最近、ニューヨークタイムズが競合州(swing states)の有権者を対象にアンケート調査をした。2016年にトランプ候補を選んだ有権者の86%は、11月3日の大統領選挙でも再びトランプに票を投じると答えた。トランプを支持しないと答えた有権者は6%しかいなかった。新型コロナウイルスによる米国内の感染者は700万人、死亡者は20万人を超えた。失業手当を申請した人は第2四半期だけで4千万人を超えた。しかし、トランプ大統領の支持率は2017年1月から任期を通して43%程度でびくともしなかった。新型コロナ防疫の大失敗、大恐慌以後最悪の経済状況、人種葛藤をむしろ煽るトランプの態度などは、支持者には全く違う形で受け入れられているようだ。2016年には、政治経験が一度もない企業家出身という点がトランプ候補が票を集めるのに肯定的に作用したという分析があった。しかし、ここまで頑丈な支持率を見れば、トランプ支持者には何か特別なものがあるように見える。
自由貿易を好み、規制と政府の役割は最小化されるほど良い、という自由市場主義者、堕胎や同性愛に反対する社会・宗教的保守主義者、そしてワシントンの職業政治家やマスコミ、学界のエリートに対しては偉ぶっているとして嫌う反エリート主義者まで、トランプ支持者のパターンは様々だ。彼らの中でも最も注目しなければならない人々がいる。それはブルーカラーの白人労働者だ。
ピューリサーチセンターが発表した資料によれば、2016年にトランプを支持した有権者の63%は学歴が高等学校卒以下の白人だった。クリントン候補を支持した有権者側の26%と大きな差がある。
最近の50年間に米国社会は急変した。1960年代初めまで製造業労働者が全労働者の30%だったが、2016年には10%前後まで減った。世界化と自動化が進展し、高学歴・高所得労働者の所得と労働機会は大きく増加した反面、高卒以下の労働者、特に製造業の白人ブルーカラー労働者の暮らしは一層難しくなった。所得は停滞し、働き口も大幅に減った。経済的困難は健康悪化や薬品中毒にもつながった。特に、大学教育を受けなかった45~54歳の中年白人の死亡率はここ10年で急激に高くなり、彼らの期待寿命はむしろ短くなった。
政治学・経済学の研究を見れば、米国やヨーロッパで世界化による競争と自動化の加速化で消滅する可能性が高い働き口の人であるほど、移民者や他の人種に敵対的な態度を示し、国粋主義的指向の極右政党や候補を支持する可能性が高い。だが、それは不可避の現象ではない。社会科学の多くの研究は、働き口を失った人々に政府がタイムリーに失業手当と新しい仕事を見つけられる多様な支援を提供していれば、経済的窮乏による不安感が極端政党の支持に結びつかないようある程度は止められることを示している。しかし、政府の対応は機敏でなく、その結果として社会セーフティネットも効果的に構築されなかった。失業手当の申請過程は複雑で支給は遅く、問題を指摘してもシステムは良くならなかった。政治家たちは、根本的問題を解決するのでなく、移民者や中国を攻撃し、有権者の怒りを利用して自分の支持率を保全することにだけ関心を見せた。ブルーカラー労働者の生活は、彼らが圧倒的に支持したトランプが大統領になった後にもまったく良くならなかったが、今度も当然な代案を持たずに再び大統領選挙をむかえることになった。
トランプ大統領が再選に失敗しても、トランプ支持者はいなくならないだろう。新型コロナで経済的不平等はさらに深刻化した。経済危機と沈滞は、政治的極端主義を産む。誰がホワイトハウスの主人になろうが、世界化と自動化により疎外された人々をどのように支援すべきかを積極的に熟考しなければ、トランプ支持者を惹きつけた右派ポピュリズムは米国のニューノーマルになるだろう。
ユ・ヘヨン・ニューヨーク大学政治学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/963769.html
自由貿易を好み、規制と政府の役割は最小化されるほど良い、という自由市場主義者、堕胎や同性愛に反対する社会・宗教的保守主義者、そしてワシントンの職業政治家やマスコミ、学界のエリートに対しては偉ぶっているとして嫌う反エリート主義者まで、トランプ支持者のパターンは様々だ。彼らの中でも最も注目しなければならない人々がいる。それはブルーカラーの白人労働者だ。
ピューリサーチセンターが発表した資料によれば、2016年にトランプを支持した有権者の63%は学歴が高等学校卒以下の白人だった。クリントン候補を支持した有権者側の26%と大きな差がある。
最近の50年間に米国社会は急変した。1960年代初めまで製造業労働者が全労働者の30%だったが、2016年には10%前後まで減った。世界化と自動化が進展し、高学歴・高所得労働者の所得と労働機会は大きく増加した反面、高卒以下の労働者、特に製造業の白人ブルーカラー労働者の暮らしは一層難しくなった。所得は停滞し、働き口も大幅に減った。経済的困難は健康悪化や薬品中毒にもつながった。特に、大学教育を受けなかった45~54歳の中年白人の死亡率はここ10年で急激に高くなり、彼らの期待寿命はむしろ短くなった。
政治学・経済学の研究を見れば、米国やヨーロッパで世界化による競争と自動化の加速化で消滅する可能性が高い働き口の人であるほど、移民者や他の人種に敵対的な態度を示し、国粋主義的指向の極右政党や候補を支持する可能性が高い。だが、それは不可避の現象ではない。社会科学の多くの研究は、働き口を失った人々に政府がタイムリーに失業手当と新しい仕事を見つけられる多様な支援を提供していれば、経済的窮乏による不安感が極端政党の支持に結びつかないようある程度は止められることを示している。しかし、政府の対応は機敏でなく、その結果として社会セーフティネットも効果的に構築されなかった。失業手当の申請過程は複雑で支給は遅く、問題を指摘してもシステムは良くならなかった。政治家たちは、根本的問題を解決するのでなく、移民者や中国を攻撃し、有権者の怒りを利用して自分の支持率を保全することにだけ関心を見せた。ブルーカラー労働者の生活は、彼らが圧倒的に支持したトランプが大統領になった後にもまったく良くならなかったが、今度も当然な代案を持たずに再び大統領選挙をむかえることになった。
トランプ大統領が再選に失敗しても、トランプ支持者はいなくならないだろう。新型コロナで経済的不平等はさらに深刻化した。経済危機と沈滞は、政治的極端主義を産む。誰がホワイトハウスの主人になろうが、世界化と自動化により疎外された人々をどのように支援すべきかを積極的に熟考しなければ、トランプ支持者を惹きつけた右派ポピュリズムは米国のニューノーマルになるだろう。
ユ・ヘヨン・ニューヨーク大学政治学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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