気まぐれ日記

気ままに、また、思い出に

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 上野国立西洋美術館

2020-07-10 | 美術館(キルト展を含む)
グランド・ツアー

旅行に行くなら、世界遺産が世界一多いイタリア。
旅行に行ったら、写真をたくさん撮りたい、景色の良いポストカードがあれば買いたいとみんなが思います。この時代はどちらもありませんから、せめて素敵な絵を買って帰ろうとなり、カナレット等の画家が大人気になります。

カナレット
『ヴェネツィア大運河のレガッタ』
カナレットは、正確な風景にレガッタのお祭りイベントを組み入れ、さらにこの位置からは見えない橋もサービスして、躍動感ある景色を描きました。


クロード=ジョゼフ・ヴェルネ
『ローマのテヴェレ川での競技』
競技を競う、こちらにも人が押し寄せ、密閉ではないけど、密着、密接の二密状態です。


フランチェスコ・グアルディ
『ヴェネツィア サン・マルコ広場』



ポンペオ・ジローラモ・バトーニ
『リチャードと・ミルズの肖像』

「景色もいいけど、私をアップで、得意ポーズで描いて。私は、今、ここにいます。」と注文したのでしょう。
五賢帝の一人、マルクス・アウレリウス像も一緒に描いてもらいたかったのしょう。



風景画とピクチャレスク

クロード・ロラン
『海港』
沈み行く夕日、船、荘厳な建築、木々、散策したり、働く人々と美しい風景は実在ではありません。
ロランが描いた理想の風景です。



ヤーコブ・ファン・ロイダース
『城と廃墟と教会のある風景』
オランダを代表する風景画家、ロイダースは、イギリスでも人気があります。
『死ぬまでに観ておきたい世界の絵画1001』にも選らばれたこの絵は、
実際に観ると細部まで細かい細密描写がすばらしい。
『細』が3つ揃っています。



ニコラ・プッサン
『泉で足を洗う男のいる風景』
プッサンの作品が風景画のジャンルで来日、しかもまた、よりによって難解なこの絵とは。
足を洗う男や手前の人物は、なんとなくわかりますが、真ん中の大きな木の目立つ✕じるしとその下に吊るされている2つ(不気味にも見える)は何かは、わかりません。


せっかくなら、同じロンドン・ナショナル・ギャラリーの『チコちゃんに叱られる アイドルってなあに!』
で紹介された、プッサンの
『黄金の仔牛の礼拝』も来てもらいたかったです。
わかりやすいのに、残念❗️


アルベルト・カイプ
『羊飼いに話しかける馬上の男のいる丘陵風景』



カイプの代表作で、ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵で、『死ぬまでに観ておきたい世界の絵画1001』に選ばれ、オランダ風景画の最高傑作と言われる『騎馬人物と農民のいる川辺の風景』は残念な事に来日は、かないませんでした。




トマス・ゲインズバラ
『水飲み場』



リチャード・ウィルソン
『ディー川に架かるホルト橋』


イギリス人が大好きな
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
『ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス』
神話を基にした風景画ですが、風景の中に、上手く神話を組み入れて描いています。

ターナーは、ぼわ~ンとした絵を描く画家の印象が強かったのですが、
細かく描いています。
船を導く魚の群れ、海のニンフのエレネス、赤い旗の下の赤い服が目立つオデュッセウス、1つ目の巨人は雲に重なり、アポロンの4頭建ての馬車の馬は、よくよく観ないとわかりません。


ターナー並ぶ風景絵画の
ジョン・コンスタンブル
『コルオートン・ホールの
レノルズ記念碑』


広大な風景が多い中、目立つ絵です。ルネサンスの巨匠、ファーストネームで讃えられる、左のミケランジェロと右のラファエロの胸像を配し、レノルズを讃えています。

イギリスにおけるフランス近代美術受容

ジャン=オーギュスト=トミニク・アングル
『アンジェリカを救うルッジェーロ』

『グランド・オダリスク』で、なが~い背中を描いて、「背骨が一本多い」と言われてしまったアングルですが、今回は、「人の首がこんなにも曲がらない」と言われたそうです。確かに!
アングル好きとしては、それは気にせずに鑑賞します。



