isorokuのこころの旅路

遊行期に生きる者のこころの旅路の記録です

象徴天皇制を巡って大変違和感のある論術が東京新聞に現れました

2016-08-18 14:30:30 | Weblog

▼8月18日(木)東京新聞の「生前退位こう考える」欄で、九州大学名誉教授(憲法学)横田耕一先生の「『公務とは』まず問いたい」の論述がありました。

・今上天皇陛下が象徴天皇としてい実践されておられる行為(私は、国民の大多数がその行為に敬愛の念をいだき、象徴天皇制がますます権威を高めている淵源だと思います)の意義に対する、重大な異論であると受け取りました。

・こうした見解が憲法学者の中に存在していることに大変違和感を感じ、全くの素人ですが、一国民として賛成できないと感じました。

・特に下記の論述には大変違和感を抱きました。

1)「天皇がしなければならないのは国事行為のみであって、政府の見解でも、公的行為は「やってもよいという行為」です。・・・天皇陛下のお忙しさは、その多くが公的行為です。

2)憲法の「国民統合の象徴」とは、天皇に国民統合を期待しているのではなく、天皇は国民統合をあらわしているものにすぎません。ただし社会心理的に統合する機能を果たす、と解釈されています。

<所感>

・上記の論述を素直に読むと、今上天皇陛下のご即位以来精魂込めて実践されてきた行為がなくても天皇制は維持できるという発想だと思います。

・これは万世一系の皇祚であるだけで国民統合の鏡になるという皇国史観的な発想(神話であって近代精神とは調和できない)だと思います。

・昭和16年12月8日「万世一系の皇祚ヲ踐メル大日本帝国天皇」のお勅語を拝して戦いに入った我が国が、力戦奮闘したにも関わらず戦勢日に日に不利となり、ついにはすべての大都市が焼け野原となり、広島・長崎では原子爆弾を落とされ、満州や北方諸島へのソ連軍の侵入という亡国の淵に立ち、ポツダム宣言受諾によってかろうじて国家として存続を許された重い歴史があります。

・横田耕一先生の論述は、こうした歴史を背景にした象徴天皇制であるこという事情を無視した学者の空論だと思われます。

・昭和天皇の人間宣言や全国ご巡回、今上天皇陛下の精魂込めた28年にわたるご公務に対する国民の心からの敬愛がなければ、象徴天皇制が今日のような存在として存続できなかったと思います。

・象徴天皇制には今上陛下が実行しておられるような行為は、形は違っても次世代に継承されることが望ましいと思います。したがって、こうしたご公務は実行しにくい摂政制度では今上陛下の生前退位のご希望には添えないと思います。

・今上天皇陛下のビデオのお言葉は説得力があります!

 

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岐路を曲がった近未来について情報収集(6)

2016-08-15 10:46:12 | Weblog

・天皇陛下のお言葉が発表されて以来、様々な情報・意見が新聞・テレビなどオフライン・オンラインの多様なメディアに流されました。

・安倍政権の後ろ盾と目されている「日本会議」のメンバーによる生前ご退位反対論、リベラル派の有力な一翼を担う雑誌「LITERA]の意見などを両極として、それぞれの価値観に基づく情報・所見は多岐・多様にわたっています。そして、放送直後の各報道機関の世論調査では生前ご退位に賛成が80%以上でした。

・多くの論説を読みましたが、今日8月15日の毎日新聞の山田孝男「風知草」欄の「ビデオと波紋」の所見に一番納得しました(山田孝男氏と政権との関係によからぬ噂?がありますが・・・)。

▼以下ポイント列挙

・お言葉の核心は。象徴天皇の最も大切な公務とは何かーという点に関する、陛下ご自身の認識の表明だと私は思う。

・陛下はこう言われた。「何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ること」であり「事にあたっては、時として人の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うこと」-であると。

