かんだ

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ベテラン考

2012-07-17 10:16:42 | Weblog

 ベテランとは、その道に精通している人を指す。

 時々、山で遭難事故がある。気象遭難が多い。その事故の当事者を、時々新聞は登山歴10年のベテランと報道する。あるいは、「モンブランやキリマンジャロにも登っている」ベテランと報道する。

 登山歴10年は、ベテランであろうか?ベテランの人もいるだろうし、ベテランとはとても呼べない人もいる、というのが実状だ。

 登山歴10年といっても、年3回の登山では、10年のキャリアがあったって、山行回数は30回だ。一ヶ月2回登山している人は、経験年数が3年でも、山行回数は72回になる。どちらがベテランと呼ぶにふさわしいか。

 ここまでの話しでは、3年でも72回山行を重ねている人の方がベテランと呼ぶにふさわしい、と思われるだろうが、ちょっと待って。年3回でも、各山行毎に自分で企画し、自分がリーダーシップを執った登山なら、かなりな登山力を身に着けているのではないか。反対に年間24回の登山をやっていても、旅行会社の登山ツアーだったり、ガイドに連れられての24回では、ベテランと呼ぶにふさわしい登山力を身に付けているかは、疑問と言わざるをえない。どんな登山キャリアをもってベテランと呼ぶか、それが問題だ。

 例えば富士山、無風快晴でなんの問題もなく山頂を踏んだ人と、風雨で八合目から引き返した人と、どちらが富士山登山のノウハウを身に付けたか。答えはない。山頂に立つのが精一杯で、ノウハウ構築にはほど遠い人もいるだろうし、あっけなく山頂に立った人でも、ノウハウ構築できた人もいるだろう。

 風雨で登頂を阻まれるという貴重経験をしても、ノウハウ構築できる人もいれば、できない人もいる。

 7月13日付、朝日新聞朝刊一面に、「豪雨死亡16人に」という見出しで、熊本・大分の豪雨被害が報じられていた。「福岡管区気象台の予報官は『ここまで集中して大雨になった例は過去にはない』と話す」と、記事にはあった。

 3・11による津波は、千年に一度の大災害と言われる。我々人間は、自分の経験を越えるプレッシャーには、対応力が低いように思われる。

 無風快晴も自然なら、過去に例のない豪雨も自然、自然の猛威は人智を越えているのだから、自然に対してベテランになりようがない。登山は、自然をプレイグラウンドにしているのだから、登山者が山行回数を重ね、何回となくシビアな状況を潜り抜けてきたとしても、ベテランと呼ばれてはいけないのではあるまいか。

 谷川岳天神尾根で雪崩に流されたり、丹沢同角沢で10m滑落したが、ノウハウが身についたとは思えない。初心忘れずべからず、畏怖の気持ちを失わず、山に臨みたい。


岩崎登山新聞 http://www.iwasaki-motoo.com/home.html
無 名 山 塾 http://www.sanjc.com/