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国家会計に関する抜粋

2013年09月05日 | 年金


「年金はもらうもの?」     高野 義博

 

国家会計に関する抜粋

 

第一章 「もらうもの」になったわけ

 1.官僚の観念論

 どうして年金は「もらうもの」なんでしょう。皆、そう言うし、疑問に思っていないみたいだし……。

A じゃ、君はどう思っているのかな。

 う~ん、どっちかと言うと、自分で請求するかなぁ。むしろ、払い戻しを受けるかな、保険料高いですしね。

A そうですか。それが、四〇代の平均的な感覚なのかねぇ。

 う~ん、どうでしょうね。いろんな考え方と感じ方がありますから。

A じゃあ、日本の年金が「もらうもの」になった背景を一緒に考えてみましょうかねぇ。

 ええ、……。

A はじめに年金の生い立ちを振り返りましょう。とは言っても、簡略に戦後から始めましょう。まず、日本の戦後経済復興は、GHQによって戦前の領土拡張政策を全否定され、変わって経済民主化政策(公職追放、財閥解体、独占禁止法、農地改革、労働組合育成等)によって始まりました。

 学校の教室みたいですねぇ。

A そぉう。しばらく、ごめん! 追放を受けた前代の指導者層に変わってそこに登場したのが、満州建国の失敗から戻ってきた官僚たちでした。

 満州浪人? が、徘徊していた時期があるんですってね。祖父に聞いたんですけど。

A その官僚たちの満州での経験に基づく考え方は、マルクス主義をモデルにして、ドイツ風観念論で統治するという縦割り行政の国家統制計画経済であったことは周知の事実です。

 統制経済というのは聞いたことあるけど。

A その統治の仕掛けの数ある中のひとつは、国の会計制度・公会計(税金の使い道を明らかにするため昭和二十二年に法律化された財政法並びに会計法による会計)を、単式簿記(経済的取引を現金出納帳等を用いて記載することで、期中の収支と現時点の残高を簡単に把握できる会計方式。資金の収支重視で、財産・債務は二次的になる。)で行うというものでした。官僚の使い勝手が良い仕組みで、だぶつきや先送りが許容されました。例えば、〈借入れ〉が〈収入〉扱いされる類のものでした。そのような国家統制計画経済(計画を統制する国家運営)の仕掛けによって、復興に取り掛かりました。

 戦後混乱期の緊急措置だったんですかねぇ。緊急が永続化したみたいですけど……。

A その判定は、歴史の審判に任せましょう。国家統制計画経済は経済界の三種の神器と右肩上がり経済と相まって、急速に日本経済を復興させました。一〇年後の昭和三十一年(1956)には「もはや戦後ではない」と言われ、日本型資本主義が成功しました。

 そうでしたか。

A ところで、年金ですが、国家統制計画経済の下、年金は、社会保険方式の美辞麗句を掲げ、右肩上がり経済を前提にした計画で、国家が取りさばいて国民に付与するものとされました。

 国家と言うことは、官僚が取りさばいたんですね。

A ええ。つまり、国民にすれば、年金は国家から「もらうもの」でした。

 

終章 確定拠出年金はじめのはじまり

 1.はじめのはじまり

 ひとつお聞きしたいのですが、最近始まった確定拠出年金について? 〈日本版401k〉とか言うのですか……。

 ええっ、大上段に来ましたね。出来れば、ハッシと受け止め、ガバッと打ち据えたいのですが……それは別の本に当たってください。実務書はたくさん出版されています。それに理論や知識や技術はインターネットの検索でも調べられます。ここでは、導入というか、入り口辺りをお話するだけですが、宜しいですか?

つまり、確定拠出年金のはじめのはじまりです。

 ストーリーがお聞きできればいいです。

 そお、ストーリーですね。確定拠出年金の筋書き、物語ですか……。

 自分の立ち位置がわからず、うろうろしているものですから。

 そおですか。……じゃあ、始めてみましょうか、とは言っても、……。う~ん、そお、これをまず見てください。この「米国401(k)調査記録」(平成十一年1999・拙著)のここにこういう記事があります。「日本経済の一〇年に及ぶ超低金利のもと、確定給付型の厚生年金基金の積立不足、国際会計基準の導入等に伴う企業負担の増大を背景に規制緩和・公的年金等の改善の議論が沸き起こっていました。平成九年三月の自民党行革本部を端初に、平成一〇年三月規制緩和推進計画が閣議決定され、以後、自民党労働部会・勤労者拠出型年金等小委員会、年金審議会、自民党年金制度調査会・私的年金等小委員会、税制調査会等の審議を経て平成十一年一月の関係四省(大蔵、厚生、通産および労働)による「確定拠出型年金制度準備会議」の設置を受け、この六月には具体的な制度設計が示されることになっていました。偶々、ボストンに移動するためのジョン・F・ケネディ空港に向かうバスの中で、六月九日付けの読売新聞国際版の自民党年金制度調査会・私的年金等小委員会(八日開催)において示された政府・自民党案「確定拠出型年金制度案」の記事のコピーが配られました。この間、民間でも平成一〇年九月の経団連「確定拠出型企業年金制度の導入を求める」というレポートが出て、確定給付型、公的年金を含めて多方面に議論が巻き起こり、マスコミにも取り上げられセミナーも多数開催され、関係書籍も多数出版されていました。情報過多のような状況でしたが、マイナス思考の考え方が圧倒的に多く、日本にいては視野が限定されていて今一つ分からない部分があり、〈現場に行こう〉ということになったとのことでありました。」

