山梨昆虫日記 -Journal on Insects in Yamanashi-

山梨県の南アルプス市を中心に昆虫を撮影するアマチュア写真家。めんどくさがりなのでとてもプロにはなれません。

回顧録(インド編2):パランギパティの漁師たち

2013-01-15 23:12:06 | インド
影日:2002年1月31日(インド共和国、タミルナドゥ州、パランギパティ)
データ:カシオQV-8000SX

パランギパティの漁師たちは、刺し網の一種の「流し網」という漁法で漁をする。木製の船は、小型もしくは中型のディーゼルエンジンを搭載していて、エンジンの回転軸から直接シャフトが伸びていて先端には推進力を得るためのプロペラが付いている。いま改めて思い返してみると車用のエンジンを改造したものだったのではないかと思う。

ヴィノットが「ヤマハのエンジンはとても需要が高いけど、高価で買えないんだ。」と言っていたのを思い出す。それにしても今にして思えば、日本人の私にしてみれば何とも頼りないこのエンジンをぽつんと積んだだけの船で、よく50キロ沖合まで出てイルカの調査なぞをやっていたなと思う。なにしろ無線もましてやGPSなんて言うものはいっさいないのだ。エンジンが止ってしまえば、スリランカあたりまで漂流するしかないのだ。

ヴィノットの家も一隻の船を持っていたのを覚えている。この船をチャーターして、沖合までイルカを探しに4回くらい出ただろうか。今でも鮮明に覚えているは、この船の船尾には2つの旗が掲げられていて、1つはヒンドゥ教でもう1つはイスラム教のものであった。パランギパティという漁村は宗教に関しては寛容なところだったと記憶している。


漁が終わり網の修理をする漁師たち。漁師が漁具の手入れを怠らないのは日本でもインドでも同じだ。


回顧録(インド編1):パランギパティ

2013-01-14 19:45:30 | インド
撮影日:2002年2月6日(インド共和国、タミルナドゥ州、パランギパティ)
データ:QV-8000SX(1/917s f/4.8 6.19mm)

大学院の修士課程に入って、2年目の初春から初夏にかけて修士論文のデータ収集のためにインドの南東に位置するパランギパティ(Parangipettai)という小さな漁村に滞在した。ベンガル湾に面したこの小さな漁村は、歴史的にタミルナドゥ州の州都であるチェンナイから海沿いに約240キロほど南下したところにあるチダムバラム(Chidambaram)という都市の港としての機能を果たしてきた。

写真は、お昼前に港で撮ったものである。白いシャツの青年はヴィノットといい、滞在中に私の調査研究の手伝いをしてくれた地元の漁師だ。記憶が確かならば、当時28歳だったと思う。今思い返すと、私は25歳だったから、彼の方が年上だったわけだ。少し時間にルーズなところのある彼だったが、一生懸命に漁師たちと私の間を取り持って助けてくれたのを思い出す。

ヴィノットはと私は英語で意思疎通をしていたけど、彼の話す英語はお世辞にも上手とは言えなかった。ただし、彼の聴く力は素晴らしかったのをはっきりと覚えている。どうして片言程度の英語しか出来ないのに、不思議なことだが私が言ったことをしっかりと理解していた。そうでなくては5ヶ月も一緒に調査できるわけがない。

あれから10年。彼はどうしているだろうか。インド洋大津波を生き残っただろうか。