静かに剥げ落ちていく現実はリアルとはまた違う、思想が現実に根差していることはリアリズムではない、それはただ現実的というだけのものだ、短絡的に周囲の価値観に日和るだけのものはイズムではない、十円玉を見て十円玉だと言うことをイズムとは言わない、リアルとは思想によって加工された、あるいは余分なものを剥いだ、あるいは建前を除去した、そうした根本的なものをそう呼ぶべきだ、そう、感じ方は自由だ、でも、語るのであればある程度の水準が求められる最低限ここから上、というラインがある、簡単に言えば、それは自分で考えることであり、なにかしらそれによって得た大なり小なりのこだわりや作法があり、結果がある、まあ早い話、絵に例えれば自分なりのタッチ、音楽なら声質やフレーズの解釈、文章なら表現力や筆力といったものになる、そう、とても簡単に言えばそう言うことになる、でもそこにはもちろん数限りない試行錯誤や努力があり、その過程は全部異なる、それはオリジナリティーと言い換えてもいいかもしれない、それは美学と言ってもいいかもしれない、でも、そんなことを説明したところで、リアルというものをただの現実だと考えている人間にはなにも伝わらない、時間の無駄、長い時間の中で、そうした連中に何が伝わるのか試してみたことがある、結果はゼロだった、まあ、やる前からある程度わかってはいたけれど、感性というものがまるでない人間なんて別に珍しいもんじゃない、試みは早々に切り上げた、二千文字の羅列からほんの数行を切り取ってひっくり返してそれでおしまい、ひとつの意味をひっくり返すだけ、文脈もなにもあったもんじゃない、わかるところだけ拾えばいいという安直さ、馬鹿馬鹿しい、お話にならない、俺は少しのんびりと食事をした、ひとつひとつをゆっくりと噛んで、少しずつ飲み込んだ、いつもと同じ量を食べたのに、ひどく満たされた気がした、結局、意識的になるかどうかなのだ、意識的になればなるほど、無意識下のものが書き出せるかどうかなのだということが大事だということがわかってくる、つまり、自分すら理解出来ない領域の為に俺は言葉を躍らせ、踊らされている、認識出来ない、でも確かに理解していると感じる、それを俺はリアルと呼んでいる、そして、そんな感触を言葉にすることをリアリズムと呼んでいるのだ、だからこそ、それはロマンチシズムの先にあるものだ、と何度か口にしているわけだ、生きざま、なんて言葉に変えてみるのもいいな、あなたはどうして書いている?と聞かれて、明確に返せるうちは青二才だってことさ、どうして書いている?と尋ねられて、いまはもうわからない、と答えてるようになって初めて入口に立ったと言えるのさ、リアルは漠然としていて当り前ということだ、それは掴み切れない、それはいくら見ようとしてもすべてを見ることは出来ない、それはどんなに言語化しようとしても出来た気がしない、でも確かにある、その片鱗を見ることは出来る、それがリアルってやつだ、それがリアルっていうものなんだよ、それをわからないまま追っかけて行くんだ、そこには正しいか間違ってるかの基準すらない、だから、半端な気持ちだと追い切れない、迷いが生じる、迷いが生じると遅れる、遅れを感じると脚を止めてしまう、そうして何人もの人間がいつの間にか居なくなっていった、いまもしかしたらそれを追いかけているのは自分だけなんじゃないかと思うことがあるよ、でもそのことをどう考えることもない、きっと俺だけじゃないはずだし、誰か居たとしても居なかったとしても俺のやるべきことが変わるわけじゃない、もしも隣り合わせることがあるとしたら少し休憩してややこしい話に花を咲かせるのも悪くないかな、なんて考えることはあるけどね、とにかく、その点はリアルを追うことについては何の関係もないっていう話さ、ひとついいかい?人はそれを真直ぐに追いかけたがる、まるでそうしないと不誠実だっていう具合にさ、だけど、そいつは脇道にしか居ないことだってある、俺が気まぐれなのと同じようにね、そうさ、向こうがそうでない理由なんてなにもないはずじゃないか、だから俺は嗅覚、あるいは触覚でもってそいつがどこに居るのか突き止めなければならない、経験値がある程度あれば、そこにカンというものが加わってくる、そいつをあてにするんだ、リアルはどこにだって行ける、どこにだって姿を隠す、もしかしたら何処にももう無いのかもしれないというくらい完璧に隠れることだってある、生きてる限り続く追いかけっこさ、頭を使うだけでは駄目、カンに頼るだけでは駄目、闇雲に走ったって駄目だ、正解は見つけ出すことじゃないかもしれない、近くに潜むだけでいいことだってあるかもしれない、選択肢は無限にある、だけど、もっとも有効な手段はなにかっていうことくらいなら俺にだって話せる、それはなにかっていうと、生命力とでも言うべきものなんだ。
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