【将棋】山田定跡をひたすら称賛するブログ

居飛車急戦党が、日々の対局記録を綴ります。
活動場所はリアル(将棋道場)がメインです。
あと、本の感想が少々。

角落ち(矢倉定跡)での上手速攻の受け方

2024-07-06 21:53:06 | 将棋

三大幸福論(古い順から、ヒルティ[1]~[3]・アラン[4]・ラッセル[5])の内、自分の好みはラッセル幸福論だけど、最も勉強になったのはヒルティ幸福論だった。この幸福論は宗教的と聞いていたが、思い切って読んでみると、宗教の本来の姿は個人の自由意志と調和するという新しい発見を得た。以前は、宗教は人々を惹きつけて共同体を形作るための権威だと捉えていたが、その考えはニュースの新宗教批判のイメージに引きずられたものでしかなかった。

ヒルティ幸福論を無理矢理に一文で纏めると、人間は超感覚的なもの(⇒神)を信じてその御心に従うことで、享楽的な生き方を脱して、真の幸福を得るための挑戦を続けることができる…というものだ。簡単に言えば、信仰は主体的な個人に勇気を与えてくれる訳だ。この説明は、簡素ながらも力強い印象を受ける。

ただし、超感覚的なものを基礎に据えてそこから論を展開するやり方は、私のような素人には強力過ぎて怪我をするだけだろう。普通の人は物事の説明を先に作って、それに都合の良い神さまを無意識に据える。これは、ヒルティとは逆のやり方だ。なので、論の進め方はラッセルの方を手本にしたい。

 

さて、前回のブログでは、角落ち下手を課題の一つに挙げましたので、今回はその研究をします。一例として上手側が速攻を仕掛ける場合を考えます。

文献[6]によれば、下手は序盤は左辺を固めて上手の仕掛けを封じるのが方針の一つとされ、私もこれを採用します。上図では上部を早く固めるべく、▲5八金右としています。一方で、▲7八金は角落ちでは後で良いです。

ケース①:上手が単純棒銀を仕掛けてきたら?⇒枚数の受けが間に合う(下図)

 

ケース⓶:上手が右銀で角頭の歩(7六)をかすめ取ろうとしたら?⇒△6五銀より先に、▲6六歩が間に合う(下図)。

 

ケース③:上手が早繰り銀を仕掛けてきたら?⇒△7五歩に対して、▲同歩、△同銀、▲6五歩として、次に▲5五角で飛車のコビンを攻める。

 

ケース④:上手が右銀と袖飛車で攻めてきたら?⇒△7五歩に対して、▲4六角、△7六歩、▲6五歩、△7三銀、▲7八飛として、7筋を逆襲する。

とりあえずは、こんなところでしょうか。

 

【参考文献】

[1] ヒルティ著、草間平作訳、「幸福論」第一部(改訳版)、岩波文庫、1961年

[2] ヒルティ著、草間平作・大和邦太郎訳、「幸福論」第二部、1962年

[3] 同、第三部、1965年

[4] 神谷幹夫訳、「アラン幸福論」、岩波文庫、1998年

[5] 安藤貞雄訳、「ラッセル幸福論」、岩波文庫、1991年

[6] 所司和晴、「新装版 駒落ち定跡」、日本将棋連盟、2023年


角落ち(矢倉定跡)の下手側の練習方法

2024-06-12 22:48:01 | 将棋

本日、81道場(オンライン)で、6回目の昇段戦にやっとこさ勝つことができまして、三段になりました(見出し画像)。やったー!。

ですが、リアル道場では相変わらず初段のままです。もちろん、常連さん(三段~五段)が強いためではあるのですが、それでも週一回の指導を半年受けてきたのだから、そろそろねぇ。

先日は3連勝すれば先生による昇段試験を受けられるはずが、5連敗してしまいましたし。

 

自分なりに原因分析すると、「攻め」の力は十分備わっていると思うのですが、それに「受け」の力が追い付いていない気がします。

特に、一直線の攻め合い勝ちを目指してしまい、自陣に手を入れることが疎かにするクセがあります。

例えば、今日の昇段戦(下図)は飛車得で後手優勢だったとはいえ、△7三同桂でと金を払わずに攻めにいったのは、今更ながら猛省です。

リアル対局の方では、これまでは対四段戦(先方が角落ち)おいて矢倉定跡でそれなりに勝てていたのですが、最近は先方から無理気味に攻められながらも私が受けを間違って負けるパターンが多くなってしまいました。