ジャン=バティスト=カミーユ・コロー
『西方より望むアヴィニョン』


アン・シェフェール
『ロバート・ホロンド夫人』
モダンな感じなので、最近描いたようにも見えます。



ピェール=オーギュスト・ルノワール
『劇場にて (初めてのお出かけ)』
ルノワールの絵は、常設展にいつも展示されています。



クロード・モヌ
『睡蓮の池』
常設展にモネの睡蓮の大きな絵もあります。


エドガー・ドガ
『バレエの踊り子』


ポール・セザンヌ
『プロヴァンスの丘』


同じセザンヌ
『ロザリオを持つ老女』


花の絵
アンリ・ファンタン=ラトゥール
『ばらの籠
花の絵画は、いつの時代も人気があります。




ポール・ゴーガン
『花瓶の花』
バックの色彩も明るいですね。



フィンセント・ファン・ゴッホの『ひまわり』
7点ある『ひまわり』の中で一番有名で、これが『死ぬまでに観ておきたい世界の絵画1001』に選らばれています。

アルルの「黄色い家でのゴーガンとの共同生活を期待して、そこに飾るために描かれました。
厚く練り重ねられていますが、穏やかなタッチです。
青色の署名がしっかりと載せられてます。



ゴッホのひまわりは、全部で 6点あります。
最初は、3本のひまわり。



次は2本増えて5本になります。
日本の芦屋にありましたが、神戸の空襲で消失してしまいました。
でも、徳島県鳴門市の大塚国際美術館だけでまだ、観る事ができます。
大塚国際美術館には、ゴッホの『ひまわり』のコーナーがあり、全部の作品が展示されています。


3作目は、更に増えて12本になり、署名が入ります。



4作目がロンドン・ナショナル・ギャラリーの上の作品です。

5作目が、日本のSOMPO美術館にあります。
これは、ゴッホ自身が4作目をコピーしました。
これ以後は、コピーだし、署名もありません。



6作目は3作目の、7作目は4作目のコピーとなっています。
コピーといっても、少しずつ違っています。

ミュージアムショップでは、マスクカバーにもなる、フェルメールのチケットホルダーを買いました。
新型コロナウィルスが怖いので、この日もマスクを3枚持参して、外す度にマスクを換えての外出でした。









久しぶりの美術館で日時指定なので、ゆっくりとたくさんの名画を鑑賞できて、有意義な時間を過ごす事ができました。
































ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 上野国立西洋美術館

2020-07-05 | 美術館(キルト展を含む)
スペイン絵画の発見

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
『幼い洗礼者聖ヨハネと子羊』
子供、とりわけかわいい少年(聖人も市井の子供も)を愛情いっぱいに描いている、ムリーリョの絵が2点展示されています。



『窓枠に身を乗り出した農民の少年』有名な絵です。



フランシスコ・スルバラン
『アンティオキアの聖マルガリータ』
すばらしく美しい絵です。
麦わら帽子を被り、左手に祈祷書、右手に羊飼いの杖を持つ穏やかな表情のかわいい女性は、一見、普通の女性に見えますが、後ろに大きな竜を従えているので、聖女マルガリータとわかります。
画中の全ての質感がそのまま伝わってきます。
彼女が持つ刺繍入りの袋は、そのステッチ糸までも一針一針見事なとしか称賛の言葉がうまくでないくらい思わず凝視してしまう、感動の作品です。



ルカ・ジョルダーノ
『ベラスケス礼賛』
レオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』レンブラント・ファン・レイン『夜警』と並んで、世界三大名画『ラス・メニーナス』を描いたディエゴ・ベラスケスを讃えたのでしょうが、ベラスケスはもっとハンサムだと思いますけど。
怪しい魔法使いみたいです。
ベラスケスの絵画は、魔法でも使ったようなすばらしさだと表現したかったのでしょうか。



その、ディエゴ・ベラスケス

『マルタとマリアの家のキリスト』
タイトルの後ろの3人より手前の2人の女性たちに眼が向いてしまいます。
どうも、タッチがベラスケスらしくない(近くで観ると、どうみても荒いタッチなのに、離れて観ると細かく精密に観えるのが不思議!)
と思って観ていたら、20歳くらいの若い時の作品だそうです。

こちらも魚、卵、にんにくや調理道具の質感がはっきりと伝わってきます。


ファン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソ
『喪服姿のスペイン王妃マリアナ』

『ラス・メニーナス』


で国王フィリペ4世と一緒に鏡の中に描かれている、マルガリータ王女のお母さんです。伯父、姪の近親結婚で生まれた3人の子供が早世してしまい、喪服を着る事が多かったのでしょう。
悲しそうです。



