いぬくそ看板物語(6)
事故直前に撮ったいぬくそ看板
2014年春。地元静岡でのダブルワークもだいぶ板についた頃の話だ。2周間に一度しか休暇が無い事と、お金が無さ過ぎてファストフード店で夜勤をしていた事には慣れなかったが、それ以外はリズムが出来上がっていた。
その日は確か、前日深夜からの夜勤上がりにラジオ局で働き、そのまま午後にクルマでパソコンの出張サポートに行くようなスケジュールだったと思う。花粉の季節で薬を飲んでいたが、お金が無かったので手頃な第1世代薬に頼っていた。①寝不足、②多忙による疲れ、③薬による眠気。魔の三要素が私を襲った。
全立体交差で信号が無いタイプのバイパスを走っていた時、図らずもボーッとした瞬間があった。その瞬間、目の前にクルマが止まっていた。渋滞の末端に遭遇しただけだったのだが、完全にボーッとしていた私はブレーキを踏む余裕すらなく、そのまま停車中のクルマに追突してしまった。その瞬間、今まで積み重ねてきたものが全て消えた。
事故後しばらく経ってから撮ったいぬくそ看板
幸い物損事故だったし、任意の自動車保険には入っていたので、人生まで終わることは無かった。だがそれ以降、クルマに乗る仕事は極力避けるようになった。生活が苦しいせいで仕事を詰め込んでいたのに、そのせいで事故を起こしてしまったのだから。
もう静岡では生きていけない。そう思った私は、仕事のたくさんありそうな都市部への転職・移住を思い立った。静岡にも移住先にも愛着が何もなかったので、無感動のうちに事が進んだ。静岡での失敗で、今後失うことはあっても得るものはなにもないだろうと思っていたが、意外と得るものがあった。新たないぬくそ看板との付き合い方である。
(つづく)
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