 

ネット対局のほとんどは私が先行して仕掛ける将棋だし、家で受けをどう練習しようかな。とりあえず思い付くのは・・・

①受けに関する次の一手問題を解く(早速、「将棋・ひと目の受け」(マイナビ将棋文庫)を買ってみます)。

⓶ネット対局の実戦譜(相居飛車)にて、お相手の立場になって受け方を考えてみる。

⓶については、例えば下図のような私が攻める将棋だったとして、局後に相手の立場に立って受け方を考えてみるというものです。

二段になるには長所を伸ばすだけでなく、短所も減らさないといけないと思って、これからも将棋を頑張ります。


先手三間飛車に対する急戦策(その2)

2024-06-08 09:03:19 | 将棋

前回のブログで予告した通り、私は図々しくも、教育の目的のほんの僅かな部分を記述したいと思います。短い文章なので論にはなっていませんが、方向性ぐらいは提示できると思います。

具体例から入ります。中学数学では二次方程式を習いますが、人文系の職業に就いている方は別に無くても生きていけるでしょう。

しかし、理数系の職業には必須の知識です。私のようなエンジニアにしてみてば、二次方程式の解析解(analytical solution)を導けられないなら、線形微分方程式の解析解は尚更導けないですし、ましてや流体力学の基礎方程式である非線形偏微分方程式の数値解(numerical solution)なんて、ちんぷんかんぷんのはずです。

実際には、シミュレーションソフトのベンダーが提供した商用コードのGUIを操作するだけで、何らかの数値解は得られます。しかし、商用コードといえどもその仕組みを知らずに数値解を上司に提出したところで、一笑に付されて却下されるだけです。

一方で、中学国語では古文・漢文を習いますが、こちらも理数系の職業に就いている方は無くても仕事自体は可能です。

しかし、人文系の職業には必須の知識です。正しい文章を書くためには、日本語の歴史的文脈を理解していることが重要であり、古文・漢文はそれに手掛かりを与えるものです。例えば、ある抽象概念を表現するのに和語と漢語のどちらを使うべきかとか。

以上を纏めると、小学生や中学生の将来的な職業選択の自由(憲法第22条)を確保するために、国語も数学もバランス良く教えるべきと私は考えます。

 

前置きが長くなってしまいました。今回も先手三間飛車に対する居飛車の急戦策を考えます。

上図から後手は7~9筋の歩を突き捨てるのですが、突き捨ての順序が2種類あってその後の展開が変わります[1]。

まずは、私の好きな方から取り上げます。△8六歩、▲同歩、△9五歩、▲同歩、△7五歩。

▲7五同歩は△9五香~△7六歩で居飛車の攻めが決まるので▲6七銀ですが、△6五歩、▲7五歩、△6六歩、▲7六銀、△6七歩成、▲2二角成、△同玉、▲6七銀。

上図から居飛車は△3三角と打って攻めを継続するのですが、こういうマイナー戦法に対して振飛車に正しく応対されると実戦的には居飛車不利でしょうね。

次はあまり好みで無い方を。一番上の図から、△7五歩、▲同歩、△9五歩、▲同歩、△8六歩。

▲8六同歩は前述の通り居飛車の攻めが決まるので、▲8六同角と取ります。△6六角、▲7七銀、△2二角、▲9六香。

最後の▲9六香は、角の退路を確保しつつ、△7六歩に強く▲同銀と取れるようにした手です。振飛車にここまで付いて来られたら、実戦的に居飛車不利。

突き捨ての順序をどちらにするかは、対局時のその時の気分で決めようと思います。

 

【参考文献】

[1] 青野照市、「先手三間飛車破り」、創元社、1988年


先手三間飛車に対する急戦策

2024-06-02 10:10:53 | 将棋

私は以前のブログ(5/26)にて、子供たちが中学受験・高校受験に励む理由の一つに、「いじめに遭わない環境に身を置くため」というのを取り上げました。

他にも有力な理由としては、「大学受験やその先の就職活動を有利に導くため」というのも挙げられます。履歴書上の経歴が重要なのは国際標準なので、こちらも尤もな理由だと思います。ただし、良い高校(もしくは大学・会社)に入ったからといって緩んではいけませんが。

しかし、せっかく国語や数学などを勉強しているのだから、それらを上述した目的に対する手段と考えるだけでなく、勉強自体も目的と考える方が身を入れ易いのではないか、ということを提案したいです。