エル・グレコ
『神殿から商人を追い払うキリスト』
鮮やかな色彩と厳しい表情のイエスが描かれています。

フランシスコ・デ・ゴヤ
『ウェリントン公爵』
ワーテルローの戦いで、連合軍を指揮して、フランスのナポレオンを撃破したイギリスのウェリントン公爵の肖像画です。
当時、宮廷画家だったゴヤが描きました。
ウェリントン公爵がこの絵をどう感じたかは不明ですが、威厳ある軍人というより、戦い疲れたようにも見えてしまいます。
やたらと勲章が目立っています。
下には、別の画家が描いた絵も載せておきます。





ウェリントン公爵は、勲章が目立ってなくても、おそらく、下の絵を喜んだと思います。
ゴヤのこの絵は、盗難に遇いましたが、なんとか無事に戻って来ました。




















ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 上野国立西洋美術館

2020-07-04 | 美術館(キルト展を含む)
ヴァン・ダイクとイギリス肖像画

アンソニー・ヴァン・ダイク
『レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー』
こちらも『死ぬまでに観ておきたい世界の絵画1001』に選らばれいます。
ヴァン・ダイクは、『王の画家にして画家の王』と讃えられる巨匠、ピーテル・パウル・ルーベンスの最良の助手でしたが、師匠が偉大過ぎて、活躍の場がないと活路を求めて、当時、絵画後進国だったイギリスに渡って成功した画家です。

依頼された、肖像画を本人より優美に上品(古川雄大さんもこの事を漏らさずに解説します。)に、雰囲気までもほどよく理想的に描くため、大人気を獲得しました。

今だと、皺やほうれい線をなかった事にすれば、それはみんな喜びますよ!

この絵は、結婚が決まった妹に花を差し出すキューピッドを描き、また、姉妹のコスチュームもイギリス人好みの華美過ぎない上品さでまとめています。



また、常設展には、ヴァン・ダイクの『レガネース侯爵ディエゴ・フェリーぺ・デ・グスマン』も展示されています。
威厳を感じさせる肖像画です。



ヘリット・ファン・ホルトホルスト
『ボヘミア王妃エリザベス・ステュアート』
自然を背景にたたずむ王妃の肖像画ですが、なぜか、絵の中央左端にある文字『Queen of Bohemia 』が目立って、気になりました。



ジョージ・スタッブス
『ミルバンク家とメルバーン家の人々』



ジョゼフ・ライト・オブ・ダービー
『トマス・コルトマン夫妻』
上2作のような意識したカメラ目線(画家目線かな)でなく夫妻を自然なワンシーンにして描いてます。



ジョシュア・レノルズ
『レディ・コーバーンと3人の息子』
こちらは、室内なので、犬でなく、オウムと一緒に描かれています。
古代のコスチュームでとリクエストしたのでしょうね。
神話や伝説の人物に憧れて、自分たちもそのように描いてもらいたかったのでしょう。


トマス・ゲインズバラ
『シドンズ夫人』

こちらは、イギリスが誇るウィリアム・シェークスピアの『マクベス』で『マクベス夫人』を演じる女優、シドンズ夫人で、マクベス夫人のコスチュームでの肖像画です。
小さい絵ですが、凛とした気品のある美しい表情が印象的でした。


トマス・ローレンス
『シャーロット王妃』
大きな作品なので、背景まで丁寧に描いています。
こちらのコスチュームも素敵です。












ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 上野国立西洋美術館

2020-07-03 | 美術館(キルト展を含む)
オランダ絵画の黄金時代

レンブラント・ファン・レイン
『34歳の自画像』
『死ぬまでに観ておきたい世界の絵画1001』にも選らばれたレンブラントの自画像です。

ラファエロ・サンチェ、ミケランジェロ・ブオナローティ、ティツィアーノ・ヴェチェッリオと偉大な画家は、ファーストネームで後世に残る。自分もそうありたいとの思いをこめて、『レンブラント』と大きな署名を右下に記入した自画像です。
愛妻、サスキアを得て仕事も順調な時に描かれました。
なお、レンブラントの自画像は、大塚国際美術館に数多く展示されています。


ポーズも同じロンドン・ナショナル・ギャラリーのティツィアーノが描いた肖像画を真似ています。



世界的大人気画家、ヨハネス・フェルメール
『ヴァージナルの前に座る若い女性』
フェルメール最後の絵になってしまいました。
左の窓は、夜のカーテンがかかり、室内の光りは右からと今までとは違う構成で、あれこれと模索していたのかもしれません。
隅々まで丁寧に美しく描かれています。

背景の絵画は、フェルメールも描いた『取り持ち女』なので、肉欲に対しての戒めがこめられている?

