窓辺びより

毎日が平凡だなんてとんだ勘違い。カーテンを開けよう。ほら、今日も窓辺びより

(空想) 「すてきな窓」

2009-08-08 06:02:56 | 空想
※ちゅうい:この記事のカテゴリは「空想」です。

 鳥かごの中にいるからって、いつも外に出たがっていると思ったら大間違いですよ。実はなかなか満足しております、ワタクシ。割とかごの中は広いし、ご飯にも別段不満はありません。止まり木が3つあるから気分に合わせて居場所は変えられる。もちろん毎日水だって取り替えてくれます。


 んでもって一番お気に入りなのがこの窓です。どうです。大きくてきれいでしょう。この窓からは実に色んな景色が見えます。朝が来ると共に明るくなり、夜は夜できらきら、まるで宝石みたいに光ります。ワタクシの飼い主もなかなかお気に入りのようで、朝や晩にはあの人もコーヒー片手によく眺めています。


 日によってはなんだか窓の外がうるさい時もあるけど、そんな時はあの人がどうにかしてくれます。静かできれいな景色を見せてくれる。そんな窓の外を眺めながら、ぼんやり過ごすのはなかなかオツなものです。

「この窓は何だって見せてくれるんだよ」とあの人は言います。そうなのです。だからワタクシは鳥かごの中にいたって何も退屈しません。自分で言うのもなんだけどワタクシは物知りです。そこらの鳥たちに比べたら教養のある方ですよ。あいつらはきっとこの界隈しか知らないんだろうけど、ワタクシはあちこちの景色を知ってるんですから。


「この窓はどんな事だって教えてくれるんだよ」とあの人は言います。そうなのです。あの人にわからない事は何もありません。この家からとんでもなく離れた所で今日何が起きてるか、あの人はちゃーんと知っている。ぜんぶこの窓のおかげです。こんなすごい窓のある家に住めるなんて、ワタクシはなんて幸せなんでしょうか!

「この窓を見ることさえ怠らなければ、世界がどうなっているか、時代はどこへ進もうとしているのか、全部わかるんだよ」

時代とか世界とかワタクシにはよくわかりませんが、とにかくこの窓から見えるのがその時代とか世界とかいうヤツならば、なかなか退屈しない面白い場所のようです。

「じゃ、今日はもうおしまい」

もう夜が遅いようです。あの人は窓をピッと閉じてしまいました。いいところだったのに。いいところだったのに。羽をばたつかせてもう一回開けてくれるよう頼むと、困った顔をしながらあの人は再びピッとボタンを押します。真っ暗な窓が途端に明るくなる。でももう、さっき見ていた景色とは別の景色が写っている。


つまんない、つまんない、とばたついてあの人を困らせてみます。「仕方が無いよ」とあの人。

「ぼくらは見てるんじゃなくて、見せてもらってるだけなんだから」

そう言ってあの人は再び窓を閉じて寝床へ上がってしまいました。


ま、ときにつまんない事もあるけどワタクシはこの窓が大好きです。だってなんだって見せてくれるから。ワタクシは相も変わらず鳥かごの中にいるのに、セカイとジダイの全てを知ることができるんだから。

だからワタクシは今日も幸せです。たとえ鳥かごの外になんか、出なくたって。







以上、この記事は埼玉県内の会社員宅で飼われている、セキセイインコのピッピが書いてくれました。
原稿料としてお望みのヒマワリの種は近日中に郵送いたします。

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