人と組織の創造性を高める「ワイガヤ フォーラム」

「顧客の立場で価値について語り合う」ワイガヤを通して、人と組織の創造性は醸成されます。

下町ロケットとイノベーション

2019-01-14 14:05:11 | 日記

1月2日に特別枠で放送し終了した「下町ロケット」(池井戸 潤原作)について、イノベーションの観点からコメントします。

 

1.下町ロケットのイノベーションマネジメントをイノベーターと経営の2点から考えます。

1)イノベーターとしての佃航平

自社が取得した特許を競争他社へ供与することについて、普通の開発者、社員が断るのは当然です。「日本の農業を救う」ことを目的とした開発だから競争他社をも助けてしまうというところに開発の目的の重要性が際立っています。開発には目的があり、ホンダのワイガヤでは、A00として目的として設定しています。社会や顧客の問題点を解決するためには、結果として得られる価値を絶対的な価値として掲げることを推奨しています。なぜ日本の農業を救うという目的が大切なのでしょうか?ゼロベースで目的を設定することで、世の中に今までなかった価値を創造することでができ初めて絶対的な価値となり圧倒的な競争優位にたてるからです。開発プロセスを進めるなかで多くの困難を乗り切るためには、他社との競争を目的とするようなテーマでは、途中で乗り越える価値そのものが薄くなり世の中になかったということにはなりえなくなってしまいます。目的は金儲けではなく、社会や顧客を幸せにすることでにあるべきです。開発には様々な課題を超えていかなくてはなりません。これには揺るぎない精神力、言い換えれば社会や顧客に対する強い「愛」がなければ超えられません。「金儲け」「昇進」「恨み」を目的とする場合は、困難を乗り越える気概を持ち続けられないでしょう。フィックションのドラマだからうまくいったという見方もありますが、このドラマでは、過去多くの開発ストーリーで取り上げられた事象が散りばめられて、真に開発ストーリーの集大成の様でした。ドラマでは特許による紛争やリバースエンジニアリング等、絶え間なく開発プロジェクトで事件が続いています。ひとつ一つが、過去にあった事例であり、それぞれに実際の事例が思い浮かぶ展開でした。

佃航平の「日本の農業を救う」思いによって進められる社内外を巻き込む展開は、今後のイノベーション推進に大変役立つ内容なので、可能なかぎりコメントしていきたいと思います。

2)結果的にイノベーションを阻む、的場俊一と同様の上司は世の中に大変多く存在し的場俊一と似たどこにでもいる昇進志向の利益と結果を出す幹部は、上層部に存在するのが企業組織です。経営者から見れば利益と結果を出す部下を昇進させるので、自然と多く存在し、大企業ならばなお更、多く存在するからこそ繁栄し、企業が大きくなるための原動力として働く人材でもあります。しかしながら利益の源は、その下にいる部下やイノベーターが貢献していることを忘れてはいけません。また、評価については、その部下たちより上司が注目され階層が上がっていくことが多く、利益志向の上司ばかりになった組織は、周りにイノベーターたる部下が減り衰退していきます。大企業に、この事例は余りにも多く見られ、日本企業の失われた20年、デフレ日本の根本的な原因はここにあると言っても過言ではありません。優秀なイノベーターよりも、その上司が評価され、失敗は部下がとっていくからこそ、このような上司は昇進し経営層に増えていくのです。的場俊一は上昇志向が強く、技術にはまったく興味がなく現場の人や技術を目利きできません。結果、本質的な目的達成に関心がなく、他社に勝ち結果を出すことを優先して手段を選びません。大変不幸なことは、このような上司が経営者や上司になった場合は、事業環境が良い場合、直ぐに影響を与えないのですが、新規事業が減り顧客や協力会社からの信頼を失っていきます。評価の公平さを欠くので社員のモチベーションが下がり、市場環境の変化にも対応できないため衰退していきます。組織全体からすると必要悪なのかもしれませんが佃航平のようなイノベーターこそ評価していく必要があります。

以上 2点について今回はコメントしましたが、引き続き別の観点からお話をさせていただく予定です。


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