そもそも、なぜ義務教育が課せられている(憲法26条第2項)のでしょうか?それは、「世界を認識するためのモデルを国語や数学などが提供するから」と私は考えますが、それだと議論が哲学的になり過ぎるので、実用主義的な(ただし副次的な)見解を次回のブログで申し上げたいと思います。

 

 

さて、今回は先手三間飛車に対する急戦策を取り上げます。昨日、先手三間飛車に珍しく出会い、後手の私はうろ覚えの三歩突き捨て急戦[1]を仕掛けたのですが、どうも定跡を間違っていたようです。今回はその復習です。

まずは、下図の局面では△6四歩が定跡です。いつでも△6五歩早仕掛けができるように。ちなみに本譜は残念ながら、△9四歩、▲9六歩の交換の後、直ぐに仕掛けて(▲8六歩~▲9五歩~▲7五歩)してまいました。

その後の定跡は△9四歩、▲9六歩、△5三銀、▲4七金なのですが、▲4七金に替えて▲3六歩とするのは損[1]である理由を検討します。

▲3六歩に対して△7三桂としたのが下図です。対して振飛車は▲8八飛と受ければ、居飛車は松浦式の仕掛け[2](△5五歩~△6五歩)を狙うこととなり、一局の将棋です。

もし▲4七金と居直ってしまうと、△6五歩、▲同歩、△7七角成、▲同銀、△6五桂で居飛車の仕掛けが成功します。直ぐに桂馬が跳べるのは5三の地点に銀がいるおかげです。一方で、通常の三間飛車早仕掛けだと、こういう桂跳ねは成立しないことに注意が必要です。途中で▲6四角を打たれてしまいますから。

以上を纏めると、▲3六歩は三間飛車側は先手番であるにもかかわらず、後手番の時と同じ仕掛けを居飛車に許してしまうので、その仕掛けを封じる▲4七金(下図)の方が得と私は考えます。

 

 

【参考文献】

[1] Wikipedia、「三歩突き捨て急戦」、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%AD%A9%E7%AA%81%E3%81%8D%E6%8D%A8%E3%81%A6%E6%80%A5%E6%88%A6、閲覧日2024年6月2日

[2] 山田道美将棋著作集、大修館書店、第二巻、pp.212、1980年


【局後反省】相居飛車の力戦型(その2)

2024-05-29 18:12:24 | 将棋

本日2回目の投稿。相居飛車の将棋の局後反省を行います。

下図は、駒組が互いに煮詰まって、私が▲4五歩と仕掛けた局面です。囲いは両者とも同じ矢倉囲いですが、お相手の攻めの陣立が見慣れない格好です。多分これだと仕掛けられず、一方で私には仕掛けがあるので先手有利だと思っていましたが、水匠5[1]の評価値はたった+77です。マジっすか。

本譜は、△6四角、▲4六角、△同角、▲同銀、△4七角、▲2六飛、△3八角成と進みました。

お相手には恐れ多いのですが、この馬作りはどうだったのでしょう。後手の攻めに寄与していなければ、先手の攻め駒も取れないですし(△4七馬の銀取りは、▲5三金があるので無効)。しかしながら、先手の4六銀が離れると、後手の馬によって桂馬や飛車がパクパク食べられてしまうので(本譜もそうなりました)、先手は正確な攻めが求められます。

本譜はその後、▲4四歩、△同銀、▲4五歩、△3三銀、▲3五歩、△同歩、▲7一角、△8四飛、▲3五角成と私も馬を作りましたが、これは逸機でした。水匠5は上図で▲3五歩で攻めになると言っています。

後手は△3五同歩なら、先手は▲4四歩、△同銀、▲2四歩、△同歩、▲7一角、△8四飛、▲2四飛からの十字飛車が狙いです。実戦では変化すると思いますが。

後手が▲3五歩を放置するなら(例えば△9五歩)、当然▲3四歩と取り込みます。△同銀は▲4四歩、△同金、▲5三角からの馬作りが厳しいので△同金とします。

そしたら今度は▲7一角、▲5三角成として急所に馬を作って、後手に手を渡せばいい。▲3五歩による金桂交換の駒得は急いではいけないのがポイントです。先手の右桂がいなくなると、飛車が馬でいじめられますから。相居飛車はこの辺りの押し引きが難しい・・・。

 

【参考文献】

[1] たたやん氏webページ、https://drive.google.com/file/d/1T-Go2KImMfKD_4m_j4fQFXrEfaGgAcS_/view、閲覧日2023年12月18日