安曇野ひつじ屋 裏のブログ

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彼らはこちらをじっと見つめる

2020年02月29日 | 旅の写真

こちらが車の中にいようと歩いていようと、彼らはこちらをじっと見つめる。
「ガン見」という言葉がいちばんぴったりだ。
怒っている感じでも、妬んでいる感じでもない。ただひたすらにじっと見つめる。
それで見つめ返してみるけれど、目がずっと合っていることもあまり気にしないみたいだ。
じゃあと思って、にっこりと笑いかけてみると、たいていの人は信じられないくらいかわいい笑顔になる。
笑顔にならないのはエアインディアのカウンターの人たちくらいだったな。

吉本ばなな『イヤシノウタ』より












バラナシ(インド)

完璧でない掃除だが毎日くり返しても飽きることはない

2020年02月28日 | 旅の写真

男性たちは庭の芝生をひたすらきれいにしていた。
風で落ちて来た木の枝を取ったり、プールの周りを洗ったり・・・・・・これまたたまに立ち話をして手がゆっくりになったり、てきぱきしてない感じで。
でも芝生はほどほどに、ちょうどいい感じにきれいになっていった。

目の前の机にはアリンコやハエがしきりにやってくる。
私もまたそれらをなんとかしようとは思わない気持ちになっていた。

彼らは働いていないわけではない。そしてさぼっているわけではない。
人に見られているからしかたなく働いている雰囲気を出しているわけでもない。
あのテンポや雰囲気ややり方こそが、ほんとうに人が「働いている」という感じなのではないかな、と私は思った。
しゃかりきでもない、なにも目指してない、でもさぼってない。
神様のテンポ、自然の中で違和感のないスピード。
完璧でない掃除だが、毎日くり返しても飽きることはない。

吉本ばなな『イヤシノウタ」より









沖縄

百万円ならいつでもお渡しできます

2020年02月25日 | ネコの写真

あるとき、私が例によって「親を看取り終わったらお金がなくなってたよ〜」みたいなことを言ったら、
まだ小さいお子さんが三人もいる友だちのまみちゃんがメールできっぱりと、
「百万円ならいつでもお渡しできます」と書いてきた。
この対応すごいなあと思った。そこにある全てのすばらしさがまねできないものだった。
私はそんなまみちゃんがとても好きだ。
私もだれかにとってまみちゃんのように明快でありたい。
くよくよ考えたり、気取ったり、自分の良さを盛ったりしないような、
そういう反射的な反応に関しても明快であれるような人生を歩みたい。














吉本ばなな『イヤシノウタ』より

なんてことないように思えることが、あとですごくだいじになるよ

2020年02月19日 | ネコの写真

いろんなことがなんと遠くに行ってしまったんだろう、と雨がつたう窓を見ながら私は思った。
遠くに行ってしまったものはなんでみんなこんなにも美しいんだろう。
でも小さいとき、ときどき私は未来の自分のまなざしを感じていた。
「なんてことないように思えることが、あとですごくだいじになるよ」
とそのまなざしの主はいつも言っていた。

そうか、そう思った方がいいんだろうな、と私はぼんやり思ったものだった。
やっぱりそうだったのかと今は思う。














吉本ばなな『イヤシノウタ』より

それ以外は全部やめてしまってはどうか

2020年02月07日 | ネコの写真

松下電器の会長時代、幸之助は本社が営業所や事業所から上げさせる報告の数を聞いてみた。
すると240種類もあった。なぜこんなに必要なのか。
つくるのも読むのも大変だし、実際的とは思えない。
そこでこう提案した。
「あした会社がつぶれると困るから、あしたつぶれるということに関係のあるものだけは残すけれども、それ以外は全部やめてしまってはどうか」
残った報告書は42種類だけになった。














小田全宏『1分間松下幸之助』より

目白あたりの魚屋で買った養殖のカツオもヒラメも鯛も食べない

2020年02月04日 | ネコの写真
写真はイメージです
トラーは、冷凍のマグロの刺身には見むきもしないし、
目白あたりの魚屋で買った養殖のカツオもヒラメも鯛も食べない。
かんづめのキャットフードは、いくつかの銘柄の物を食べることは食べるのだが、
一かんを開けて、開けたての物の半分程を食べ、三、四時間たって与えても、
鼻を近づけて匂いをかぐだけで口をつけようとはしない。
これは、だいたいどの家の猫にも共通する癖らしく、飼い主をうんざりさせずにはおかない。
飼い猫などという存在は、どう考えてもエコロジストの敵ではないのだろうか、
という気持ちになって、カンと残りの中身を捨てているかたわらで、
トラーはティッシュペーパーを盛大に箱から引っぱり出して遊んでいる、というわけである。














金井美恵子『遊興一匹 迷い猫あずかってます』より

トラーの好物は平貝、タコ、赤貝、アオヤギと小岩井ヨーグルトグルメファン

2020年02月02日 | ネコの写真
写真はイメージです

トラーの好物は平貝、タコ、赤貝、アオヤギと小岩井ヨーグルト・グルメファン(400g入り380円)と
焼いりこ(小魚を特殊製法で薄くパリパリに圧縮引きのばした、人間用のおつまみ。小さいノリの丸缶くらいの大きさで880円)で、
クール宅急便で取り寄せる魚では、メバル、カレイ、キス、ウマヅラハギ、アジが好きだけれど、
なんといっても夢中になるのは甘エビで、これは伊勢エビなど無視するほどの大好物で十二匹はペロリとたいらげてしまう。
猫などにこんな贅沢をさせていいのだろうか、と反省もするけれど、
道で顔をあわせると、ン、グググ、と走り寄ってきて額をこすりつける姿を見ていると、
ヨシヨシ、冬には羽根ぶとんを買ってやるからね、トラーちゃんは鳥を捕えるの好きだから、
などと、わけのわからない論理で甘やかすことに決めてしまう。














金井美恵子『遊興一匹 迷い猫あずかってます』より