、そこは天国みたいだった。

 くろがね小屋に泊まって、冬の安達太良山を目指したときのこと。朝、小屋の扉を開けて一歩出ると体が飛ばされそうな猛吹雪。「登山は中止して、ただちに下山します」。なんてこともあった。駐車場まで下ってアイゼンを外す。岳温泉で湯舟に手足を伸ばせば、そこは極楽だ。

 悪天候下での行動は、判断一つで「雨が降っても楽しい登山」になり、また「無謀登山」になったりする、と思う。


岩崎登山新聞 http://www.iwasaki-motoo.com/home.html
無 名 山 塾 http://www.sanjc.com/