22日、穏やかな小春日和。クリニックに赴く。母がカレーがいいと言う。猪苗代でカレーといえば志田浜の傍、国道49号線沿いのCAFEおちば。カレーとコーヒーの店。去年まで通り過ぎるだけだったのだが、今年になって思い切って入ってみた。そして豊富なメニューに驚いた。今では母もすっかりお気に入り。店内は落ち着いた洋食店の趣き。裏庭に向かってサンデッキ風のフロアもある。更にその奥にはペット同伴ルームも用意されている。今日は口開けだったので、勧められて明るいサンデッキにした。ガラス張りの部屋の向こうに木々が茂っている。所々葉が色づいて秋の気配を味わえる。
本日のオーダーは、イギリス風ビーフカレーとタイ風野菜カレー。ターメリックのイエローライスとナン。カレーはインド風からタイ、マレーシア、イギリス、南欧、地中海など10数種類。ご飯物は、白いプレーンライスとイエローライス、ナンが選べる。病院食にすっかり飽きてしまった母は、中辛のカレーとナンを好んで食べる。僕は常に辛口なのだが、甘く見たココナッツミルクのホワイトカレーが意外に刺激的で、3日前に誘われてうかつにも飲み過ぎてしまった酒と煙草で痛めた胃が、微かにジンジンする。いけないなぁ。真面目に節制しないければ。母は自分の病歴を延々と語る。もう数十回繰り返された話。それでも僕は無言で頷く。食後のデザートは洋ナシのタルトとチーズケーキ、カフェ・コンパナとエスプレッソ。彼女はカフェの上に山のように盛られた生クリームを嬉しそうに頬張る。口の周りに白いクリームが残る。その度に僕は身振りでそれを拭き取るように促す。「おいしかった。」満足そうに言う彼女の言葉が、唯一僕を安堵させる。医療の手の中に居る彼女には家族が差し伸べる術は限りなく少ない。柔らかな秋の日の光がデッキを包み込む。今しばらくは外出できる。厳しい冬が訪れるまでは。山は鮮やかな色彩に燃え立っている。美しい実り豊かな季節を楽しむ。