「いむれ内科クリニック」の院長の山本景三です。年明けからずっとインフルエンザの流行がピークの状態でしたが、今週に入りやや減少に転じた様子です。しかしまた寒波が来るようなので体調にはご注意ください。
さてインフルエンザの診断ですが、最近は迅速検査キットがよく用いられています。鼻や喉に綿棒を突っ込んでグリグリするアレです。写真は迅速検査キットの試薬で、インフルエンザB型陽性であることを示しています。
実はこの迅速検査というものは感度があまり良くないことが知られており、少し前の研究では感度62.3%とのことです。最近の検査試薬は改良されてもう少し良くなっているのでしょうが、大雑把に言ってインフルエンザを発病している人の3人に1人は反応が出ません。要するに迅速検査で「陰性」の結果であってもインフルエンザではないことを証明するものではありません。「陰性です」とお伝えすると「やったー! インフルエンザじゃなかったー!」と絶叫される方がいますが、それ、間違いです。「検査で陽性なら休めるけど陰性なら出勤しなければならない」とおっしゃる方が時々いますが、それって会社の危機管理としてどうかと思います。
インフルエンザと診断されたら、次は治療についてご相談します。まず必要なのは解熱薬や咳止めで、症状をやわらげるためにしっかりお出しします。いろいろと問題なのはいわゆるインフルエンザの薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)です。
- タミフル(内服)
- リレンザ(吸入)
- イナビル(吸入)
- ラピアクタ(点滴)
これらの薬を使うと発熱期間が半日からせいぜい1日程度短縮する(早く熱が下がる)という効果があります。特効薬と思っている方が多いですが、それほどの効果はありません。「発熱したら医者にかかって必ずインフルエンザの迅速検査を受けなければならない。検査で陽性と出たら必ずタミフルを飲まなければならない。飲んだらすぐ治る(飲まなきゃ治らない)」と思っている方は結構多い気がします。
普段元気で持病がない方は、たまたまインフルエンザにかかっても自然に治ります。そこで当院では上記をご説明した上でご希望の方には処方することにしています。一方で高齢の方、重い持病のある方、妊婦さんなどはインフルエンザの薬を使う方がメリットは大きいと思います。
タミフルについての以前の調査では、全世界の生産量の75%を日本で消費していたそうです。欧米では解熱薬を飲んで体を休めるのがインフルエンザの一般的な治療のようです。