日なたぼっこをしているうちに眠りこんでふわふわにふくらんだ猫と散歩や買物の途中の道で出あうと、
たいていの猫は「びにゃ」と一声鳴くのだが、これは人間の言葉で言えば、
いいお日和で、という意味であることは説明を要すまい。
日だまりでの昼寝からブラブラ歩いて戻ってきた猫はふかふかの日なたくさい匂いをさせ
尾をピンと立ててまだ眠そうに眼を細くしたまま「ニャア、ニャア」と鳴き、
これは言うまでもなく「ただいま。お腹がすいた」という意味で、
その後さらに日なたくさいあたたかな額をこちらにグイグイ押しつけながら
仔猫のように細く高い声で鳴くのは「好き、好き(おいしい魚をくれるから)」という意味である。
金井美恵子『遊興一匹 迷い猫あずかってます』より