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【#中央日報】【コラム】資金尽きた北朝鮮…「水と空気だけで生きる」国はない

2020-06-25 19:44:15 | 海外の反応
昨年北朝鮮は労働新聞を通じ「水と空気さえあれば生きていける」と大口を叩いた。だが今年北朝鮮経済を分析した報告書は背筋が寒くなる内容であふれていた。韓国銀行は1月に「今年末か来年初めごろに北朝鮮の価値貯蔵用ドルと取引用ドルが減少すれば為替相場とコメ価格が不安になるだろう」と警告した。韓国開発研究院(KDI)は先月「2020年の北朝鮮経済、1994年のデジャブなのか」という報告書で「第2の苦難の行軍」の可能性を予告した。対北朝鮮制裁に新型コロナウイルスの感染拡大で前例のない危機に陥っているということだ。

北朝鮮が北朝鮮へのビラ散布を口実に韓国叩きに出た背景にも深刻な経済難があるとの分析が大勢だ。韓国が対北朝鮮制裁から離脱し、北朝鮮へのばらまきで先に立てという脅迫だ。逆にいえば北朝鮮経済がそれだけ切迫しているという意味だ。まず「制裁効果=制裁の強度×時間」だ。国連安全保障理事会は2016年の4度目の核実験以降四重の制裁網を順に張っていった。対北朝鮮制裁もこの法則により時間が過ぎるほど北朝鮮の首を絞め上げている。すでに北朝鮮の輸出は壊滅的打撃を受けた。これに対し輸入は生存のために小麦粉、砂糖、食用油などの生活必需品を買い入れ続けるほかない。これにより対中貿易赤字は昨年23億7000万ドルに増え北朝鮮が保有する外貨は枯渇している。

北朝鮮の経済構造は毎年、無煙炭輸出10億~13億ドル、衣類委託加工輸出7億ドル、海外派遣労働者賃金3億ドル、水産物輸出1億5000万ドルなどで構成されている。こうして稼いだ外貨で生活必需品の輸入にともなう20~30億ドルの貿易赤字を埋め合わせてきた。だがこうした金脈が完全に干上がってしまった。昨年12月には9万人の海外派遣労働者が送還された。北朝鮮は「研修」「留学」を名目にして再び中国やロシアなどに派遣したが、新型コロナウイルスはこうしたルートさえもふさいだ。新型コロナにともなう国境閉鎖により中国人観光客の足が途絶えたのも致命打だった。中国は120万人ほどの観光客を北朝鮮に送り、最大3億6000万ドルの収入を与えてくれた。こうしたドル箱がすべて遮断され北朝鮮は禁断症状に苦しめられている。KDIは報告書で「少し誇張して言えば北朝鮮は新型コロナ流行により世界で最も大きく被害を受けた国」と指摘した。

最近の北朝鮮の経済危機を読み取れる2種類の兆候がある。ひとつは債券発行だ。北朝鮮は17年ぶりに公債を発行し、半強制的に国営企業と「金主」と呼ばれる新興資本家から外貨を徴収し国家予算の60%を充当する動きを見せている。深刻な財政難を軽減し為替相場の安定を狙った布石だ。もうひとつは元山(ウォンサン)の葛麻(カルマ)海岸観光地区建設だ。平壌(ピョンヤン)のマンション建設は「金主」とともに「金を投じて金を得る」方式だが、元山葛麻地区はひたすら統治資金で建設している。そんな元山葛麻地区が2018年から完工が3度も延期されたのは統治資金にも赤信号が灯ったという意味だ。尋常でないことだ。

ここに米国農務省は今年の北朝鮮のコメ収穫量を1994年以降で最も少ない136万トンと予想する。化学原料不足による肥料生産の急減を致命打に挙げた。韓国は2010年から5・24措置に基づき北朝鮮へのコメと肥料の支援を中断した。それでも対南交渉担当者は毎年「コメ40万トン、肥料30万トン」のカードを絶えず押し付けた。「肥料はコメで、コメは社会主義」とし、「5~6月の適期に植えるためには4月末までに肥料がこなければならない」としがみついた。そんな肥料がこの春には新型コロナウイルスの影響で中国からも調達できなかった。「第2の苦難の行軍」がしきりにちらつく理由だ。

