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誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →2

2010年10月26日 | 厚生年金基金
第1章 厚生年金基金の成立

1.厚生年金基金の成立前史

 日本では、長いこと、「世襲制」が伝統的な地位・資産・職業等の継承方法でありました。それが、日本の伝統を守り続けた効能は計り知れないものがありましたし、それが、日本文化の中核を形成してきました。

しかし、戦前、その恩恵から零れた次男・三男等は、外に「新宅」を構え、自らの力で生活を切り開いて行かなければならない苦闘がありました。小作人になり一生汲々とした生活を送るとか、商家に丁稚奉公して「暖簾分け」の恩恵を受けるとか、工場労働者の搾取されつくした低賃金に泣くとか、長い役人生活の代償で死に際に恩給を貰うとか……。一様にぎりぎり喰うための生活に明け暮れていました。

さて、現代年金史は昭和17年の「労働者年金法」(後の厚生年金)に始まると言ってよろしいでしょう。

その厚生年金は、当初は積立段階で年金支払いは少なく戦費流用が可能ということで導入された暗い背景を持っていました。国民と企業から厚生年金保険料を徴収して、大砲や艦船に使い、海外派兵や諸国占領の経費に流用すべく目論まれていたのです。いっとき、保険料徴収の業務は「警視庁」が強権力で行っていた時期もありました。ここで問題だったのは、流用可能な会計制度を許容する大東亜精神・挙国一致思想の開明度合いということでしょうが、当時の政治家・軍人・官僚・国民等にそれを求めても詮方ない現実が立ちはだかっていました。

戦後、経済復興とともに、地方から、農村から、都会地に進出した都市住民に対して、少数の大会社では自社年金の採用を拡大しましたが、大部分の会社では退職一時金の整備で対応しました。ただ、この時点(昭和30年~40年)の平均寿命は60歳程度であり、会社の停年(定年)55歳とほぼ同等でした。ということは、停年後の長い老後生活はなかったのですからニーズとしては年金というよりはまだ退職一時金で足りていたということです。


図表2  現代年金小史



経済が復興するにつれて昭和36年に国民皆年金制度が導入され、会社勤務の都市住民に対する企業年金(昭和37年税制適格退職年金・昭和41年厚生年金基金)がスタートしました。
この背景には、都市住民の人口増加と平均寿命の伸長が政府の政策課題として浮上していたこともありますが、企業にとっては厚生年金保険料の増大という問題が出現して、「公的年金と退職金との調整」が浮上しました。そのため「厚生年金基金」は、当初法律になる検討段階では「調整年金」と呼ばれていた時期もありました。

更に、退職金(退職給与引当金)は企業本体の資産のなかに経理されてきましたので、いざ企業倒産とかの事態になれば従業員の老後資金は失われてしまいます。これを避けるためには退職資金を企業の外部に保全しなければなりません。

企業は税制優遇を受け続けるためには退職資金を外部(税制適格退職年金・厚生年金基金)に保全することを求められました。この法律によって、「危うい退職金」は年金化されると共に外部に保全される道が切り開かれました。


2.厚生年金基金制度の仕組み

厚生年金基金(以下、「年金基金」又は単に「基金」といいます。)は、昭和41年(1966)に成立した半官半民の年金制度です。社会保険行政の一環である厚生年金保険(老齢年金給付)の一部を国に代わって基金が行ない、更に、企業の独自性を活かした年金を上積みして支払うという確定給付型年金(DB Defined Benefit)の仕組みになっています。


図表3 日本の年金体系

出所:企業年金連合会「企業年金に関する基礎資料」平成21年12月 P.2


  ●設立形態
 基金は、国の厚生年金保険事業の一部を代行するという機能をもって年金事業を行う主体であるので、基金の事業が健全にその目的を遂行するものでなければならない。このため、基金の行う事業は一定の行政上の行為が及ぶ仕組みとなっている。例えば、規約変更の認可、予算の認可、決算書類の提出等が義務付けられています。

はじめに基金は、大臣への認可申請を次の3つの設立形態(単独設立・連合設立・総合設立)のいずれかにより行い、大臣認可をもって設立されます。


図表4 基金設立形態

出所:厚生年金基金連合会「企業年金に関する基礎資料」平成21年12月 P.17



  ●給付形態
基金は、国の厚生年金(老齢年金)の報酬比例部分(原則、加入から脱退までの全
期間の標準報酬月額の平均給与によって算出される年金部分)を国に代わって支払うという公的年金の代行機能を持った世界にも稀な年金制度です。

代行型 代行部分+上乗せ部分
加算型 代行部分+上乗せ部分+独自給付設計(退職金から移管)
融合型 代行部分+上乗せ部分が一体

その内、「代行型」は国の代行分に全額事業主負担によるプラスアルファ(付加給付)を上乗せして基本年金として年金給付される制度です。

「加算型」は、企業の退職金の取り崩しにより会計上別法人の基金へ資産の移管が行なわれて、基金から加算年金として給付される分と、代行型の基本年金とが合算されて年金給付される制度です。

当然、加算型の年金額は代行型に比して多額になります。しかし、資産の移管は特定日に全額移管されるのではなく、月々の掛金で平準化して納付する形式で移行が行なわれます。そうではありますが、反面、企業から給付される退職一時金はその移行分だけ減額されます。100%移行であれば企業の退職金は無論0です。両方共、受給できると考える虫の良さはいつの世にも絶えないのですが。また、退職金の移行も100%全面移行とか一部移行(10%、50%、90%とか)とさまざまです。

これとは別に、企業の退職金を企業の会計内で処理する適格年金もあり、これらを総称して「企業年金」と呼ぶこともあります。型はどうであれ、企業年金から支給される年金は「退職年金」とも呼ばれます。

