himetaku成長期

ビジネス書の書評更新中。

貴重な時間とお金を"投資"する書籍を選ぶ参考にして頂ければ、幸いです。

国家の命運

2010-10-31 07:22:04 | 日記
<書籍情報>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
題名:国家の命運
著者:薮中 三十二

<読書記録>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
読破時間:1.5H
おすすめ度:☆☆☆(5点満点3点)

<読書メモ> ★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆

・外交官はパトリオット(愛国者)たれ。

・交渉とは目の前に座っている相手との駆け引きであり、対決のように思われがちだが、そんな単純なものではない。

 自分と後ろに控えている国内関係者との駆け引きも重要な要素であり、どれだけ国内から交渉の幅をもらえるかが交渉者の腕前でもある。

 それは、テーブル越しに相手と握手して持ち帰った結果を、きちんと国内でデリバーしなければならないからだ。それが出来ないと交渉そのものが成り立たない。

 だから、交渉の終盤に入ると、テーブルで向き合ってきた交渉者が同志的連帯を感じるようにもなる。

★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆

<コメント>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

アジア太平洋局長として、六ヶ国協議の際に日本の代表として

連日、テレビで姿を見た藪中氏の著書です。

著者の外交経験から外国との交渉手段や外交の裏話が満載です。

最近話題のTPP(環太平洋経済パートナーシップ協会)に

ついても言及されています。

<編集後記>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

長らくしておりませんでしたが、ヴィッセル神戸のお話です。

シーズン途中で、三浦監督から和田監督に変わりました。

それから、ずっと勝てずにようやく、昨日のアウェーでガンバ大阪に

勝利しました。

一時期は、

「お前らいつになったら勝つねん!」

「J2行ってからやったら、遅いんじゃ!!」

と、野次とも激励とも取れる声が上がっておりました。

とりあえず、新監督の初勝利にサポーターも喜んでいるんではないでしょうか。

ただ、まだJ2降格圏内の16位です。

残り試合、全て勝つつもりで頑張って欲しいと思います。

<お知らせ>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

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 himetaku@mail.goo.ne.jp

この国を出よ

2010-10-30 08:24:04 | 日記
<書籍情報>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
題名:この国を出よ
著者:大前研一 柳井正

<読書記録>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
読破時間:1.5H
おすすめ度:☆☆☆(5点満点3点)

<読書メモ> ★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆

<「稼ぐ」と「儲ける」>

・ライブドア事件などで「稼ぐ」ことは悪いことであるかのような風潮が生まれましたが、それは違います。

 彼らは、お金を転がして、「儲けて」いただけで、社会に役立つ商品を開発したり売ったりして「稼いで」いたわけではありません。

 「稼ぐ」というのは、人の役に立つモノやサービスを作って、その代わりにお金をいただき、そして納税をするという「社会貢献」をすることなのです。

★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆

<コメント>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

重鎮二人が日本を袋叩きにしています。

最初の3分の2で読者に恐怖を与えて、残りの3分の1で、

希望を与える。

世間で言う所の、怖い人のやり口に似ているなぁ

と思いました。

<編集後記>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 今週は、講演会weekでした。

 経済評論家の森永卓郎氏、アナウンサーの辛坊治郎氏、ロボットクリエイターの高橋智隆氏の3名の講演会を聞きに行って来ました。

先日、講師デビューをした身としては、講演の内容もさる事ながら、講演の構成や話し方や身振りや時間配分等、勉強になる所が多かったです。

もっと、色々な人の話をこれからも聞きに行きたいと思いました。

<お知らせ>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

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 himetaku@mail.goo.ne.jp

これからの思考の教科書

2010-10-22 07:24:36 | 日記
<書籍情報>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
題名:これからの思考の教科書
著者:酒井 穣

<読書記録>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
読破時間:2.5H
おすすめ度:☆☆☆(5点満点3点)

