isorokuのこころの旅路

遊行期に生きる者のこころの旅路の記録です

「安倍首相真珠湾訪問演説」をめぐる情報収集と所感

2016-12-30 09:18:19 | Weblog

テレビや新聞で詳しく報道された「安倍首相の真珠湾訪問と演説」を正しく評価するには、まず識者と言われる人々の論述を「情報」として収集し、自分の価値観とすり合わせたうえで評価するべきだと思います。

<印象に残った論述のポイント部分>

▼安倍首相の演説(東京新聞12月29日演説全文)から

・戦争の惨禍は、二度と繰り返してはならない。私たちはそう誓いました。そして、戦後、自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを貫いてまいりました。

・戦後70年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たち日本人は、静かな誇りを感じながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります。

▼日本文学研究者ドナルド・キーン氏(毎日新聞12月29日オピニオン欄から)

「寛容の心と和解の力で日本と米国は平和に向けてともに進みたい」という気持ちが素直に伝わってきた。

・問題はこれからだ。新しいトランプ政権がオバマ大統領の平和の架け橋を守り続けられるのだろうか。気がかりなのはそのことだ。

 ▼ジャーナリスト松尾文雄氏(毎日新聞12月29日オピニオン欄から)

 ・安倍首相は演説で「和解の力」をアッピールしたが、日本がアジアの人々に与えた戦争被害についての言及が抜け落ちていた。

・「真珠湾の和解の精神をアジア全体に」というメッセージを出してもよかった。特に中国で旧日本軍による犠牲が出た南京、重慶での献花を提言したい。

▼元米国国務副長官リチャード・アーミテージ氏((毎日新聞12月29日オピニオン欄から)

 ・オバマ大統領は、過去のどの大統領も触れなかった沖縄県・尖閣諸島を日米安全保障条約第5条の適用対象だと言った。

安倍首相の真珠湾訪問。それはブッシュ、オバマ両政権の16年間における、日米関係の最高到達点であろう。この到達点を踏まえ、次期大統領のドナルド・トランプ氏と安倍首相は、また新たなレガシー(政治的遺産)を作ることができる。

▼作家半藤一利さん(東京新聞12月29日3面から)

私は安倍政権の取り組むことにいちいち文句を付けてきたが、今回は良い決断だと評価している。米国は自国第一を掲げるトランプ政権の誕生を控えている。日米関係の先行きが不透明という時期的な意味でも、良い機会をとらえた。

・不戦の誓いについては、首相は行動が伴っていない。むしろ安全保障関連法の制定など、どんどん不戦じゃない方向へ行っている。他国から見れば「口ばかり」と批判されるだけだと思う。

▼元内閣官房副長官柳沢協二さん(東京新聞12月29日3面から)

・日米戦争についていえば、真珠湾、広島だけでなく、東京大空襲や沖縄戦も関係者のわだかまり解けていない。日米戦争は、中国侵略に対する欧米の制裁を、日本が打破しようとしたことがきっかけで始まった。それを踏まえれば、日中戦争のわだかまりを氷解させる行動も必要になる。

・国家の対立を和解と寛容で解消する姿勢こそ、日本が過去の戦争から得るべき教訓であり世界に発信すべき価値観だろう。

▼東京新聞政治部長金井辰樹氏(東京新聞12月29日から)

十七分間の演説は「未来志向」が突出し、過去への謝罪の言葉はなかった。しかし、「未来指向は、日本の戦争責任を修正しようとしているとの批判と表裏一体だ。今も国内やアジア諸国から警戒の目を向けられている。

・この真珠湾訪問が、「戦後」をこれからも直視し続けることを記憶する機会となってほしい。

▼毎日新聞政治部長末次省三氏(毎日新聞12月20日から)

安倍晋三首相の真珠湾訪問は「日米の歴史的な和解の終着点」と位置づけられている。だがこれで「戦後」が終わるわけではない。

・中韓両国と真の意味での和解は、いまだに実現していない。日本国内にも戦後処理問題は横たわる。こうしたアジアになお残る「戦後」に向き合ってこそ、初めて「未来志向」が完結するのではなかろうか

<所感>

・テレビで、「戦争の惨禍は、二度と繰り返してはならない。私たちはそう誓いました。そして、戦後、自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを貫いてまいりました」との表現を耳にしたとき、その内容と発言している人の顔を見て、「結構だが本当かいな?」という感情が湧いてきました。

・福島第一原発事故の放射能をアンダーコントロールと断言したり、我が党においては結党以来強行採決しようと考えたことはないと言いながら、集団的自衛権関連法案、カジノ法案強行の姿を見ているので、言行一致について信用できないのです。

・それでも「この不動の方針を、これからも貫いてまいります」との発言を五十歩百歩だと批判するより、百歩は五十歩よりましだからとして、一定の評価をすることも意味があると思います。その意味で半藤一利さんの見解に同感します。

