ブログ de ビュー

映画や本、テレビ、ゲームの感想がメイン。作品の記事はカテゴリ「索引」から探せます。

山猫 イタリア語・完全復元版(映画)

2011-12-03 23:59:00 | 映画
今回の記事は『山猫』(1963年、監督:ルキノ・ヴィスコンティ)です。
統一戦争で揺れるシチリア島を舞台にある名門貴族の没落を描いた重厚なる一大文芸巨編。
主演のバート・ランカスターの圧巻の演技、アラン・ドロンのかっこ良さといい、大変に豪華な内容に仕上がっています。
第16回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)を受賞した名作中の名作!
なお今回レビューは2004年に公開されたイタリア語・完全版が対象です。
第2回午前十時の映画祭上映作品。

■内容紹介 ※午前十時の映画祭ウェブサイトより
ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世によるイタリア統一戦争は、数百年の長きにわたりシチリア島を治めてきた名門貴族の地位を大きく揺さぶった。
山猫の紋章を持つサリーナ公爵(B・ランカスター)は、そうして己の地位が斜陽を迎えつつあることを感じつつも気丈に振舞っている。
そんな中、革命派の闘士となって片目を負傷した甥のタンクレディ(A・ドロン)が、避暑地へ向かう公爵一家と合流する。
そしてタンクレディは新興ブルジョワジーの娘アンジェリカに魅了されてしまう。

映像の世界遺産とも呼べるイタリアの至宝。

シチリアの大地に最後の輝きを放つ 貴族社会の壮麗なる落日 
抬頭する新勢力と滅びゆく者の美学を豪華絢爛に描く一大叙事詩


山猫

山猫

山猫


■感想
映画はとにかく荘厳にして本格派な内容だった。
映画後半の約1時間以上も続く舞踏会のシーンの豪華絢爛さと細部までこだわり抜かれているディテールの徹底ぶりは圧巻である。
近年の美麗なCGビジュアルが重視される映画には無い品格が映像に溢れています。
完全版に付けられた「映像の世界遺産」というキャッチコピーはまさに映画の魅力を的確に言い表している。

映画の内容はとても文学的でした。
イタリアの名門貴族の斜陽(富貴が衰亡へ向かう様)を重厚に描いた作品であり、セリフや映画の持つ雰囲気などどれを取っても殊に文学的です。
映画の物語に盛り込まれた1960年代のイタリア統一戦争という舞台背景をある程度は知っていないと映画を楽しむことがやや難しいかも知れない。
そういった意味で観客に一定の教養の高さが求められる一面がある。
僕はこの辺りの知識が乏しかったので映画前半戦は若干の置いてけぼり感を感じてしまった。
また文学的過ぎるが故に退屈に感じるシーンもあったという感想も実はある。
しかしそんなことは問題にならないぐらいに主演俳優2人の演技が素晴らしく魅了されてしまいます。
ドン・ファブリツィオ=サリーナ公爵を演じるバート・ランカスターと、その甥のタンクレディを演じるアラン・ドロンの2人がとにかく素晴らしい。

タンクレディは革命軍に参加したり、アンジェリカとの情熱的な恋に落ちるなど、まさに今輝いている青年でその未来の展望も明るい。
本当に良く出来た好青年であり、プレイボーイっぽい悪そうな雰囲気と爽やかさの二つを併せ持っていてとても魅力的です。
そんな青年をアラン・ドロンがとてもかっこ良く演じています。
女性だったら間違いなく一発で恋に落ちそうなぐらいにかっこ良いです。

対するサリーナ公爵は、シチリアの地を長きにわたって統治してきた名門貴族であり、誰からも尊敬の念を抱かれる一大人物だ。
しかし変革期のイタリアの最中にあり、己も老齢に達したという心境を抱くうちに自らの終焉を感じてゆく。
彼がタンクレディへ向ける眼差しには、彼を誇りに思う気持ちと共に羨望の想いが混在していて、狂おしいまでの胸の痛みを感じさせる。
豪華絢爛の舞踏会の喧騒を離れ、人知れずにひとり一筋の涙を流すシーンは観客全てを完全に映画に釘付けにする。
この瞬間、時が止まったほどに映画に惹きこまれてしまいます。
こんな複雑で深みのある役を演じられるなんて。
バート・ランカスター、もの凄い名優なのだと思い知らされてしまう。
若者には決して演じることのできない圧巻の魅力です。

これほどまでに滅びの美学を切実に感じられた映画は未だかつてない。
滅びの美学、衰退という同様のテーマを描いた映画は数多くあり、どことなく切ないという感傷に浸れる映画はあれど、この域にまで達している映画はそうはないのではないかと思う。
静かなのだけれど狂おしく胸を揺さぶってくる。
これは名画だ。
名作を観たいという方であれば絶対に必見の映画だと思います。

映画データ 
題名 山猫 イタリア語・完全復元版 
製作年/製作国 1963年/イタリア=フランス 
ジャンル ドラマ 
監督 ルキノ・ヴィスコンティ 
出演者 バート・ランカスター
アラン・ドロン
クラウディア・カルディナーレ
リナ・モレリ
パオロ・ストッパ
ジュリアーノ・ジェンマ
オッタヴィア・ピッコロ
ピエール・クレマンティ
ロモロ・ヴァリ
セルジュ・レジアニ
イヴォ・ガラーニ
アイダ・ガリ
マリオ・ジロッティ、他 
メモ・特記 第2回午前十時の映画祭上映作品
原作:ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ

カンヌ国際映画祭:パルム・ドール(最高賞)受賞 
おすすめ度★★★★☆
(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)

■Link
+⇒公式HP(Japanese)※午前十時の映画祭特設ページです。
+⇒山猫 - goo 映画

+⇒第2回午前十時の映画祭レビュー記事一覧

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogram投票ボタン ←ランキング参加中。よろしかったらクリックお願いします。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