安曇野ひつじ屋 裏のブログ

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好き、好き(おいしい魚をくれるから)

2019年01月28日 | ネコの写真

日なたぼっこをしているうちに眠りこんでふわふわにふくらんだ猫と散歩や買物の途中の道で出あうと、
たいていの猫は「びにゃ」と一声鳴くのだが、これは人間の言葉で言えば、
いいお日和で、という意味であることは説明を要すまい。

日だまりでの昼寝からブラブラ歩いて戻ってきた猫はふかふかの日なたくさい匂いをさせ
尾をピンと立ててまだ眠そうに眼を細くしたまま「ニャア、ニャア」と鳴き、
これは言うまでもなく「ただいま。お腹がすいた」という意味で、
その後さらに日なたくさいあたたかな額をこちらにグイグイ押しつけながら
仔猫のように細く高い声で鳴くのは「好き、好き(おいしい魚をくれるから)」という意味である。














金井美恵子『遊興一匹 迷い猫あずかってます』より

アニャッ、この中には男より強いものがいるのかしら

2019年01月27日 | ネコの写真

以前、言語学者の西江雅之氏に聞いたアフリカのマサイ族の民話に、
「猫はなぜ女(主婦)になつくようになったか」という話があって、
それはサバンナに住んでいる猫が自分のこれからの生き方を考えるところからはじまる。

自分のように小さくて愛らしい、のんびり寝たり遊んでいたりするのが何より好きな生き物は、
なんにしてもこの世で一番強い動物のそばにいて愛嬌をふりまくのが有利な生き方ではないだろうか、
ということに考えがまとまり、
とりあえず姿も自分に似ているうえにサバンナではなんといってもライオンが一番強いから、
ライオンにシッポを振って養ってもらうことに決める。

ところがある日、人間の男がやって来て槍でライオンを殺してしまったので、
ライオンより強い人間の男に養ってもらおうと決め、男の後をついて村に行く。
男は村の自分の小屋に入って行ったので、入口のところに座った猫は、
サバンナやブッシュを歩いているうちに毛皮についた細かいゴミをきれいに舐めていると、
男が小屋の入口から頭を抱えて飛び出して来たので、
アニャッ、この中には男より強いものがいるのかしらと驚いていると、
入口から棍棒を手にしたおかみさんが出て来て、男を罵倒した。
そこで猫は、この世で一番強いのは人間の女だ、ということを知り、
それ以来ずっと家と人間の女の近くでシッポを振って養ってもらうことに決めた、というのである。















金井美恵子『遊興一匹 迷い猫預かってます』より

おいしいあぶらを君はなぜひとりでなめてしまうのか

2019年01月03日 | ネコの写真

猫とねずみは一緒に暮らしていました。
ふたりは、冬になって食べ物がなくなったときに備えて、
おいしい油の入った壺を買い、教会の祭壇の下においておきました。

しかし、冬にならないうちに猫は、
そのおいしい油をひとりでうまうまなめてしまったのです。
冬になってそのことがわかり、ねずみは怒りました。

「ふたりで買った、おいしいあぶらを君はなぜひとりでなめてしまうのか。
冬になって私たちの食べるものがなくなってしまったではないか。
どうするつもりだ」

そう言ったねずみの目は真っ赤でした。















町田康『猫とねずみのともぐらし』より