はらたいらに、3000点

　おいらの職場に２０代前半入社２年目のＡ君がいる。
　ま、当然、ジェネレーション・ギャップがあるわけよ。
　アイドルで言えば、当然「おニャン子」は知らないし、スポーツで言えば、「宗兄弟」や「瀬古」を知らない。

「はらたいらに3000点！」

　という、クイズダービーの名セリフなんだけど、これもまた
「『はらたいらに3000点』という言葉自体は聞いたことがあるけど、あまりよく知らない」のだそうだ。
　
　まあ、クイズダービーを知らないのは当たり前で、あれが終わってから、もう13年経ってるんだよ。（ってことは、巨泉から徳光和夫に代わったのは、もっと前ってこった）

　でね、俺は、クイズダービーって番組を説明したんだよね。
「クイズダービーではらたいらって漫画家が出てて、インチキじゃないかってぐらい、正答率が高かったから、出場者が手堅く賭けたいときは、『はらたいらに3000点』賭けたんだよ」

　その後のＡ君の言葉がかなり衝撃的だったんだよ。

「え？　そうだったんですか？　僕は『はらたいらに3000点』賭けるってのは、ここ一番の大勝負をすることだと思ってました！」

　いや、勝負をするなら、「篠沢教授に5000点」なんだよね...。

　彼の中では『はらたいらに3000点』という言葉だけが一人歩きをしていて、結果として「はらたいら」が「篠沢教授」になっちゃってるわけだよね。
　ちょっと、びっくりだった。



　ま、言葉ってものは、意味が変わってくものだよね。
　『役不足』って、言葉が、昔は「能力に対して、役目が軽すぎること」だったんだけど、今では逆の意味で使われている、なんて話もちょっと話題になったよね。

（これを、「『役不足という言葉が間違って使われている』とか、とかいうのは間違ってるよね。昔は敬語だった「貴様」が、いまじゃ悪口になっちゃってたりするわけだから、言葉ってのは意味が変わるものなんだよね。だから、「国民の８割以上が間違って使っている言葉」があるとすると、それは、間違っている８割の方が正しくなったと解釈すべきだよ。だから、今現在は『役不足』の正しい意味は、「役目に対して能力が足りないこと」なんだと思うよ）


　そんな難しい話じゃなくてもさ、10年ぐらい前、女の子に

「君の顔、かなりやばいよね」

　なんて、言ったら確実に殴られていたんだけど、今じゃ、まあ「アリ」な誉め言葉になっちゃてるよね。

　逆に、今

「君って、まぶいよね」

　なんて、言ったら、殴られはしないだろうけど、口は利いてくれなくなるよね。
（まあ、昔から、「まぶい」なんて言葉は、誰も使ってなかった気もするけどね...）


　言葉って、生き物なんだろうね。


　花火の時の「たーまーやー！」ってさ、実際、今時、花火を見て、「たーまーやー」と叫ぶ人がいるかどうかは別として、その「たまや」って言葉は今でも残ってるよね。「たまや」ってのは江戸時代に燃えちゃった花火屋で、今はない店なんだけど、言葉だけは残ってるわけだよね。
　もしかしたら、『はらたいら』という言葉だけが、『大勝負』という意味でしばらくは、残ったりするのかな？　と、考えてみたりしたわけよ。