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厚生年金基金事務長奮闘記-5

2010年08月05日 | 厚生年金基金
第3章 経営資源の有機的連結


1.厚生年金基金経営の有機的連結

厚生年金基金の事業運営は、半官半民の法人性格、法人維持の多様な業務、少人数のスタッフ等々と特徴づけられます。厚生年金の一部代行給付をフレームワークとするため行政との関わりが強い、あるいは行政と同様な業務を行なわざるを得ないこともあります。民間人が国の社会保険行政を一部代行しているのです。

 厚生年金基金の実務は青色申告の小さな商店のように多様さを極めますが、その各々の業務の奥行きというか専門性はそれほどでもありません。基金の役職員は、単独・連合設立の基金であれば母体企業からの出向者で構成され、総合設立基金であれば、行政出身の常務理事以下職員も大半が行政出身者で占められているのが一般です。

このような条件のもと、日々の事業運営が行なわれていますが、慢性的なスタッフ不足と役所的な職場環境、単独・連合の基金であれば更に出向者という島流しにあったような職場環境等々のため、基金事務所には一般的に沈滞ム-ドが漂っており、組織の活力とかバイタリティが云々されることはありません。

さらに、社会保険行政一般に言えることですが業務全般がいわゆる<お役所仕事>であって、単純な人工提供のような業務(例えば、毎年8月になると、加入員の標準報酬月額の改訂作業というのがあり、一人一人の加入員台帳に標準報酬月額を転記する<盛り込み>という作業があります。全加入員分を盛り込むのにただひたすら盛り込んで1週間もかかります。)が大半であり、業務の機械化の余地が多い部門です。<お役所仕事>の形式的とか投げ遣りとかの否定面を云々するのではなく、仕事に対するきらめき、ひらめきなどという職員の創造的な取組みを押し潰すような職場環境ですということだけは言っておきたいものです。

そもそも、社会保険行政一般といわず、現在の行政組織において中央と、出先といいますか地方での相互の命令系統は絶対であって、お上から通知される業務を誤り無く速やかに実施するだけなのが地方官僚の仕事になっています。つまり、中央官庁の出先機関として位置
付けられているのが社会保険行政であって、「通達」、「通知」という逆流がない一方向的スタイルが最大の特徴です。「疑義」という手段は残されていますが、「通知」といいます方式は従来手法の典型であって、「通知」を発する者の全知全能が、つまり東大法学部出身の優秀な官僚という神話が前提されており、一方に唯々諾々と実施する羊のように勤勉な機械のような地方官僚が構造化されています。このような世界では、先端的民間企業の手法である<きらめき、ひらめき、試行錯誤>などというものは排除され、中央官僚の意志(これを国政というらしいです)実現が最大の務めとなっています。

半官半民の厚生年金基金は、このような二重人格を併せ持って日々の業務を推進していますが、この基金の二重人格性故に基金の問題は二重のスポットライト、官・民のスポットライトが当たって問題の中心点、問題の稜線が鮮明に浮上することになります。厚生年金の民営化とまでは言わなくても、厚生年金の一部代行という民間活力の有効活用にはこのような年金問題の先鋭化が実現する位相が内在しているようです。

例えば、<慢性的な基金のスタッフ不足は、調査・研究業務の先行投資を出来がたくする>という民間の危機意識に対して、<慢性的な基金のスタッフ不足は、職員配置基準で定められていますので万やむなし、調査・研究業務は不要>という地方官僚の考え方が対峙することになります。自分たちで作っていきましょうという民間の姿勢と、中央でやっているはずですという他者依存というか始めからの放棄、別世界事という地方官僚の観念がぶっつかりあうことになります。

筆者のこの本も、その意味では厚生年金の一部代行という民間活力の有効活用の一端かも知れません。副作用かも知れませんが。それにしても、「・・・・・・ジャブをかます年金基金」などというおこがましいことは役人の世界には100%絶対にありえないでありましょう。しかし、時代は動いているので、今後はそういうことも期待したいものであります。

さて、厚生年金基金の変貌が関係者の地道な努力により着実に進行していたのも事実ですが、この度年金資産積立不足の<未曾有な事態>を迎えてこの変貌は強権力のように厚生年金基金におおいかぶさってきています。金融ビックバンのようなことが基金の世界にもやつてきているのであります。それは待った無しに、有無を言わせずグロ-バル・スタンダ-ドへのシフトを強要するかのようにであります。




筆者が母体企業の社会保険担当から基金へ出向したとき、ABC厚生年金基金は<単独・
代行・Ⅱ型>という最もベ-シックな形態で設立されて、6年が経過したところでした。

設立後まもなくで、前任者の立ち上げ作業が続いている最中でした。資料が何処にあり、用紙は何処に保管されているのか、作業手順書はどうなっているのか、書類の分類・保管はどうなっているのか、健保組合と兼務であった当時の基金職員はとりあえず当面の業務を処理するだけで手一杯で、整理とか、分類とか、保管とかはされていなかったのが実情でした。あっちこっちに書類が山積みされていました。

筆者は基金というのがどう言うものか、事前に何も承知していなかったので、まず始めに取りかかりましたのが敵を知るための作業、<基金とは何ぞや>を具体的に承知しますため基金業務の<整理・分類・保管の体系化>というラベル貼りから始めたのでした。業務分掌、資料分類、年度業務スケジュ-ル、作業手順書の整備、作業進行票の作成等と。その後、日本経済の右肩上がり進展の中、厚生年金基金も業容の拡張は著しく、昭和の時代と平成の時代では様相が一変したと言っても良いのではないでしょうか。



   
厚生年金基金の業務を時間の観点から分類すると、概略次のようになるでありましょう。




特に日本の大規模な金融機関等で、運用の業務知識のない上司が責任者になるこ
とがありますが、「私は素人だ」という開き直り(あるいは、使い分け)の態度を
みせると組織全体の雰囲気が非常に悪くなります。
資産運用が知識集約的なサ-ビス業である以上、「知らないことは悪いこと」と
いう潔い割り切りをもつことが重要です。勉強するか、去るか、です。

山崎 元『ファンドマネジメント』



一般的な厚生年金基金の業務分掌は次のようになっています。当初は、これも、A氏はこれこれの仕事、Bさんはこれこれという属人的業務分掌となっており、始めに人ありきで仕
事がぶらさがつているという分掌になっていました。事務所としての業務全体の把握・認識は二の次で、職員の責任と権限を限定する官僚方式ではないでしょうかと考えられます。

















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