<読書メモ> ★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆

<ロジカル・シンキングとは>

・「同じ事実が与えられれば(ほとんど何も考えなくても)、

 同じ結論を導くことができるスキル」のことです。

 厳密に言うと、ロジカル・シンキングとは、同じインプットから

 同じアウトプットを出す為のスキルです。

→インターネットが発達している現代の情報化社会では、

 ロジカル・シンキングでは競合他社との差別化は出来ない。

<ロジカル・シンキングとラテラル・シンキング>

・ロジカル・シンキングが特に発達したのは、父性社会的な

 傾向が強いヨーロッパです。男性的な思考を文化の中心とする

 父性社会は、ものごとの曖昧さを嫌い、ものごとを切り分け、

 思考そのものよりもむしろ結論に至る思考の筋道を大切にします。

・ラテラル・シンキングが特に発達したのは、母性社会的な

 傾向が強いアジアです。女性的な思考を文化の中止とする

 母性社会は、ものごとをあるがままに包み込み、曖昧さの中にも

 価値を見出し、結論が出なくとも思考そのものを楽しむような

 ところがあります。そもそもこの思考は、なんらかの成果物を

 得るための手段ではなく、思考自体が目的化しているの特徴です。

・ロジカル・シンキングは漫才の「ツッコミ」に相当し、

 ラテラル・シンキングは「ボケ」に相当すると考えています。

<人間の最後の砦>

・今後、科学技術の発達によって、人間が担当してきた多くの「作業」は

 自動化され、人間の仕事はクリエイティブな「想像」だけになっていくでしょう。

→ロジカル・シンキングは、いずれロボットが人間にとってかわる

 スキルなのであって、クリエイティビティーを支える飛躍こそが

 人間に残された最後の砦でもあります。

<読書の効用>

・知識量という意味で、ラテラル・シンキングに読書の習慣が影響するのは当然として、

 認識しておくべきなのは、カバーしているテーマの幅の重要性です。

 どれくらい自分の専門分野から遠いテーマの本まで読んでいるかどうかで、

 ラテラル・シンキングにおける象徴類推力は決まってしまいます。

→注意したいのは、ここで幅を得よというのは「雑学的な知識を得よ」ということ

 ではなく、「目的を持って雑食せよ」という意味だということです。

 乱読するにせよ、ただ自分の好奇心に任せてしまうのではなく、

 「あるテーマに関連する知識を別のどこかに見つけたい」という

 目的意識が重要なのです。

 この意味で、多読をどこか自尊心の柱としつつも、なんらかの文章としての

 アウトプット(組み合わせようとする作業)を行わない人は要注意だと思います。

★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆

<コメント>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

超・真面目な思考法の本でした。

ロジカル・シンキング、ラテラル・シンキング、インテグレーション・シンキングの

解説と実践方法について、細かく書かれており、思考法の授業を

受けているような感覚でした。

教科書的な本だったので、「読書メモ」はポイントがズレテいると思います…

内容が気になる方は、実際に読んで頂く事をオススメします。

感想を正直言うと、最後の方で飽きてしまいました…

<編集後記>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

本当にどうでも良い事ですが…

私が愛用しているマクドナルドのメニューが増えました!!

「McCafe」のメニューが追加されて、コーヒーの種類が増えました。

今日は「カフェ・ラ・テ」を注文してみました。

値段は「プレミアム・ロースト・コーヒー」が\120ですが、「カフェ・ラ・テ」は\190でした。

いつも「プレミアム・ロースト・コーヒー」なので、店員は少し驚いていたような…

味は、そこそこでした。

ただ、値段が70円高いのにカップが同じで、見た目には違いが分からないのは頂けない気がしました。

周りの人から、「あの人、高い物を飲んでいる」と思われたい人もいると思います。

もう少し分かりやすく、高級感を出してくれたら良いなーと、朝5時に思いました。

そもそも、そんな高級感を望むなら、「マクドナルドに行くな」と言われそうですが…

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上司は命がけで怒れ!

2010-10-20 06:24:57 | 日記
<書籍情報>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
題名:上司は命がけで怒れ!
著者:山本 重雄

<読書記録>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
読破時間:1.5H
おすすめ度:☆☆☆(5点満点3点)

<読書メモ> ★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆

<店舗をつくってまずすること>

 ・店舗を新しく立ち上げて繁盛させる際、まずやるべきことは何でしょうか?

  →私はまず、「行列を作る」ことだと思っています。

   一般的に繁盛店というのは、「美味しいから流行る」と考えられています。

   でも実際は「流行るから美味しい」のです。

  →そもそも、飲食店として、美味しい料理を提供することは当たり前のことです。

<新メニューは>

 ・新メニューは売り値から考えろ!

