アルファロメオ145
■諸元
車名:アルファロメオ・145
駆動方式:FF
エンジン:直列4気筒DOHC(ツインスパーク)2.0L 155PS
変速機:5速MT
大きさ:長4093×幅1712×高1427(単位mm)
ホイールベース:2540mm
車重:1240kg
■どんなクルマ?
アルファロメオの小型車の系譜として1994年に登場したハッチバック型のクルマである。ほぼ5ナンバーサイズでありながら、アルファロメオの走りの良さを象徴するツインスパークエンジンを搭載しており、小粒でピリリと辛いモデルだ。新車価格が当時の欧州車としては手頃だったこともあり、アルファロメオを身近なものにした立役者とも言えよう。
■考えもしなかった出逢い
フォードKaの不調を見てもらった焼津の車屋さんは、欧州車を得意としていた。高い修理代を負担してKaに乗り続けるか、別のクルマを探すか。お金の無い当時の私は悩んでしまった。その様子を見た車屋さんの店主が、私に提案してくれた。
「アルファロメオに乗ってみないか?」
手頃な145が在庫として置いてあったのだ。イタリアの高級車というイメージしか無かった私にとって、意外過ぎる提案だった。でも、イタフラ車ゆえ手が届く値段だ。選択肢が増えたために悩みが増してしまった私に、店主はアルファロメオ156を代車として貸してくれた。エンジンは145と同じツインスパーク2.0Lだ。これに乗ってエンジンの味を試してみろ、という事だったのだろう。
■痛快過ぎる鼓動 -ENGINE-
156はセレスピード(AT車だがマニュアル車と同じ仕組みのミッション)で、慣れない運転感覚だったものの、軽自動車並のクルマしか乗っていなかった私には、パワーがあって運転しやすい印象だった。これならいけるかな?そう思い、145に乗り換える事に決めた。
当時の仕事は収入が少なく、親に食べさせてもらっているような状態だった。真っ赤で派手な外車で帰ってきた両親は呆れ顔だったのが印象深い。しかし、乗ってみるとそんな事がどうでも良くなるくらい気持ちの良いクルマだった。
スポーティなクルマに乗るのが初めてだったので、走る、曲がる、止まるがこれほど気持ち良いものだったのかと感動した。馬力の割に小型で軽量という145の美点である。しかも私が乗った個体は足回りに手が加えられており、「曲がる」の快感を存分に味わうことが出来た。
一番の魅力はエンジンである。回せば回すほど高まるパワー。官能的なフィーリングというありきたりな表現で簡単に言ってしまうが、その通りだから仕方がない。その気にさせてくれる吸気音と、直列4気筒の野太い排気音が追いかけてくる感じがまたたまらなく気持ち良い。真夜中の国道のトンネルで窓全開にして走ると、その加速感とエンジン音に包まれて絶頂に至ってしまう。
■いい看板への誘い(いざない)
ウィンダーくん
良いクルマではあったが、さすがに3ナンバーで住宅街をうろちょろするのは疲れる。パソコン出張サポートやラジオの取材で町中を彷徨くには向いていない。そもそも真っ赤なイタ車で営業する事がダメだった気がするが。
そこで、145に乗るようになってからは、目的地の周辺のスーパーやドラッグストアにクルマを止めさせてもらって、徒歩で客先に向かうようになった。用事が済んだら買い物をして帰る、といった具合。そんな中で出会ったもののひとつが「ウィンダーくん」。ドラッグストアチェーン「ウィンダーランド」のマスコットキャラクターだ。かなり攻めたキャラだったので、店頭の彼を撮り始めたのがこの頃だ。
そして、田舎道で出会ったいぬくそ看板の味わい深さに気づいたのもこの頃だったのである。
(つづく)