JEWEL BOX KDC!!

軽井沢学園を応援する会のストリートパズルより

いつも大好評のこのコラム。
今回はとてもあったかい、すごく「なんかいい」かんじになります。
みなさんも最後まで読んでみてください(^^)

‐園の庭をはきながら‐

なんだかすごくいい。

たかねっち☆

2015年4月1日、長野県佐久市は花園町。その日は、軽井沢学園にとって歴史的一歩を踏み出した記念すべき日。グループホーム「Casa佐久花園」開所の日。3歳から17歳の男女5人と職員5人による今までとは全く違う、新たな暮らしの始まりの日。
鮮やかな朱塗りの橋を渡り、稲荷狐が祀られる日本5大稲荷のひとつ「鼻顔稲荷神社」の大きな鳥居を背にし、湯川沿いに歩くこと約3分。西南には八ヶ岳連峰と蓼科山を望み、眼前に広がる田園風景。大きな石積みの小高い丘の上に建つ真っ白な壁、四角い建物。

高根:「さあ、今日からここがみんなの家だよ」
こども:「おーすげー、マジで~」
高根:「で、ここがキミの部屋」
こども:「おーっ」
高根:「そして、ここがトイレ」
こども:「おーーっ」
「ここが・・・」「おーーーっ」

私は、こどもたちに部屋を一つひとつ案内しました。あの日、Casaの建物を初めて目にしたこどもたちの感嘆の声や喜びの表情は今も鮮明に覚えています。 そして、記念すべき初日の晩に皆で囲んだ食卓は、園長には内緒で職員がお金を出し合って買ってきた国産黒毛和牛のすき焼きでした。これから始まる新しい暮らしと、Casaで暮らすことの意味を改めて確認し合い全員で乾杯をしました。構想4年、紆余(うよ)曲折。これまで大変だったけど、皆で協力し合い頑張ってきて本当に良かった。そう思った瞬間でした。


・・・あの感動の初日から、およそひと月が経ちました。新学期に入りこどもたちはそれぞれの学校へ通い始め、慌ただしく毎日が過ぎていきます。4月25日には佐久市長さんや花園町区長さんをはじめ地域の方々をお招きしてささやかな開所式も行いました。今回のたかねっちでは、その開所式の中で読まれた石坂保育士の挨拶文を紹介します。


~ご来賓の皆様、本日はご多忙中にもかかわらず Casa佐久花園の開所式にお越しいただき誠にありがとうございます。スタッフを代表して一言ご挨拶を申し上げます。
「子どもと共に普通の暮らしがしてみたい」そんな思いから、数年前より皆が一丸となって準備を進め、この4月、念願の開所を迎えることができました。 3歳から17歳のこども5人と、それを支える5人の大人による初めての暮らし。スタートからひと月が経ちますが、いまだ手探り



の状態が続いているといったところです。何もかもが始めてのことばかりで、ただただ生活に追われる毎日です。
しかし、そんな慌ただしい毎日の中にも「行ってきます」「行ってらっしゃい、忘れ物ない?」夕方には「ただいま、疲れた~」「お帰り」「今日学校でね、こうだったんだよ」「すごいね、頑張ったね~」
夕食準備の場面では、「いっしー手伝うよ」「○○ちゃんもうじきご飯になるからこれ運んで~」「○○ちゃん、ちょっとちびちゃんたち見てて」こんなやり取りが自然と出るようになってきました。 また、ご近所付き合いも始まりました。区費を収めて回覧板も回ってきます。先日は公民館の掃除にも初めて参加してきました。わからないことがあれば、「ちょっとお隣さんに聞いてくるね」と言ってはお隣さん宅を訪ねます。ごく当たり前のことではありますが、私たちにとっては初めての経験です。

ここで暮らすこどもたちは、様々な事情を抱え、親元を離れて暮らしています。物心ついた頃から軽井沢学園しか知らないこどもたちばかりです。しかし、この子たちもいずれは大人となって、結婚し、こどもを産んで家庭を築きます。その時のお手本となるべき場所がこのCasa佐久花園なのです。そのため、ここではこどもたちを学校に通わせながら、掃除洗濯家事全般、ご近所付き合いなど、将来の社会自立を見据え必要な知識や技術を教えていかなければなりません。まさに責任重大です。

何はともあれ、不安を抱えてのスタートでしたが、フカフカのベッドが嬉しくてピョンピョン飛び跳ねる姿、階段が嬉しくて何度も下りたり登ったり、自分だけの部屋が出来た、行儀が悪いのですが喜んでソファーに寝転がる子どもたちの姿を見ると、Casaを始めて本当に良かったという気持ちになります。しかし、開所してまだひと月あまり。これから良い事ばかりではないでしょう。色々な問題にぶつかったり、喧嘩で気まずくなることもあるでしょう。
「家庭」とは誰か一人が頑張って築くものではありません。そこで暮らす全ての人たちがお互いを認め、支え合い、乗り越えながら積み上げていくものと信じます。
終わりになりますが、本日ご来賓の皆様、まだまだ未熟な私たちではございますが、至らぬ点はご指摘いただき、温かく、そして、末永いお付き合いをどうぞよろしくお願いいたします。
平成27年4月25日  Casa佐久花園 石坂美由紀 ~



 このような挨拶でした。今の私たちの想いや願いを見事に代弁してくれています。多様化、複雑化が進む現代社会、こどもたちの置かれている状況も実に様々です。そのため、児童養護施設に求められる機能も昔の収容保護の時代と違って、愛着の再形成、虐待によるトラウマ治療、他者との関係性修復、家庭環境調整、アフターケアなど多岐にわたります。しかし、限られた職員数のグループホームにおいては日々の生活を回すことが精一杯でそんな所まで手が回らないというのが正直なところです。では、グループホームはなぜ必要なのか。

最近、あることに気付きました。私自身、開所以降一日も欠かさずCasaに足を運んでいるのですが、何だかこどもたちの様子が変なのです。何が変かと言うと、食事中はこどもたちとの会話がよく弾む。気付くと3歳児の面倒をみてくれていたり、台所で茶碗を洗ってくれている。学園にいた頃は肌身離さず持ち歩いていたゲーム機で遊ばなくなっている。来訪者の対応がすばらしい。他にもあります。言葉ではうまく説明できませんが、なんかいいんです。Casa全体にすごくいい雰囲気を感じてしまうのです。

この感覚は一体何なのか。グループホームの経験が浅い今の私には漠然とした表現しかできませんが、これから暮らしていくうちに“なんだかすごくいい”の訳を皆さんにもお伝えできる時が来るものと思っています。とにかく今は、自立に向けて様々な課題を乗り越えていかなければならないこどもたちにとって、この場所が絶対に必要な場所であるということ。「暮らしの持つ力」を信じつつ、こどもたちと仲良く楽しく暮らしていければいいなあ、なんて思っています。
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