・宮中祭祀。慰霊・慰問など全国各地で国民と哀歓を共にする公務。それらは単なる儀礼ではなく、国民の信頼源泉であり、伝統を現代に問う象徴天皇としては勝手に減らせぬーという言外の含み

・このような公務観を思えば、陛下が摂政を置いても「天皇が勤めを果たせぬことに変わりはない」とおっしゃるのは当然だろう。摂政は国事行為(国会召集、外国大使接受など)の代理者に過ぎず、象徴の代理にはなれない。

・天皇の生前退位は古代から近世まではむしろ主流だった。現在の皇室典範にほぼ引き継がれた旧典範は、明治22年制定。維新から間もない天皇親政体制の初期であり。摂関政治や院政によるっ混乱を意識したものか、退位に関する規定は盛り込まれず、今日に至る終身天皇の制度が整った。

・恒久的な生前退位制度をつくるなら、具体例を法律に書きこまなければならない典範改正より特別法のほうが進めやすいが、そこはまだこれからの話。

・憲法4条「天皇は国政に関する権能を有しない」を尊重し、あくまで「私の気持ちをお話ししました」と締めくくるお言葉の末尾に「国民の理解を得られることを切に願っております」。

・理解を深め、速やかに答えを出す必要がある。

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◇天皇陛下のお言葉のポイント

・私はこれまで天皇の務めとして,何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが,同時に事にあたっては,時として人々の傍らに立ち,その声に耳を傾け,思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました。

・天皇が象徴であると共に,国民統合の象徴としての役割を果たすためには,天皇が国民に,天皇という象徴の立場への理解を求めると共に,天皇もまた,自らのありように深く心し,国民に対する理解を深め,常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じて来ました。

・こうした意味において,日本の各地,とりわけ遠隔の地や島々への旅も,私は天皇の象徴的行為として,大切なものと感じて来ました。皇太子の時代も含め,これまで私が皇后と共に行(おこな)って来たほぼ全国に及ぶ旅は,国内のどこにおいても,その地域を愛し,その共同体を地道に支える市井(しせい)の人々のあることを私に認識させ,私がこの認識をもって,天皇として大切な,国民を思い,国民のために祈るという務めを,人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは,幸せなことでした。

・天皇の高齢化に伴う対処の仕方が,国事行為や,その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには,無理があろうと思われます。また,天皇が未成年であったり,重病などによりその機能を果たし得なくなった場合には,天皇の行為を代行する摂政を置くことも考えられます。しかし,この場合も,天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま,生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません。

・天皇が健康を損ない,深刻な状態に立ち至った場合,これまでにも見られたように,社会が停滞し,国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。更にこれまでの皇室のしきたりとして,天皇の終焉に当たっては,重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き,その後喪儀(そうぎ)に関連する行事が,1年間続きます。その様々な行事と,新時代に関わる諸行事が同時に進行することから,行事に関わる人々,とりわけ残される家族は,非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが,胸に去来することもあります。

 

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岐路を曲がった近未来について情報収集(5)

2016-08-04 09:37:37 | Weblog

・8月5日のNHK「あさいち」を見ていましたが、珍しく「戦争は嫌だ」の表題を掲げて、戦乱から逃げてきた難民の声を集め、真面目な番組を放送していました。政府の広報機関と揶揄されている姿とは大違いの編集に、感心しながら拝聴しました。

・戦争がはじまると弱者を支えるシステムが完全に崩壊する。銃をとって戦うばかりが戦争の様相ではなく、弱者が塗炭の苦しみに投げ込まれるのが戦争の姿だと伝えています。

・シリア難民の「今の日本よりも平和な生活を送っていたシリアがアッという間の連鎖反応で戦争になってしまった」という言葉の重さを痛感しました。その連鎖反応を起こした起爆材は国内の対立に介入する他国の支援です。その中には死の商人もおります。

