伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

放射線測定値を全て公開へ、情報公開で東電が方針示す

2015年03月31日 | 原発・エネルギー


 「オオカミだ。オオカミだ」。村人にうそをついて困らせていた羊飼いの少年が、本当にオオカミが出た時に、村人から信じてもらえなかった。うそは良くないこと。世の中の常識ですが、4月1日は、エイプリル・フールと呼ばれ、うそが許されるとされる日です。

「東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、原発の廃炉を決めたドイツに続いて、当事国の日本政府も、原子力発電所を全て廃炉にすることを4月1日までに決めた」

そんなエイプリル・フールネタを書くマスコミがあるかどうかは分かりませんが、うそではなく、現実にそんなニュースが流れるといいなぁ~、とつくづく思います。

でも、なかなかそういきません。
自公政府・安倍政権は、原発をベースロード電源に位置づけ、鹿児島県の川内原発など再稼働に向けた動きを強めています。原発事故の原因も究明できないまま、再稼働だけは着々と準備を進めているわけです。

一方で事故をおこした東電福島第一原子力発電所で、収束作業をすすめる東京電力は、3月30日に情報公開のあり方について、新たな方針を示しました。

■信頼回復は重い課題

 東京電力の情報公開の姿勢があらためて問われたのは、K排水路と言われる雨水排水路から、線量の高い汚染水が外洋に直接流出している事態を、ほぼ1年にわたって公表しなかった問題でした。

 東電が、排水路の除染作業などで線量を低下できると考え、また、汚染源を特定することを優先した結果、1年にわたって汚染水を流し続けたのです。

 この東電の対応に、事故収束のために地下水バイパスなどを受け入れてきた漁業者などから「信頼が崩れた」などと批判の声をあげました。信頼回復は、東電と国につきつけられた重い課題でした。

 これに東電はどう応えようとしているのか。3月31日の報道では、「第一原発の全ての放射線測定値の情報を公開する方針を決めた」としています。

 記事によると、
「放射線測定値は情報がまとまり次第、ホームページなどで全て公開する。測定値に優位な変化があった場合や新たな測定地点を設けた場合は、記者会見などで説明する。公開の透明性が保たれるよう社外からの監視・評価を受ける方針も示した」
としています。

 3月17日のいわき市議会東日本大震災復興特別委員会の原子力災害対策分科会で東電が明らかにした方向です。

 全て公開することにしたことについて、数土文夫東電会長は「東電に隠蔽(いんぺい)の意図がないことを強調する必要がある」(報道)と説明したといいます。

■改善のチャンスはあった

 なぜ今ごろなのか、の思いはあります。
 東電の情報公開の問題は、かねてから問題になっていました。

 入り込んだネズミで仮設配電盤がショートする事故が発生した2013年にも、いわき市への通知が1時間以上も遅れました。

この際、いわき市議会は直後に開かれた2月定例会で、仮設施設の早期の正規化とすみやかな情報公開を求める決議を採択し、4月4日、議長と副議長に加え各会派代表がJビレッジの東電復興本社を訪ねて提出・懇談しました。

実はこの前日、地下貯水槽からの漏水が発見されていました。ところが、懇談の場で説明はいっさいありませんでした。後日、新聞等で報道され、初めて知るところになったのです。

 同月19日には、市議会の東日本大震災復興特別委員会で東電復興本社の調査をしました。この場で情報公開の問題も質疑されました。この場で、石崎・復興本社代表は、①東電社内に情報公開に関する組織を作って社長に直接進言すること、②リスクコミュニケーターを導入し情報公開のあり方を改善する仕組みを作った――と説明していました。

■信頼される情報公開へ

 K排水路の問題は、2年前の改善策が役にたたなかったことを示しました。もしこの時から情報公開にまともに取り組んでいれば、今回のような問題は発生しなかったでしょう。

 K排水路の問題で「信頼できなくなった」と批判をした漁業者の思いは、市民、県民に共通する思いだと思います。原発事故の収束は、何としてもやり遂げなければならない事業であり、その作業を担う東電が信頼できる組織であることは、事業を促進する上で最低限の条件と言えるでしょう。

 これからの東電の取り組みを、しっかり監視していくことが必要だと思います。

 合わせて、今回の情報公開の問題でも、国の姿が見えてこないことが気にかかります。
 国の姿勢は一貫しています。「事故の第一義的責任は東電。原子力政策をすすめた国にも責任がある」というもので、とにかく事故収束は東電がやるべき事業だという考えです。

 K排水路の問題でも、「線量が高いという報告を受けたが、除染で下がると考えて支持を出し、その後放置してきた。今後は情報の出し方でもしっかり指導していきたい」という趣旨の話を、特別委員会の原子力災害対策分科会で説明するばかりでした。

 原子力政策をすすめてきたのは国の責任です。そのことから考えれば、もっと前面に出て、収束の問題に取り組むことが必要だと思います。情報公開の問題でも、国の責任で公開すべきではないのか、そんな思いです。

■記事に気にかかったのは・・

 もう一点、新聞記事で気にかかったのが次の部分です。
 「東電は当初、『周辺環境に直接英領を及ぼす水や粉じん』に限って全ての測定値を公にする方針だった。」
とある点です。

 市議会の特別委員会分科会でも「環境に影響がある水やダストなど、すべて公開する方向に基本方針を切り替える」という趣旨で説明がされました。

 この説明では「環境に影響がある」としています。これは「水やダスト」にかかっていますので、「全て公開」の内容は、誰かが判断する「環境に影響がある」で、その範囲が絞られてくるわけです。

 その「誰か」とは誰なのかが気にかかります。
 質問に東電担当者は、その問題も含めて検討中で3月末には公表する、という趣旨で答えました。「環境に影響がある水やダスト」と説明しながら、その内容は決まっていない。それでは、ここで説明された内容は、実は何も説明しないのと同じ。説明の言葉は意味のない言葉を羅列したに過ぎなくないということになります。何のために特別委員会で調査しているのでしょう。

 その場ではこの回答に批判の発言をしました。それを受けて復興本社副代表が「情報は全て出すという方向です」と答えましたが、今回の方針発表はこの時の答弁の延長線上に位置づけられます。

 当初、基本的に全て出すということで、広く情報公開にすすむ姿勢は良しとすべきでしょう。ただそれでも不安が残ります。東電は本当に出すのだろうか・・。分科会の際には、情報公開のための第三者機関を設置し、ここに全ての情報公開の権限を持たせることも提案しました。その内容は発表された情報公開のあり方には含まれていませんが、もし、「全て公開」の方針に、分科会での質疑の結果も反映しているのだとするならば、市議会の役割が発揮されたものとして喜ばしいことです。


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