日傘の女性はなんと
にっかつの専属女優
…ではなく先生のマネージャーでした凹
そのマネージャーさんの話から分かったことは…
撮影はNHKの全国放送番組のためのもの。
スーツの先生は有名な作曲家。
ロケのため東京から強行日程で山陰を巡っているのだとか。
そこへ撮影が一段落ついたのか、先生がやってきました。
先生「君たちはさだまさしの『案山子』って曲を知ってるかい?」
友達2人が「いいえ」と即答したので、
ボクだけ知ってるのはオッサン臭いと思って合わせときました。
マネージャーさんはボクらに『案山子』を歌ってくださったのですが、
友達2人はやっぱり知らないみたいでした。
先生はボクたちにこう教えてくれました。
『案山子』は、故郷から離れた弟を思う曲です。
さだまさしが15歳の時に津和野城跡から見た風景を、後に思い出して書いたのだそうです。
さだまさしの故郷は長崎だと聞きました。
なぜ彼は津和野の景色を見てノスタルジックになったのだろうとボクは思ったのですが、その理由が少し分かったような気がしました。
おそらく、都会で生まれて育ったひとでも、この景色を見るとそれを感じるのではないでしょうか。
確かに日本のふるさとの景色がそこにはありました。
凛として在る青野山と、麓を流れる細い川に沿って立つ民家。茶色の屋根は石州瓦。
おそらく昔からあまり変わらない、そしてこれからもさほど変わっていくことのないだろう、
何の変哲もない山陰の一風景。
でもだからこそ綺麗な、優しい、ゆったりとした時間が流れるふるさとの景色がそこにある。
街が静かなのは、セミの声と風に揺れる夏草のせいかもしれない。
穏やかな口調の先生との会話はしばらく続き、
気が付くといつの間にか汗がひいていました。
「早く来い!」
ボクらが振り返ると、驚くことにもう一組、この城跡へやって来た者がいました。
「マッタク!だから言ったんだ!!だいたいおまえは…」
声の主はオジイチャン。後から少し遅れてオバアチャン。
ものすごい剣幕で罵声とともに姿を現し、そのままボクらの前を横切って、
ベンチまで辿り着くとふたり一緒にチョコンと座りまして。
何事も無かったかのように景色を見ながら水筒のお茶を飲み出しました。
…………。
仲が良いんだか悪いんだか。
唖然としてふたりを見ていたボクら。
思い切って沈黙をやぶってみました。
ボク「先生!あれは…『関白宣言』みたいなおじいちゃんですね!!」
先生「ウフフフフ…!」
よし!先生笑かしたった!!
繁忙期の久々の休みに山なんかに登って大汗かいたけど、
ノスタルジー津和野と、さだまさしマニアの作曲家先生と、関白宣言のジイチャンバアチャンに癒された、、
そんな休日のお話。