基金制度創設の本来の趣旨でありました<退職一時金の年金化>は100%移行の加算型ではじめて機能は十全に発揮されますが、現実は遅々たるもので、行政の強制力の無い指導では30年経っても依然代行型のままであったり、10%移行しか為されていない基金があったりが実態です。

終身雇用・年功序列制賃金の崩壊、雇用の流動化、退職金の先取り等々の時代になってきて、今また退職一時金制度の是非とニーズが問われています。


  ●運営組織
基金の事業運営は、半官半民の法人性格、法人維持の多様な業務、少人数のスタッフ等々と特徴づけられます。厚生年金の一部代行給付をフレーム・ワークとするため行政との関わりが強い、あるいは行政と同様な業務を行なわざるを得ないこともあります。民間人が国の社会保険行政を一部代行しているのです。


図表5 厚生年金基金運営組織図

出所:企業年金連合会「企業年金に関する基礎資料」平成21年12月 P.45


 基金の実務は青色申告の小さな商店のように多様さを極めますが、その各々の業務の奥行きというか専門性はそれほどでもありません。基金の役職員は、単独・連合設立の基金であれば母体企業からの出向者で構成され、総合設立基金であれば、行政出身の常務理事以下職員も大半が行政出身者で占められているのが一般です。

このような条件のもと、日々の事業運営が行なわれていますが、慢性的なスタッフ不足と役所的な職場環境、単独・連合の基金であれば更に出向者という島流しにあったような職場環境等々のため、基金事務局には一般的に沈滞ム-ドが漂っており、組織の活力とかバイタリティが云々されることはありません。

さらに、社会保険行政一般に言えることですが業務全般がいわゆる<お役所仕事>であって、単純な人工提供のような業務(例えば、毎年8月になると、加入員の標準報酬月額の改訂作業というのがあり、一人一人の加入員台帳に標準報酬月額を転記する<盛り込み>という作業があります。全加入員分を盛り込むのにただひたすら盛り込んで1週間もかかります。)が大半であり、業務の機械化の余地が多い部門です。<お役所仕事>の形式的とか投げ遣りとかの否定面を云々するのではなく、仕事に対するきらめき、ひらめきなどという職員の創造的な取組みを押し潰すような職場環境ですということだけは言っておきたいものです。

そもそも、社会保険行政一般といわず、現在の行政組織において中央と、出先といいますか地方での相互の命令系統は絶対であって、お上から通知される業務を誤り無く速やかに実施するだけなのが地方官僚の仕事になっています。つまり、中央官庁の出先機関として位置付けられているのが社会保険行政であって、「通達」、「通知」という逆流がない一方向的スタイルが最大の特徴です。「疑義」という手段は残されていますが、「通知」といいます方式は従来手法の典型であって、「通知」を発する者の全知全能が、つまり東大法学部出身の優秀な官僚という神話が前提されており、一方に唯々諾々と実施する羊のように勤勉な機械のような地方官僚が構造化されています。このような世界では、先端的民間企業の手法である<きらめき、ひらめき、試行錯誤>などというものは排除され、中央官僚の意志(これを国政というらしいです)実現が最大の務めとなっています。

半官半民の厚生年金基金は、このような二重人格を併せ持って日々の業務を推進していますが、この基金の二重人格性故に基金の問題は二重のスポットライト、官・民のスポットライトが当たって問題の中心点、問題の稜線が鮮明に浮上することになります。厚生年金の民営化とまでは言わなくても、厚生年金の一部代行という民間活力の有効活用にはこのような年金問題の先鋭化が実現する位相が内在しているようです。



特に日本の大規模な金融機関等で、運用の業務知識のない上司が責任者
になることがありますが、「私は素人だ」という開き直り(あるいは、使い分け)の態度をみせると組織全体の雰囲気が非常に悪くなります。
資産運用が知識集約的なサ-ビス業である以上、「知らないことは
悪いこと」という潔い割り切りをもつことが重要です。
勉強するか、去るか、です。

山崎 元『ファンドマネジメント』



例えば、<慢性的な基金のスタッフ不足は、調査・研究業務の先行投資を出来がたくする>という民間の危機意識に対して、<慢性的な基金のスタッフ不足は、職員配置基準で定められていますので万やむなし、調査・研究業務は不要>という地方官僚の考え方が対峙することになります。自分たちで作っていきましょうという民間の姿勢と、中央でやっているはずですという他者依存というか始めからの放棄、別世界事という地方官僚の観念がぶっつかりあうことになります。筆者のこの本も、その意味では厚生年金の一部代行という民間活力の有効活用の一端かも知れません。副作用かも知れませんが。それにしても、「・・・・・・ジャブをかます年金基金」などというおこがましいことは役人の世界には100%絶対にありえないでありましょう。しかし、時代は動いているので、今後はそういうことも期待したいものであります。


  ●業務委託形態
 基金の業務の中心は、加入員または加入員であった者にたいする年金給付および一時金給付の支給です。

これを達成するために、標準給与の決定、給付の裁定、掛金の調査決定および徴収等、保険者としての機能が多くあります。また、年金業務は健全な年金財政の確立が不可欠であり、適正な年金数理に基づくものでなければなりません。この分野は専門的・技術的な知識が求められます。更に、基金資産の管理は、信託銀行または生命保険会社等の仕組みを利用しています。
以上のような実態及び仕組み等のもとで、基金の業務の一部を信託銀行・生命保険会社・指定法人等に委託することが出来るようになっています。


図表6 業務委託

出所:企業年金連合会「企業年金に関する基礎資料」平成21年12月 P.46




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