若い女性は、手前の楽器の弾き手の男性に対して、合奏を促しているのか、『もう夜も遅いのでお帰りなさい。』と催促しているのか、いつもながら、鑑賞者の想像をかきたてる絵となっています。

私は、絵にちりばめられている『夜』『若い女性』『取り持ち女』を結びつけるなら、後者の方かなと感じています。


フランス・ハルス
『扇を持つ女性』
レースの質感、美しさがすばらしいし、実物の絵は、さらに美しい!
バックを黒にしているため、余計にレースの白さが引き立っています。



ウィレム・クラースゾーン・ヘーダ
『ロブスターのある静物』
こちらもシルクやさまざまな調度品
の質感がとても上手く描写されています。











ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 上野国立西洋美術館

2020-07-02 | 美術館(キルト展を含む)
新型コロナウィルスのため、会期が遅くなりやっと始まったロンドン・ナショナル・ギャラリー展に期日時間指定を取って出掛けました。
こんなに人がいない上野公園は初めてです。





美術館の入り口には、2人のスタッフが期日時間指定の確認をしていました。
指定のため、開場はとても空いていました。




イタリア・ルネサンス絵画の収集

パオロ・ウッチェロ
『聖ゲオルギウスと竜』
『死ぬまでに観ておきたい世界の絵画1001』に選らばれています。


意外と小さな絵でした。
今のアニメにも見えてしまいます。
この絵はどうみても、王女が毒竜を怖がってないように見えます。
聖ゲオルギウスが毒を吐く竜の口を一撃でふさいで、そのあと、王女の帯を竜の首に巻きつけて、王女と竜を連れ帰ったという話を一緒に描いたみたいです。

竜は、邪悪な物の象徴にもなるので、今だと毒竜=新型コロナウィルス
で、早くこの状況が収まってもらいたい限りです。

また、聖ゲオルギウスは、イングランドの守護聖人にもなっています。
そのためか、ロンドン・ナショナル・ギャラリーには、数点同じテーマの絵画があります。
どちらも『死ぬまでに観ておきたい~』に選らばれています。

ヤーコボ・ ティントレット


ドメニキーノ


カルロ・クリヴェッリ
『聖エミディウスを伴う受胎告知』
こちらも『死ぬまでに~』に選らばれいます。
奇蹟の来日とまで言われるこの絵は、華やかさがずば抜けています。
照明の関係で離れたり、近づいたりして鑑賞しました。

キリスト教の慶事の受胎告知と、アスコリの町に自治権が認められた日が同じ3月25日なので、慶事の両方を描いています。
アスコリの守護聖人の聖エミディウスが、大天使ガブリエルの横で町の模型を持っています。
上には、自治権を承認する勅書を見つめる人物が描かれています。

理屈抜きで細かさ、美しさが堪能できます。



国立西洋美術館には、常設コーナーに、同じクリヴェッリの『聖アウグスティヌス』が展示されています。




ドメニコ・ギルランダイオ
『聖母子』
実物はこれよりずっと綺麗です。
マリアのヴェールが繊細でとても美しいです。



サンドロ・ボッティチェリ
『聖ゼノビウス伝より初期の四場面
左から右へと時間が進みます。


ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
『ノリ・メ・タンゲレ(我に触れるなかれ)』聖書の一場面で、復活したイエスが最初に出会ったマグダラのマリアに言った言葉で、多くの画家が農具を持つイエスを描いています。
山から、犬と坂をかけ降りる羊飼いも描いています。



ヤコボ・ティントレット
『天の川の起源』
中野京子さんが『名画の謎 ギリシャ神話篇』で、この絵におもしろい吹き出しをつけています。

描かれたのは、赤ちゃんを抱えたゼウスとゼウスの妻のヘラ、ヘラのお乳を力強く吸う赤ちゃん(ゼウスが他の女性に生ませた。ヘラのお乳を吸うと不死になれるので、ゼウスは、我が子に飲ませたい!)がヘラクレスで、寝ていたヘラ(他の女性が産んだ子には、絶対にお乳を与えたくない!)が飛び起きて、ベッドからずり落ちそうになるほど強くお乳を吸ったため、上に飛び散ったのが天の川(ミルキーウェイ)になり、また、下に落ちたのがユリの花を咲かせたという話です。
おもしろい、賑やかな絵になっています。
美貌自慢の妻がいながらに、浮気しまくる夫、それでいて、離婚しないカップルとは、最近聞いた事があるなぁ。

この絵は、下半分が切り取られたそうです。
なお、音声ガイドの古川雄大さんはユピテルとユノで解説しています。



常設展には、ティントレットの『ダヴィデを装った若い男の肖像』が展示されています。