・また柳沢協二さん、松尾文雄氏、両新聞政治部長に共通している所見ーー国内を含むアジアの戦後処理という重い課題が残っており、戦後処理の儀式はこれで終わったと単純素朴に未来志向で進んではいけないーーとの所見に賛成です

<追加>

・リチャード・アーミテージ氏が、ブッシュ、オバマ両政権の16年間における、日米関係の最高到達点であろう。この到達点を踏まえ、次期大統領のドナルド・トランプ氏と安倍首相は、また新たなレガシー(政治的遺産)を作ることができる」と高く評価されるのは彼の立場から自然な流れです。

・しかし、この到達点を踏まえることは、必ずしも日本にプラスになるだけではないと思われます。理由は、オバマ氏の政治的レガシーをめぐってトランプ氏による批判的な発言が多いからです。ドナルド・キーン氏も懸念されているように、次期トランプ政権の動向は、予断を許しません。

・翌日には、安倍首相に同行訪問した稲田防衛相が靖国参拝を実行したので、中韓両国が反発しました。

・毎日新聞では「ウオールストリートジャーナル電子版がこの訪問を批判的トーンで報じた」さらに「NBCテレビ電子版が、28日に今村雅弘復興相の靖国参拝について、安倍首相とオバマ大統領による歴史的な真珠湾訪問を台無しにする可能性があると論評した」という記事がありました。


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トランプ次期政権をめぐる情報収集(5)

2016-12-07 12:33:53 | Weblog

トランプ次期政権をめぐって世界情勢は不透明になり、常識が変わりそうな情勢です。

印象に残った新聞記事を記録しておきます。

◆毎日新聞12月7日「社説を読み解く トランプ氏当選」 専門編集委員 布施広

・100年に一度の大事件かもしれない。まずは海外の反応から見てみよう。

・英国のデーリーミラー紙は言う。トランプ氏はうそつきで性的略奪者、人種差別主義者なのに「最強の民主国家(米国)」を動かすカギを握ったと。こうした論調は欧州主要紙にほぼ共通する。

・ガーデアン紙の社説は「世界規模の政治的地震」と書いた。トランプ氏当選は欧米の民主主義における「警戒すべき右寄りの動き」の反映であり・・・との論旨である。

・仏紙ルモンドも地震にたとえ、ベルリンの壁崩壊や米同時多発テロに匹敵すると表現した。同紙によれば、人種や女性差別の傾向を持つとはいえ、大衆の怒りを背景に勝利した。それは新たな世界の始まりを示すもので、今や確かなことはただ一つ「かっては不可能で非現実的だったものが、今は起こり得るということだ」としている。

・連日トランプ氏を攻撃したワシントンポストの社説は、予想が外れた理由の一つに、ワシントンの中央政治に対する地方の「怒りの深さ」を軽視したことを挙げている。

・以上は投票日の翌日か翌々日の欧米紙の論調である。

・日本は安全保障に関心 日本が駐留経費を全額負担しないなら米軍は撤収する。日本や韓国は自前の核武装で武装すればいいという趣旨の発言は見過ごせない。・・・

・トランプ氏は今の同盟の在り方には懐疑的でも、軍備増強には意欲的なことだ。政治経験のないは、より厳しい要求を日本に突きつける可能性がある。駐留経費だけが問題なのではないのである。

・トランプ氏は、臆病なまでに軍事に慎重なオバマ大統領とは対照的だ。台湾問題や南シナ海をめぐり米中摩擦が生じているのは気になる。

・「霧」の中で迷子にならないためには、迅速な情報収集や意見交換も含めて、したたかで強靭な外交が必要である。

<所感>

・この欄には「米大統領選に関する社説・論説と主な内容」の一覧が掲載されており、資料として有意義でした。

・単なる政変ではなく歴史的な政変なのだという評価を重く受け止めるべきで、テレビが平穏な日常生活重点に放映を続けている状況に懸念を感じます。以前のようにNHKで国谷さんの解説が聴けたらいいのになと思いました。

 

◆東京新聞12月7日 論説室から 「メルケル氏が切った啖呵」

・ドイツのメルケル首相は、トランプ氏にかけたお祝いの電話でこう述べた。「血統、肌の色、宗教、性別、性的指向、政治的立場に左右されず、民主主義、自由、人権と、人への尊厳への敬意という価値観の共有に基づき、トランプ次期大統領との緊密な協力を申し出たい」。

・ミュンヘン在住のジャーナリスト熊谷徹氏は、トランプ氏への毒矢と評した。

・メルケル氏が切った啖呵にどう反応するのか。波紋は、価値観共有を目指してきた欧州、さらにはG7へと広がり、共有しない側も巻き込んで、世界秩序を揺るがしかねない。

(熊倉逸男)

<所感>

・トランプ次期政権を契機に右からも左からも波が押し寄せ、波乱の時代がこれからやってくるようです。

 

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