いいすかね?今更になって去年の夏の話を持ち出してもいいすかね?
確か8月頃に書き始めた記事が、綺麗に年をまたいでたった今しがた完成しました。
こんなボクで良かったら皆様今年もよろしくお願いします。
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今まで3回に渡って更新してきたベトナム旅行記も今回で最後。
もっと長きに渡り皆さんにベトナムの魅力をお伝えできればいいんでしょうけども、なんせボクって記憶力がセミ並みの悪さなもんで。もうすでにベトナムでの出来事を薄っすらと忘れかけてる。
取り合えずめぼしい写真をUPしながら夏の思い出を簡単に振り返ってみます。
先ずはホーチミンシティの中央郵便局。
にいた花嫁のニーニャたち。
中央郵便局はフランス領時代のすごく綺麗な建物なので、周辺ではよく結婚式の前撮りが行われているそうです。
戦争博物館に展示された子供たちの絵。
ホーチミンの子供たちが平和をテーマに描いています。どれも明るく優しい色づかい。独特な色彩感覚が素敵です。
統一会堂(旧大統領官邸)。にいた知的ニーニャ。
団体ツアー客向けのお土産屋さん。にいた若手売り子ニーニャ。
続いてどっかのレストランで。
米粉を使用したベトナム風お好み焼き“バインセオ”
とフルーツ盛り合わせ。
とグラマラスニーニャ。
メコンデルタの島で大蛇をマフラーのように巻くM安さん。
メコンデルタの川下り。
と船頭の少女ニーニャ。
どっかのベトナムフレンチレストランの癒し系ニーニャ。
どっかの中華料理屋の回復系魔法使いみてぇなニーニャ
最終日の自由行動。
ボクがどうしても行ってみたかったベトナム料理屋ホアン・イエンの生春巻きとあんかけ焼きそば。ここの食事が一番おいしかった。
国営百貨店。雑貨屋の笑顔が素敵なニーニャ。
別の雑貨屋のアオザイ&ジャージのコーデニーニャ。
学生時代の憧れの先輩に似てた。うぅ、マキ先輩!
メイド服のニーニャ。街頭でオープンしたメイドカフェのチラシを配ってました。
愛くるしいキャラクターたちが笑いを誘う水上人形劇。
と舞台袖で生演奏をする左端の綺麗なお姉さんニーニャも決して見逃さない。
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さて、こうして最後に振り返ってみると、おれ、ニーニャしか撮って無い。
冒頭の中央郵便局なんて、肝心の建造物を全く撮って無いという衝撃の事実。我ながら呆れちゃう。そんで雑貨屋のニーニャの時なんて、ニーニャを撮りたいがために商品を購入してた感が否めない。我ながらすんごい情熱。
ただ、ほとんどのニーニャは観光客に撮られ慣れてるからか、撮影を笑顔で快諾してくれるのだけど、この雑貨屋のふたりは違った。
一軒目の雑貨屋で商品を購入した後、ボクの出せる全力の爽やかな笑顔とジェスチャーで「写真撮らせて」と伝えると、彼女は首を横に振った。
まいったな。このままでは日本に帰れないじゃないか。
見初めたニーニャたちは何としてでもコンプリートしなければならぬというのに…。
というカードコレクションゲームに躍起になるひとみたいな病的な心理にボクは陥っていた。ほんと、レアなカードってのは課金してでも手に入れたくなっちゃうものなのね。ちょっとだけ彼らの心理が分かったような気がします。
しかし、カードとハートは違う。彼女たちは生身の人間だ。課金(商品購入)したからといって、彼女たちの気持ちを買うことは当然出来ない。
万策尽きたボクの次にとった行動は、自分でも驚くべきものだった。
「カワイイ!」
それは、かれこれ5年以上は女性に向けて使っていない言葉だった。
まさか久しぶりにこんな日本から遥か遠く離れた異国の地で使うことになろうとは思いもしなかった。
もちろん彼女はベトナム人だ。商売の為、簡単な英語と日本の単語は片言で喋れるけども、さすがに「カワイイ」は通じないかもしれない。これはひとつの賭けだった。
いや、そういえば「カワイイ」は日本人女性に向けて使う時だって、いつも賭けであった。
「カワイイ」は諸刃の剣だ。女性を喜ばすことも出来れば、逆に不快な気持ちにさせることもある。例えば爽やかイケメン君が極めてナチュラルに、サラッとこれを言ってのけたとしよう。ほとんどの女性が悪い気はしないだろう。
しかし、恋愛寿命がセミ並みでとっくの昔に終わってるボクが極めて不自然に、ドロッと言ってしまったらどうだ?決まって彼女たちは怪訝そうな顔をし「何このオッサン、シンプルに気持ち悪いんだけど。」と、こうなる。
まぁそんな酷いことを言う女性はボクの場合、せいぜい3人にひとりぐらいの低い割合なんだけど、なんせ残りの2人も「何言ってんの?可愛くねーし!」みたいな、本当に可愛くない返事をするからね。こっちは勇気を振り絞って「カワイイ」と言ってるのにさ、そういうのって良く無いよね。
素直に「ありがとう」と微笑む女性は多分、10人にひとりいるかいないかだろう。投資対効果を考えればこれはすごくリスクの高いギャンブルであると言っていい。だからボクはいつからか「カワイイ」を封印し、迂闊に使うことは無かった。ボクは幾度もカワイイ・ジレンマに苛まれ、そして気付けば5年以上が経っていた。
「カワイイ!」
それはかつてボクが言ったことの無いほどのスマートな言い方だった。
何故、5年も封印してきたカワイイをここにきて解き放ってしまったのだろう。常夏の陽気のせいか、それとも南国の花の色香のせいか。とにかくボクはまるで別人格のもうひとりの自分が出てきたかのように、彼女をクールに褒めた。
すると彼女は「えー!」というような戸惑いの表情を見せ、照れ笑いをし始めた。
な、なんということだ…!
