素材抜粋
国家の役割
R.B.ライシュ『21世紀資本主義のイメージ』
中谷巌訳 ダイヤモンド社 1991年
均質で、ルーティン的に生産される標準的な製品-地球上のほとんどどこでも大量に生産でき、再生産でき、手に入れることができる-を収益源とする大量生産型企業の間で競争が続く一方、先進工業国において成功している企業は、特別仕様の製品やサービスに基づいた事業へとその基盤を移行しつつある。新たに出来た参入障壁は、量でも価格でもない。それは特定の市場に見合った特定の技術を探し出す技能である。中核企業はもはや、製品それ自体には注目していない。中核企業の企業戦略は、ますます個別情報に基づいて立案されるようになっているのである。
このような高付加価値事業をより厳密に見てみると、事業を推進している三つの、互いに異なってはいるが関連を持つ技能が見出せる。第一は、物事を独自な方法で組み立てることが要求されるの技能である(合金、新しい分子構造、半導体チップ、ソフトウェアの言語、映画のシナリオ、年金のポートフォリオ、情報)。……。第二は、顧客が自らのニーズを理解するのを助け、ニーズに合致した商品を供給するためには、どのように製品の仕様を変更すればよいのかを決定できる技能である。……。
第三は、問題解決者とを結びつけるために必要とされる技能である。……。つまり、彼らはの役割を果たしているのである。
商人には国家がない。
1806 トマス・ジェファーソン
企業の国籍を議論するのは無意味だ。
1990 R.B.ライシュ
政策決定者はまだまだ、国家の本当のテクノロジーの資産が将来の複雑な問題を解決するその市民の能力であり、それが現在の問題と過去の問題を解決した経験から生まれるものだ、ということを理解するには至っていない。
グローバル・ウェブ「クモの巣」状の企業組織網がますます一般的になり、グローバル企業の組織形態は今や地球大に拡がっている。本社部門が米国に置かれ、そこから資金調達の大部分は受けるが、研究、設計、生産設備は日本、欧州、北米に、さらに生産設備は東南アジアや南米に、販売および物流部門はそれぞれの大陸に配置され、さらに台湾、日本、ドイツは米国同様、資金の出し手、投資家としての役割を担うという具合に。このようなグローバルな拡がりを持つ企業は、他の国に本拠を置く同種の企業と競争しているのであって、国境はもはや意味がなくなっている。
したがって、地球経済における本当のアメリカ人の競争力の違いを知るには、新しい分類法を編み出す必要がある。
本質的な観点から見て、競争的な立場の異なる職業に対応した、三つの大まかな職種区分が生まれつつある。この三つとは、「ルーティン・プロダクション(生産)・サービス」、「インパースン(対人)・サービス」、「シンボリック・アナリティック(シンボル分析的)・サービス」である。こうした区分は、今や米国以外の先進国にも当てはまりつつある。
(以下略)
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