【将棋】山田定跡をひたすら称賛するブログ

居飛車急戦党が、日々の対局記録を綴ります。
活動場所はリアル(将棋道場)がメインです。
あと、本の感想が少々。

▲4五歩早仕掛けに△四間飛車が玉頭銀で対抗する場合

2024-07-17 09:28:38 | 将棋

私は、道場で将棋を指すことは人付き合いの一種だと考えています。不特定のお客さんと自動で手合いがつけられるのは、人見知りをする自分にとって気が楽です。

もちろん、普通の意味での人付き合いと同様に、楽しいことばかりでは無いです。

以前、関西将棋会館で指した時、お相手は2階級上だったので、香落ちの下手を持ちました。早石田にされたので、自身の研究(下記リンク)に基づき平手の後手と同じ感覚で指していました。

(過去ブログ)【局後反省】先手早石田対策

心に引っ掛かったことその1。下図は殆ど定跡どおりの進行ですが、お相手は△2八角成と指すのに30秒程考えられました。その前の△5五角がノータイムだったので、失礼ながらもちぐはぐな感じがしました。

その2。下図で自然なのは△7二金です。しかし、お相手は△7二銀を選ばれました。私に持ち角を打たせる以外の狙いはあるのでしょうか。私は前述の△5五角の件を拠りどころにして、「他の狙いは無い」と踏みました。

なので▲6六歩と応手したところ、お相手は△7一金と指されました。多分、こっちの方が好形な自陣というご認識なのでしょう。感想戦はしなかったので真意は分かりませんが。

この辺りで私の意見を申し上げます。将棋には残念ながら射幸心を煽るような奇襲戦法が色々あります。もちろん、プロの公式戦でも現れていますし、棋力の高い方が採用するなら立派な作戦だと思います。しかしその一方で、相手が自然に応手すると序盤早々に良くなることに惹かれて採用されるアマチュアも多いのが実態です。

将棋に真面目に取り組んでいる人は、過去に同じ奇襲を食らって悔しい経験をしている訳ですから、初段レベルでも対策を持っているものです。なので、棋力が低いと奇襲の成否は相手の対策の有無に依存し、自由対局の下では結局のところ運ゲー(※)となってしまいます。

運ゲー自体を悪く言いたいのでは無いです。問題提起したいのは、世の中には運ゲーとして優れたもの(麻雀やポーカーなど)が色々あるのに、なぜわざわざ将棋を選ばれるのかということです。

以上の見解をご覧になって、哲学中心主義のいかがわしさ、知的貴族主義の高慢さ、啓蒙主義の押しつけがましさを読者が感じるなら、それは私の論が未熟であるためなので、忌憚のないご意見をコメント欄にお願い致します。

(※1)運ゲー:「運の要素が強いゲーム」の略称。テレビゲーム文化から生じた俗語。この言葉が持つ文脈は[1]をご参照下さい。

 

さて、今回は▲4五歩早仕掛けに対して、後手四間飛車が△5四銀で対抗した時の先手側の応手を考えます。下図が課題局面です。

私の将棋の先生は▲5五歩を推奨しています。銀が単独で突進してくるのは、むしろありがたいと考えなさいとのこと。なので私もそれに従います。▲5五歩、△6五銀、▲3五歩、△同歩、▲3八飛として・・・。

後手の応手は色々ありますが、今回は△4五歩を検討します。▲3五飛、△7六銀、▲3七桂、△4六歩、▲4五桂として・・・。

もし後手が△2二角とかわすなら、▲2四歩、△3四歩、▲2五飛以下で先手が良くなるというのが、畠山(鎮)八段のご見解です[2]。

しかし、当該棋書がカバーしていない応手が振飛車側にあります。渡辺九段は△1五角とかわす手を示されています[3]。

以下、▲5四歩、△同歩、▲1一角成、△3四歩、▲同飛、△4五飛として・・・。

次の△8五飛が厳しいので、▲7七歩と銀を追い返そうとするぐらいですが、放置されて△5五桂~△4七歩成とされ、振飛車の攻めがギリギリながらも通ります。

 

それでも私は、将棋道場の先生の教えに従って、▲5五歩と指すでしょう。先生はあまり多くを語らないタイプなので、理由は私自身が推測するしかありません。当ブログでは手順をさらっと流してしまいましたが、実は先手・後手ともに一手一手に複数の候補手が存在するので、実際には難解です。その上、▲5五歩はプロの実戦でも現れており[4]、何回かの対局を経て洗練されたのちに当該手順が棋書に掲載されたと推定します。