・ミャンマーからの難民の「言いたいこともお言えないのが戦争だと思います。日本に来てはじめてミャンマーの姿がわかった。軍事政権の下では正しい情報は存在できない」という趣旨の発言は、戦争中の帝国日本の、特に昭和19年・20年の姿と似ております。

<所感>

・このような姿勢の放送がNHKの人気番組「あさいち」で放送されたことに、まだ残っている日本社会の健全性を感じました。

 

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岐路を曲がった近未来について情報収集(4)

2016-07-31 09:06:28 | Weblog

7月31日毎日新聞 時代の風欄 藻谷裕介(日本総合研究所主席研究員)「中国の脅威と殺傷事件」

の論述は今の時代の風の原動力を把握するのに参考になる視点を提供しています。

・参院選挙では、与党の得票率(比例代表+選挙区の総数で計算)が同じ49%で高どまりしていたのは考えさせられる出来事だった。

・投票率は5割と低く、一人区が多いため獲得議席数は半数を大きく上回る。だが、批判票を投じにいかない層が多いのはなぜだろう。与党に票を入れ続ける4人に1人の、強固な支持動機とは何か?

・筆者は「中国の脅威」がキーワードなのだと思う。「アベノミクスは評価しないが、集団的自衛権だの憲法改正だので、中国の脅威に対抗していくのは仕方ない」。批判票を投じずに棄権に回っている層には、こういう考えの人も多いと思うのだ。

・つまり中国共産党政権の対外強硬姿勢が、安倍政権の飛行持続の燃料になっているわけだ。

・対する中国共産党政権も、日本で要人の靖国参拝や憲法の動きがあるほど、自国民をあおって支持を固められる立場にある。

・ところで「中国の脅威」の実態は何か。南沙諸島や尖閣諸島への進出姿勢は眼前の事実だ。だが「尖閣の次は沖縄を取りに来る」とう見方はどうだろうか。

・中国の最大の関心が台湾の回復にあることは自明であり、しかもそれはとても困難なことだ。帰属に争いがなく米軍基地もある沖縄を侵略などしていたら、台湾回復など夢のまた夢、日米を筆頭に多くの国から経済制裁を受けて。輸出主導で発展してきた中国経済は死にひんする。

・中国は計算しているだろう。国威発揚気分でガス抜きができる。だがそれにもまして意味があるのは、軍拡による国内軍需産業の需要創出ではないか。予算をつける側の利権は膨らむし、景気対策にもなる。

・対する米国陣営でも軍産複合体が、旧ソ連という仮想敵を失い、中東での泥沼の先頭にも国民の支持を得にくくなった分、プロレスの格好の相手として、中国という悪役の勃興を大歓迎し、実態以上にその脅威を喧伝しているように見える。

 ・尖閣で粛々と対峙するのは当然として、それ以上に脅威を煽られるのは、軍拡受益者の思うつぼである。

 ・本塙を書き終えた後に、多数の障がい者を「税金の無駄」と見下して虐殺するというナチスと同列の犯罪が起きた。

・今の「なんとなく排外気分」の世相。実は同じ地面でつながっていることに気付かなければならない。

 

<所感>

・戦後レジームを嫌って戦前体制に逆戻りを推進している安倍政権の支持率が高止まりしている理由を報道機関の御用化とするのは確かに納得がいく側面があります。

・しかし、愚民政策の成功、あるいは選挙集票計算不正とするのは、嘘とはいえないかもしれないけれども確証がありません。

、安倍政権の支持率高止まりには、それなりの基盤を有する理由があることを、この記事が冷静に指摘しています。

・「各国の軍拡受益者の存在と影響力増大」、これこそが今の時代の風(私にはその先が懸念一杯です)を生み出す基盤であり、その動きを冷静に観察しなければいけないと思います。

 

 

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岐路を曲がった近未来について情報収集(3)

2016-07-24 11:05:09 | Weblog

◆東京新聞7月24日 時代を読む 「奇妙な判断停止」 宇野重規(東大教授)