国内事情が悪化すれば恥を忍んで隣人に丁寧に手を差し出すのが常識だ。逆に北朝鮮は韓国に向け粗暴な振る舞いをしている。昨年2月のハノイでの米朝首脳会談決裂後にいらだっており不安なためだ。これ以上時間は北朝鮮の味方ではないだけに、静かに立ち枯れる前に最も与しやすい韓国から叩いて状況を揺さぶっている。そうすることで再選を控えたトランプ米大統領が北朝鮮をなだめに出るだろうという期待が背景にある。中国も韓半島(朝鮮半島)の平和と安定が優先であるだけに、緊張が高まれば北朝鮮援助に出るだろうという計算をしている。

◇きめ細かい対北朝鮮制裁網

だが北朝鮮の賭けが意図通りに回るかは疑問だ。対北朝鮮制裁の目標は北朝鮮に苦痛を与えること自体よりも、その苦痛を通じて核の野心を挫折させ非核化を引き出すところにある。したがって北朝鮮が激しく出てくるほど北朝鮮の計算とは正反対に状況が流れるかもしれない。短期的に北朝鮮にはぞっとするような苦痛だが、長期的には非核化に向けた避けられない陣痛という世界的世論が形成される素地がある。

北朝鮮があらぬ所を引っ掻いているのも問題だ。北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長が韓米ワーキンググループを南北関係破綻の主犯だと指摘すると、韓国の進歩陣営も「韓米ワーキンググループが足かせだ」と相づちを打った。だが半分の真実にすぎない。むしろ韓米ワーキンググループがなくなれば文在寅政権は米財務省、商務省、検察などを追いかけて省庁ごとに制裁免除を要請しなくてはならない。韓米ワーキンググループのファストトラックを踏まなければ事実上対北朝鮮支援が不可能なわけだ。

また、対北朝鮮制裁は国連安保理次元で決めた事案だ。確実な非核化の担保がなければ対北朝鮮制裁の緩和または解除そのものが難しい構図だ。安保理常任理事国である英国は「北朝鮮の核は実質的な脅威。ロンドンは米ロサンゼルスより北朝鮮の核弾道ミサイルにはるかに近い」という立場だ。フランスのマクロン大統領も韓仏首脳会談で「北朝鮮が非核化する時まで制裁は続けるべきで、韓国も国際共助に協力してほしい」と圧迫した。したがって米国だけ説得したからとできることではない。すでに対北朝鮮制裁緩和は複雑な国際関数になってしまった。

北朝鮮統一戦線部は「休戦ライン付近で南側が非常に疲れるようなことを準備している」と明らかにした。いつでも軍事的挑発が可能だという脅迫だ。それでも北朝鮮の金正恩国務委員長が一昨日軍事措置を保留させたことは幸いだ。だが一時的な速度調節なのか尻尾を下ろすものなのかは今後を見なければならない部分だ。文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官は最近「北朝鮮は行くところまで行かなければ韓国も変わらず米国も変われないと考えているようだ」と話した。おそらく北朝鮮の胸の内を最も正確に読み取ったものではないかと思う。北朝鮮がこれ以上失うものがないと判断すればいつでも瀬戸際戦術と狂人理論を再び持ち出しかねないという意味だ。だがもうひとつ明らかになったものがある。北朝鮮は非核化なしでは何も得ることができないという事実だ。対北朝鮮制裁解除だけでなく緩和さえ不可能だということが明らかになった。それでもこのまま行けば北朝鮮経済は窒息するほかないのも不都合な真実だ。これ以上核も持って制裁も解除するいわゆる並進路線は妄想であり蜃気楼にすぎない。「水と空気さえあれば生きていける」世界はない。北朝鮮の悩みが深くなるほかない時間だ。

イ・チョルホ/中央日報コラムニスト


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