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別離(映画)

2013-06-02 23:00:00 | 映画
今回の記事は『別離』(2011年、監督:アスガー・ファルハディ)です。
イランの新鋭アスガー・ファルハディ監督が、一組の夫婦のすれ違いが思わぬ事態へと発展していくさまを、様々な社会問題や普遍的な家族の間の心の葛藤を丁寧に織り込みつつ、緊張感溢れる描写で描いたヒューマン・ドラマ。
2012年、世界の映画祭の外国語映画賞をほぼ総なめした極めて評価の高い傑作。

■内容紹介 ※Movie Walkerより引用 Link
ナデル(ペイマン・モアディ)とシミン(レイラ・ハタミ)は結婚14年の夫婦。間もなく11歳になる娘テルメー(サリナ・ファルハディ)とナデルの父の4人で、テヘランのアパートで暮らしている。
娘の将来を案じたシミンは国外移住を計画し、1年半かけて許可を得たものの、ナデルの父がアルツハイマー病を患ったことが誤算となる。
介護の必要な父を残して国を出ることはできないと主張するナデルと、たとえ離婚してでも国外移住を希望するシミンは対立。
話し合いは裁判所に持ち込まれるが、離婚は認めても娘の国外移住は認めないと、ナデルが譲らなかったため、協議は物別れに。
これを機にシミンはしばらく実家で過ごすこととなり、ナデルは、家の掃除と父の介護のために、ラジエー(サレー・バヤト)という女性を雇う。

はじまりは、愛するものを守るための些細な“嘘”だった――。

別離

別離

別離

■感想
アカデミー賞の外国語映画賞、ベルリン国際映画祭の金熊賞に輝くなど世界中の映画祭を席巻したイラン映画。
イランの映画は日本公開が少ないのであまり馴染みがない印象がある。この作品以外に過去観たことのあるイラン映画というと『友だちのうちはどこ?』ぐらいでしょうか。
この2作のイラン映画から共通して感じた印象は、映画的演出の少ない映画だという感じ。物語は極めて写実的に描かれていて、「これは○○だ」というようなメッセージの押し付けは無い。
観客の心を激しく揺さぶるような作品では決してなく、何かを静かに語りかけるような作品。
下手したら退屈にも感じる映画にもなり得るのだけれど、『別離』はプロットが秀逸で、かつ、何てことのない会話劇を不思議なほど緊迫感あふれる描写で描いているため、飽きは少なかった。

世界の映画祭を席巻した高評価も納得で、確かに間違いなく傑作映画だったと思う。
物語の根底となっているのは1組の夫婦の離婚問題なのだが、そこから介護問題、イスラム法における裁判、格差問題なども伺える。現代のイラン国内の社会問題を実に見事に脚本に盛り込んだ優れた脚本と評価されていますが、確かにその通りだと思う。
加えて意外とミステリー要素が強くスリリングに展開していく内容なので、社会派作品には珍しく飽きが来ず面白かった。

子供にとって両親の離婚とは極めて深刻な問題なのだということが切ない。
子供に両親のどちらかを選ばせるということは、子供の意見を尊重しているようで、その実これほど残酷な選択もないものだと思った。

映画のラストはこういう感じで終わらせるのではという予測はあったけれど、両親の別離のシーンを背景にそのままエンドロールへと入っていく演出や、音楽の良さも相まって余韻の残るラストとなっています。
ラストで描かれなかった答えは観客に委ねたという捉え方もできますが、たぶん違うのだろう。それはあの少女以外には、両親にも誰にも分からないことなのだから。

「黒いけど黒ではない」みたいな、どうにもふわふわした禅問答のようなよく分からないレビューになってしまってますね。
それは別に置いとくとして、当作が世界的評価の高い傑作であることは間違いありません。社会派映画の名作を観たいという方はぜひご覧になって観てください。

■登場人物ちょいメモ
妻・シミン(レイラ・ハタミ)
…娘の将来を考え、海外への移住を計画するが、夫のナデルに反対され、ついには離婚裁判にまでこじれる。
しかし離婚は簡単には認められず、しばらく家を出て別居することに。

夫・ナデル(ペイマン・モアディ)
…中流階級の上流の家族を養う父親。アルツハイマーを父を残して家は出れないと、妻シミンの海外移住計画を反対する。
一見すると家族思いで、世間体も良い父親なのだが……。

娘・テルメー(サリナ・ファルハディ)
…ナデルとシミンのひとり娘。11歳。真面目な性格で親に反抗することは少ない。
この作品で一番の被害者は彼女であることをどうか忘れないでいたい。

ラジエー(サレー・バヤト)
…妻の別居中、父の世話のためにナデルが雇った家政婦。敬虔なイスラム教徒で男性の体に触れることに抵抗を持っているため、父親の介護の仕事には不向きなのだが、彼女の生活の切実さと人間性を信頼したナデルは彼女を雇う。

ホッジャト(シャハブ・ホセイニ)
…ラジエーの夫。短気、かつ、無職で生活費を妻ラジエー任せという甲斐性のなさから、ろくでなしにしか思えず、ラジエーには同情するが、どうにもナデルを応援したくなる感情を観客に植えつける損な役。

ギャーライ先生(メリッラ・ザレイ)
…テルメーの学校の先生。ある事実の証人として裁判の席に呼ばれる。

■予告編


映画データ 
題名 別離 
製作年/製作国 2011年/イラン 
ジャンル ドラマ/ミステリー 
監督 アスガー・ファルハディ 
出演者 レイラ・ハタミ
ペイマン・モアディ
シャハブ・ホセイニ
サレー・バヤト
サリナ・ファルハディ
ババク・カリミ
メリッラ・ザレイ、他 
メモ・特記 アカデミー賞:外国語映画賞受賞
ベルリン国際映画祭:金熊賞(最優秀賞)・銀熊賞(男優賞)・銀熊賞(女優賞)受賞
ゴールデン・グローブ:外国語映画賞受賞
ほか、2011年度の外国語映画賞はほとんど総なめ⇒参考:wikipedia 
おすすめ度★★★★
(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)

■Link
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