プロですらそうなのですから、私にようなアマチュアはなおさら、▲5五歩以降を色々指してみて成功や失敗などの実戦経験を沢山積むことは、▲5五歩の理解に近づくのに必要と思われます。

ただし、先生のアドバイスは、私の棋力やクセなどを考慮してのことです。一方で、棋書は一般論を示すべきですから話は別です。

 

 

【参考文献など】

[1]ピクシブ百科事典、「運ゲー」、https://dic.pixiv.net/a/%E9%81%8B%E3%82%B2%E3%83%BC、閲覧日:2024年7月17日

[2]畠山鎮、「将棋・振飛車破りの基本」、マイナビ、p. 42、2017年

[3]渡辺明、「四間飛車破り【急戦編】」、浅川書房、p. 51、2005年

[4]局面ペディア、http://kyokumen.jp/positions/ln1g3nl/1ks1gr3/1pppp1bpp/p3spp2/4P2P1/P1P2PP2/1P1PS3P/1BK1GS1R1/LN1G3NL%20w%20-、閲覧日:2024年7月17日


角落ち(矢倉定跡)での上手速攻の受け方

2024-07-06 21:53:06 | 将棋

三大幸福論(古い順から、ヒルティ[1]~[3]・アラン[4]・ラッセル[5])の内、自分の好みはラッセル幸福論だけど、最も勉強になったのはヒルティ幸福論だった。この幸福論は宗教的と聞いていたが、思い切って読んでみると、宗教の本来の姿は個人の自由意志と調和するという新しい発見を得た。以前は、宗教は人々を惹きつけて共同体を形作るための権威だと捉えていたが、その考えはニュースの新宗教批判のイメージに引きずられたものでしかなかった。

ヒルティ幸福論を無理矢理に一文で纏めると、人間は超感覚的なもの(⇒神)を信じてその御心に従うことで、享楽的な生き方を脱して、真の幸福を得るための挑戦を続けることができる…というものだ。簡単に言えば、信仰は主体的な個人に勇気を与えてくれる訳だ。この説明は、簡素ながらも力強い印象を受ける。

ただし、超感覚的なものを基礎に据えてそこから論を展開するやり方は、私のような素人には強力過ぎて怪我をするだけだろう。普通の人は物事の説明を先に作って、それに都合の良い神さまを無意識に据える。これは、ヒルティとは逆のやり方だ。なので、論の進め方はラッセルの方を手本にしたい。

 

さて、前回のブログでは、角落ち下手を課題の一つに挙げましたので、今回はその研究をします。一例として上手側が速攻を仕掛ける場合を考えます。

文献[6]によれば、下手は序盤は左辺を固めて上手の仕掛けを封じるのが方針の一つとされ、私もこれを採用します。上図では上部を早く固めるべく、▲5八金右としています。一方で、▲7八金は角落ちでは後で良いです。

ケース①:上手が単純棒銀を仕掛けてきたら?⇒枚数の受けが間に合う(下図)

 

ケース⓶:上手が右銀で角頭の歩(7六)をかすめ取ろうとしたら?⇒△6五銀より先に、▲6六歩が間に合う(下図)。

 

ケース③:上手が早繰り銀を仕掛けてきたら?⇒△7五歩に対して、▲同歩、△同銀、▲6五歩として、次に▲5五角で飛車のコビンを攻める。

 

ケース④:上手が右銀と袖飛車で攻めてきたら?⇒△7五歩に対して、▲4六角、△7六歩、▲6五歩、△7三銀、▲7八飛として、7筋を逆襲する。

とりあえずは、こんなところでしょうか。

 

【参考文献】

[1] ヒルティ著、草間平作訳、「幸福論」第一部(改訳版)、岩波文庫、1961年

[2] ヒルティ著、草間平作・大和邦太郎訳、「幸福論」第二部、1962年

[3] 同、第三部、1965年

[4] 神谷幹夫訳、「アラン幸福論」、岩波文庫、1998年

[5] 安藤貞雄訳、「ラッセル幸福論」、岩波文庫、1991年

[6] 所司和晴、「新装版 駒落ち定跡」、日本将棋連盟、2023年