「いむれ内科クリニック」の院長の山本景三です。インフルエンザの予防接種の時期になりました。当院でも10月1日から任意の接種を始めています。豊橋市の高齢者インフルエンザ予防接種は14日(火)からですので、今しばらくお待ちください。
さて、今シーズンはインフルエンザのワクチン製剤を「北里第一三共」のものに変更しました。これはプレフィルドシリンジ製剤で、保存剤としてチメロサール(水銀化合物)を含まないものです。
従来は2人分の薬液が入ったバイアル製剤を使っていましたので注射器で薬液を吸引する操作が必要でした。もちろん十分にゴム栓を消毒して吸引し、使いかけのバイアルは当日中に使用する(翌日には持ち越さない)等の規定を守って使用していました。しかし注射針を刺す際に栓の一部が削り取られて異物となる(コアリング)などの困ったことも起きます。
プレフィルドシリンジprefilled syringeとは薬剤充填済みの注射器のことです。プレフィルドシリンジ製剤では1人分の薬液があらかじめ注射器に入っており、先端に注射針を付けて注射するだけです。バイアル製剤で問題となる異物混入・細菌汚染のリスクを軽減することができます。
チメロサールはエチル水銀由来の防腐剤で、バイアル開封後の細菌汚染防止のために古くから用いられてきた物質です。1990年代に、チメロサールを含有する予防接種を受けることと自閉症等の発達障害との因果関係が指摘されましたが、最近の疫学研究ではこれは否定されています。またエチル水銀の代謝・排泄は早いことから体内に蓄積しにくいと言われています。チメロサールを含有したワクチンを接種しても直ちに不都合が起こるわけではありませんが、ワクチンメーカーではチメロサールの含有量を減らしたり全く使用しないような製剤にする努力が行われています。
なお、この「北里第一三共」のワクチン製剤は1歳未満の赤ちゃんには接種できませんので「フルービックHA」を使用します。「フルービックHA」はバイアル製剤でチメロサールは含有しません。