 盛んに研究されていたのですねぇ。

 ええ。……さて、それは別にして、このような法律成立前の動きがあった後、次のような経過を経て、確定拠出年金法が成立しました。

 やはり、企業サイドの意向が強かったのですね。

 バブル崩壊で切羽詰っていましたからねぇ。確定拠出年金は、政府が、平成十三年(2001)確定拠出年金法、平成十四年(2002)確定給付企業年金法を制定し、新しく確定拠出年金(DC Defined Contribution)を導入したものです。これには、企業型と個人型がありますけど、時代のニーズに応えたものでしょう。この頃から働き方が多様化していましたので。

 時代のニーズ、要請ですか?

 ええ、バブル崩壊後の日本経済の落ち込みはご承知でしょ。会社では生き残りのために旧秩序の見直しがされていますよね、護送船団方式とか成果主義とか代行返上とか、お聞きになったことありますよね。 

 ええ、世の中混沌としていますものねぇ!

 乱れているってことは、末は明るいのですよね。

 そうですね。明るくするには、どうしたらいいんでしょう?

 まずは旧秩序の検証でしょう。それと時代の変化を読み取ることでしょうか。

 検証……ですか。

 戦後日本人は貧しかったので、政府や官僚や会社がしてくれることを唯々諾々と受けていたきらいがありますでしょ。

 と言われてもねぇ、他になすすべもなかったんでしょう。それに雇われないなんて難しかったんでしょ。

 そうではあったのですが、一歩下がって、日本の年金の生い立ちを考えると受け身であったことにはちがいありませんでしょ。

 そうですね、……。

 日本の年金は、上(政府)から下(国民)へ提供されていたので、年金はもらうものでしたものねぇ。企業年金だって会社から、もらうものでしたもの。つまり、年金は二の次というか受け身だったんですよ!

 そうですねぇ、……会社の先輩たちを見ていると。

 新しい確定拠出年金の枠組みは、そこが違うんです。

 そこって、

 つまり、もらうだけでよかったのが、つくるに切り替わったということです。自分で老後資金をつくる仕組みなんですよ。政府や会社は仕組みを用意するだけで、中身は自分で作るわけです。

 そお、……。それって何かいいことありますか?

A メリットですね。ええ、今までにない最大のメリットは〈個人勘定〉だということでしょう。

 なんですか、それは? どんぶり勘定と言うのは聞いたことありますけど。

A そうですね、日本の年金はこれまで全て政府の一括管理、つまりどんぶり勘定だったんです。例えば、「厚生年金勘定」はあっても、その中の自分の年金は幾らというのが不透明な仕組みだったのです。それもこれも、背景に国の会計が単式簿記の小遣い帳方式をベースにしているため、不透明になってしまうのです。

 国の会計が単式簿記なんですか!

A ええ、国だけではなく、県や市町村もです。

 そういえば、前に新聞で藤沢市が複式簿記にしたとかいうのを見たことがありました。他にも、実験的に取り組んでいるところがあるようですね。

A そうでした。ところで、〈アフリカ諸国・北朝鮮・日本〉で、なにを想像しますか。

 えっ、なんだろう、核保有じゃないし、飢餓国……でもないし、なんだろう。

A ……実は、これは国の会計制度が単式簿記の国々です。未開国なんですよ、日本のインフラは。国民として恥ずかしい限りです。

 ほほっ、ビックリしたなぁ。それが現実なんですか!

 そこへ風穴を開けるのが確定拠出年金の個人勘定です。これを端緒のひとつに日本の公会計もおいおい複式簿記になっていくのでしょう。国際会計基準も入ってくるし。でも、一言付け加えれば、私の経験では、健康保険組合は単式簿記でしたが、厚生年金基金は制度発足(昭和四十一年)以来複式簿記でした。それも、時価会計採用(平成八年)は企業会計より先行しました。

 そうなんだ、知らなかったなあ! 皆、知っているのかな?

 知る人ぞ知る、でしょうね。今の都知事とかね。でも、大企業のトップたちでさえ知らないのが実態のようですし、その功罪をほとんどの人が知らないでしょう。知っているふりをする人は多いようですが。それは別にして、この単式簿記の弊害を承知して、どんな政策提言よりも、国の根幹をなす複式簿記の導入を最優先課題とすべきでしょう。つまり、政府予算の使い切りという単年度予算の仕組みを変えなけりゃならないんです。あえて言えば、現在の日本の諸問題、〈失われた二〇年〉の根本原因は単式簿記だと考えることが出来ます。今の日本の諸悪の根源になっています。損を認識しなくていいので、というよりできないので延命可能な単式簿記、〈借金は収入〉のカラクリ、これを複式簿記にしなければ、何らかの特別な事案でも発生しない限り〈失われた三〇年〉となってしまいます。

 そうなんですか!……僕もそう思います、あれはひどいですよね、年度末の道路工事! それに加えて、きたならしい駅前の電信柱と電線! ……で、確定拠出年金の個人勘定というのは僕にとってどういいんですか?

 今、会社で働いていて厚生年金加入ですね。企業年金はありますか?

  

(以下略)

 

年金はもらうもの?


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