・与党が改選過半数をはるか上回る圧勝に終わった参院選を見る限り、日本の民主主義は「奇妙な判断停止」の状態にあるように思われてならない。

・現政権の継続を選んだという意味では、日本の世論は極論への誘因を退け、慎重な現状維持を選択したともいえる。とはいえ、多くの世論調査からうかがえるように、与党に対する熱狂的な支持が得られたわけではない、むしろ野党が十分な選択肢を示すことができず、「選びよがなかった」というのが実情であろう。

・消費税率引き上げ延期や消費高齢化・地域社会の衰退に対し、議論が盛り上がらず「消極的な現状維持」を選んでしまった代償は大きい。なにより不満が残るのは憲法論議である。「改憲勢力」が三分の二を超えた。しかし、実のある論議がなされなかった。これだけ内容が乏しい選挙で憲法改正のへのハードルが下がるのは無残である。

・日本の民主主義は「賢明な現状維持」を選んだというより、嵐の世界のただ中で、「奇妙な判断停止」に陥ったというべきであろう。これもまた「民主主義の危機」である。 日本社会の課題が明らかである以上、「判断停止」を続けてはならない。選挙の後こそが肝心である。

<所感>

・時代の現状を「消極的な現状維持」「奇妙な判断停止」と把握されたことには同感しますが、そうした現状を積極的に誘導したのが現政権であり、またそれに逆らわず順応していった新聞、テレビの動向の影響であることには触れられていません。またそうした状況を突破できない野党側や一般大衆について、改善への展望がなされていないのが残念です。ソ連圏が崩壊した時のチエコのハベル氏のような知識人が日本で生まれないのはなぜなのでしょうか?

・平沼騏一郎内閣が1939年に独ソ不可侵条約が結ばれて「欧州の天地は複雑怪奇なる情勢を生じた」と発表して総辞職しましたが、今の「奇妙な判断停止」「消極的現状維持」は、平沼内閣時代の日本国の混迷と似ているような気がします。いわば智識人も大衆も、どうしていいかわからないからとりあえず現状維持にしておこうとした結果ではないか?

 

 ◆毎日新聞 7月24日 時代の風 「もう一つの憲法問題 生前退位報道」 中西寛(京都大教授)

・実質的には皇室典範は今日でも憲法付属規範である。イギリスのマグナ・カルタや権利章典などと同様、形式的には法律の扱いだが、実質的には憲法とみなされる不文憲法と考えてよいであろう。

・ 不文憲法として皇室典範を考える時には、幅広い歴史的知識と特段の判断力を要するだろう。

・政治不介入という立場故に天皇は皇室典範の改正をもとめることが出来なくなった。とはいえ政府も国会も、皇室典範の改正によって微妙に保たれている象徴天皇制に影響が及ぶことを考えると、容易に手をつけることができない。・それが故に皇室典範は不作為の「不磨の大典」になってしまった。

・今回の天皇陛下による生前退位の意向報道も奇妙なものである。NHK報道によってメディアh一斉に「意向」を報じたが、宮内庁は長官以下そうした意向を否定している。宮内等庁の否定は天皇による政治介入との批判を回避するための発言だと解説されるが、メディアの説明は歯切れが悪い。

・いずれにせよ、昭和天皇の最期をまじかで経験した天皇陛下が、80歳代前半のうちに生前退位の可能性を提起したとしても自然であり、真剣に受け止められるべきである。後は政府と国会議員が歴史に恥じない政治的判断力を示すことを期待することとなる・

<所感>

・大変微妙で難しいこの問題を、後は政府と国会議員の判断力を期待することでこの論述を終えた中西氏は、日本の一流知識人としての責務を果たしたといえないのではないか?

・今の政府と国会議員がこれまで政治的な課題をしっかり解決してきたのならば、中西氏の意見に賛同するが、そういう状況ではないのに、この論述で終わるのは一流知識人としての役割放棄にならないか?

 

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