カ、カワイイが…通じておる!
いや、むしろ、カワイイが…効いておる!!
光が、一筋の光が見えた。彼女は謙遜し「ノーカワイイ!」とか言っちゃってるけど、こちらも一度抜いたカワイイを簡単に鞘に収めることは出来ない。畳み掛けるしかない。ボクは片言の英語と単純な日本語で、彼女を褒め続けた。
「いや、マジで、リアルにカワイイよ!」
うん、チャラい。明瞭にチャラい。でもボクは真顔だった。
チャラ男が放つ褒め言葉が水面を跳ねるただの軽石なら、ボクの放つ5年越しの「カワイイ」はそれとは全く重みが違う。ドボリと音を立て、激しく水面を揺らし、遠く心の深淵に届くはずだ。ボクは彼女の目を見つめて真摯に伝えた。改めて文字にしてみるとキャバクラで必死になる出川哲郎としか思えないような酷い台詞だが、それでもボクは真顔だった。すると最初は難色を示していた彼女も、結構まんざらでもなさそうな感じになった。
「カワイイ」の破壊力は海を越えるのだ。
あと、自分でも信じられないんだけど、ウィンクとかもした。今までの人生で一度も女性に向けてやったことの無いウィンクを、大胆に取り入れてみた。そしたら不思議なことに彼女はすごく可愛らしく微笑んだ後、撮影をOKしてくれた。
その後、2軒目の雑貨屋のニーニャにも最初は頑なに撮影を断られたのだけど「カワイイ!」とウィンクの合わせ技でまたすんなりと了承をいただいた。
すげー。いける、いけるぞ!この手を使えばどんなニーニャもイチコロだ!
今思えばこの時のボクは少し調子に乗っていたのかもしれない。
とある施設で建物内を撮っていたら、苦笑いしながら近づいて来たアオザイ美女がひとり。ボクに向かって話しかけてきたのだけど言ってる事がさっぱり分からないので、「そうか、そんなことより君はカワイイから撮らせなさい!」つってウィンクしてカメラを向けたら、彼女はニッコリ笑顔で快諾してくれた。
そしたらその後すぐにガイドが飛んで来て「カメラをしまってください!」とか「あの子よく撮らせてくれたねー!」とか言ってきた。うむ。どうやらアオザイ美女がボクに伝えたかったのは「ここは撮影禁止です」ということだったみたいです。
撮影を注意しに来たひとを、撮影してた。
これはもうボクの大失態で、パクチーを青汁にして飲まされる刑に処されてもおかしくないくらいの話なんだけど。どうだろう?「カワイイ!」とウィンクのコラボがいかに強烈な力を宿しているのかがお分かりいただけたのではないだろうか。
本当はこの秘密のテクニックをお教えしたくなかったのだが、当ブログを見てくれている男子諸君のために公開に踏み切ることにした。ただ、注意すべきは「カワイイ」という言葉を心底から想い、発することだ。言霊が宿らない「カワイイ」では、波上に揺れる繊細な乙女心を決して射止めることが出来ないのだ。
「すごいっす!おれも今度ジンバブエで早速やってみるっす!」とか「素敵!あたしもあなたに囁かれてみたいわ!」とか、そんな声がちらほら聞こえてきてもいい頃だと思う。しかしちょっと待って欲しい。
ここで誤解のないように言っておきたいことがある。
ニーニャの心を動かしたのはボクの実力でもテクニックでも何でもない。
今回の記事でボクが主張したいことは、「カワイイ」が世界共通語になったのは日本の女性の功績が大きい、ということだ。古来より現在に至るまで、日本の女性が積み上げてきた努力が、磨き続けた感性が、世界に認められ浸透し、こうしてニーニャの心に届いたのだ。ボクたちは全ての日本女性に感謝し、敬意を払わなければならないのだ。
「カワイイ」
愛する者がいる男性は、いつも囁くべきだ。
男性がそう伝えることで、女性は喜び、さらに磨きがかかり、そしてまた男性が喜ぶという好循環=カワイイ・サイクルが生まれる。まさに魔法の言葉なのだ。
「カワイイ」
嗚呼、なんて素晴らしい言葉なんだろう。
嗚呼、そして何故ボクはこの言葉を5年も封印してきたのだろう。
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って話を、帰りの飛行機の中で同僚に話したら「うん、カワイイ・サイクルの事はよく分からないけど。そのバイタリティ、日本でも活かせよ。」と言われた。
確かにそうだな…。
いや、しかし、ボクはボクの為に「カワイイ」は使うまい。
下心や計算が伴う「カワイイ」に、女性への敬意は無いのだ。
花に対して「綺麗」と言うように、ただシンプルに感性を伝えるだけがいい。
ボクが放つ一言によって、女性へ、そしてその女性の周辺へと幸福が無限に広がっていけば、それはすごく素敵なことじゃないか。
そうだ、これからは臆することなく伝えよう、「カワイイ」と。
と思い立って、帰国後、教習所の受付の事務員の子にちょっとした頼み事があったから「これお願いね。お、今日もカワイイね!」って書類を渡しながらウィンクしてみたら、途端にドササッ!って。紙ってこんな重い音するんだ、ってほどのドササッ!って音をたてて書類が足元に散らばった。
この瞬間、ボクはまたカワイイ・サイクルから弾き飛ばされた。
「キモイ」が世界共通語にならないように、ボクたちは常に気を付けねばならない。