将棋道場では、学校が夏休みであるためか、新規のお子さんが何人か来るようになり、平日でもよく見かけます。喜ばしい事です。
他方で、将棋は始めてから1勝するまでが遠い(私自身も悩みました)。新規の子供同士であれば勝ったり負けたりでしょうが、元々将棋道場に通っている子供たち(2級~五段)を相手にする場合では、級段位差相応の駒落ちの手合いでも勝つのは難しいと思われます。
私も四枚落ちで上手を持たせて頂いたのですが、部分図で以下のような局面となりました。最近通いだしたといっても以前から親と指していたためか、2筋は突破できないことは分かっているのでしょう。結局、1五の銀が立ち往生したまま終局を迎えてしまいました。そこで、感想戦では例の▲2三銀成の攻め筋を教えました。興味無さそうでしたが、小学校低学年なので仕方無し。
それでは、次回の四枚落ちの対局で、もし彼(彼女)が例の▲2三銀成の筋を見せてきたなら、私は先生から教えて頂いた沢山の紛れ筋を駆使して、全力で勝ちに行くべきでしょうか。否。目先の将棋に勝つよりも、将来強くなった彼(彼女)に勝つ方が充実感が大きい。私は「将棋は定跡どおりに指すもの」と考える理由の一つは、アーリーサクセス(Early Success)[1]の積み重ねが物事の上達において重要であるためです。ゆえに、手筋の▲2三銀成は初めて勝って貰うまでは通すべきです。四枚落ちの棒銀戦法に懐疑的な先崎先生ですら、「▲2三銀成は名手であり、この棒銀戦法の骨子である」[2]と認めているくらいですし。
そこで、今回は四枚落ちで▲2三銀成された後から上手がカウンターアタックする指し方を検討します。▲2三銀成の後に上手の受け辛い将棋となるのは歩切れだからです。対策として一歩を入手するために、下図のような陣立はいかがでしょうか。上手玉を一段上げて、最速で△7五歩と突っかけると、▲1一歩成の後のタイミングになります。
これに対して、下手は実戦心理としては▲同歩と取るでしょう。△同金、▲2一と、△3四銀とした時に、下手の飛車が素通しでありながら成り場所が無いのがポイント。
素朴に▲1三香成なら一旦△7三桂と力を溜めて、次に下手に緩手が生じれば、上手は飛車を苛めに行くか5筋に殺到するかを選びます。
もし、下手が▲2二と、△4二金、▲3二と、△同金、▲2一飛成と指してくる強者なら(下図)、上手は中段玉で粘っても99%負けるでしょうから、次の対局で▲2三銀成を防ぐように指せばよい。
【参考文献など】
[1] 三枝匡、「経営パワーの危機」、日経ビジネス人文庫、p. 244、2003年
[2] 先崎学、「駒落ちのはなし」(電子書籍版)、日本将棋連盟、p. 73、2012年