ラグビーが好きで好きでたまらず、だから休みなしでいつまでも働ける。
プロのコーチや監督であるなら当たり前じゃないか。
そう思えるかもしれない。
でも案外、本当の本当にそういう指導者は少ない。
まるで「普通の人」のように、たとえば、
もうひとつしつこく試合のビデオを分析することなしに娯楽番組を見たり、
選手と接するよりも、一刻も早く自分の娘や息子を風呂に入れたいと願うものがたくさんいるのだ。
エディー・ジョーンズのコーチングを大きくとらえて優れているのは
「よく考え、よく準備して、決めたことは絶対にやらせる」ところにある。
これもまた、そんなの当然と言われそうだが、
もっと妥協的なコーチのほうがはるかに多い。
選手をよく観察する。個性をつかまえる。
情報収集を怠らず、しっかりと計画を立て、方針を自信満々に浸透させる。
ちっとも驚くことはない。
日本の高校ラグビーの名監督、大学の優秀な週末コーチ、スクールのお父さん指導者にも、
多数ではなくとも、そういう個性は存在する。
エディー・ジョーンズは、超人でも救世主でもない。
世界を知る「よくコーチ」なのである。
(藤島大『エディーのラグビー』より)