安曇野
山間の宿に来てくれるお客さんは、くねくねとした道路を車で走ること自体に旅のロマンを感じています。それなのに町からバイパスで一直線に来てしまったら、
「秘境」を訪れる感動は半減してしまうことでしょう。
祖谷を訪れる旅人は、古民家だけを見に来ているのではなく、
周辺の風景を楽しむことを目的にしています。
肝心の風景を壊す建造物が増えたら、
祖谷への興味は減り、足も遠のいてしまうはずです。
便利さを求めることは、安全にもつながることで、その必要性は否定しません。
しかし、その前提である景観を壊す道路や駐車場、ハコモノの建設は本末転倒です。
祖谷に限らず、全国的にいえることですが、
地域観光にとって一番大切な資源とは、素朴で美しい風景です。
その風景の中に、やみくもに道路を通し、
さらにその工事に伴って山と川にコンクリートを敷き詰めることは、
やはり観光公害にほかなりません。
アレックス・カー 清野由美『観光亡国論』より