  →原価から売値を考えてしまう人がいます。

   しかし、まずは売値をしっかりと考えて、原価を抑える努力をすることが必要です。

   原価が高いから売値も高いというのは、お客様には通用しません。

  →「値決めは経営である」という言葉があるぐらい、売値を決めるというのは商売の基本です。

<最大の勉強は>

 ・常に”誰かに伝えるため”という意識を持って学ぶ事で、最大の勉強になります。

<怒り>

 ・本気の”怒り”の感情こそ、部下を育て、私を育てる

 →そもそも、”怒る”とは、自分の思うようにいかないことに腹を立て、

  爆発させて語る感情的な言葉です。

 →一方”叱る”とは、相手の人間のことを思い、成長を願って話す冷静で指導的な言葉です。

 自分の感情に任せて怒るのではなく、指導する意味を込めて叱ることがよいと言われています。

 →しかし、私はこういう考え方に真っ向から反論します。

  怒りの感情とは、相手にも向かう同時に、自分にも跳ね返ってくるものです。

  相手も傷つき、自分自身も「なぜ、あんなことを言ってしまったのか…」と傷つきます。

 →ところが、「あなたのことを思っているから叱るんだ」と指導するように話すのは、あまりにも綺麗すぎてしまい、私にはどこかよい人過ぎるように感じます。

<「情熱」を炭火のように>

・「情熱」とは何か、考えたことがあるでしょうか。

 イメージとしては、一気に燃えたぎる炎のようなもので、熱い情け、燃える思いだと思います。

 「情熱」は誰でも持つことができますが、「情熱」を持ち続けることは難しいように感じます。

 一瞬燃え上がると、いつの間にか消えてしまいがちなのです。

→「情熱を炭火のように燃やし続ける」という言葉があります。

 炎がバーッと燃え上がるようなことではなく、炭火のようにというのがポイントになっています。

 炭火には炎がありませんが、火力が強く、永く燃え続けることが出来るのです。

★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆

<コメント>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

『幻の手羽先』でお馴染みの『世界のヤマちゃん』の創業者

である、山本氏の著書。

『世界のヤマちゃん』の創業から『幻の手羽先』『鳥男』の

誕生秘話まで、『世界のヤマちゃん』の快進撃の裏側が

書かれている。

読み終わった後は、手羽先とビールが欲しくなる一冊でした。

<編集後記>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

久々の更新です。

先週の土曜日の講演会の準備で、更新出来ていませんでした…

1週間しか準備期間がなくて、ひたすら話のネタ探しをしていました。

お蔭様で、自分の過去の体験の棚卸が出来ました。

いつでも話が出来るように、ネタ帳を作ろうと思いましたが、

もしかすると、この前の講演が最初で最後かも…

まっ、どちらにしても自分の過去の体験の棚卸はしておいて

損はないと思います。

<お知らせ>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

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街場のメディア論

2010-10-09 20:17:33 | 日記
<書籍情報>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
題名:街場のメディア論
著者:内田 樹

<読書記録>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
読破時間:4.5H
おすすめ度:☆☆☆☆☆(5点満点5点)

<読書メモ> ★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆

<仕事と適正>

 ・みなさんの中にもともと備わっている適性と潜在能力が

  あって、それにジャストフィットする職業を探す、という

  順番ではないんです。

  まず、仕事をする。仕事をしているうちに、自分の中に

  どんな適性や潜在能力があったのかが、だんだん分かって

  くる。

 →学生は、自分にどんな適性や潜在能力があるのか、知らない。

  自分が何に向いてるか知らないままに就職して、

  そこから自分の適性を発見する長い長い旅が始まるんです。

 ・就職というのは、「結婚」と似ています。

 →結婚というのはまず「自分にぴったりした配偶者に出会う

  こと」から始まると思ってますか?それは間違いです。

  「まず結婚する」んです。そこから話が始まる。

  結婚してみないと、自分がどういう人間なのか、

  そもそも結婚に何を求めているのかなんて、わからない。

  結婚してはじめて、自分の癖や、こだわりや、才能や、

  欠陥が露呈してくる。

<キャリア教育の目指す目標>

 ・与えられた条件のもとで最高のパフォーマンスを発揮

  するように、自分自身の潜在能力を選択的に開花させること。

<自分の能力の開花>

 ・人間が大きく変化すして、その才能を発揮するのは、

  いつだって「他者からの懇請」によってなのです。

 →われわれ凡人が「ほんとうにしたいこと」や「自分の転職」

  で勘違いすることはまず不可避である。

  「内面の声」に耳を傾ける暇があったら、まわりの人から

  「これ、やって」というリクエストに、にこやかに応じた

  ほうがいい。

  たいていの場合、自分の能力適性について自己評価よりは、

  まわりの人の外部評価のほうが正確なんです。

 →「これ、やって」というのは「あなたの例外的な潜在能力は

  この分野で発揮される」という先行判断を含意しています。

  そういう言葉には素直に従ったほうが良い。

 ☆人の役に立ちたいと願うときにこそ、人間の能力は伸びる。

  それが「自分のしたいこと」であるかどうか、自分の「適性」に

  合うかどうか、そんなことはどうだっていいんです。

<「無垢」という罪>

 ・テレビの中でニュースキャスターが「こんなことが許されて

  いいでしょうか」と眉間に皺を寄せて慨嘆するという絵柄は

  「決め」のシーンに多用されます。

 →報道に携わる人間にとっては「こんなことが起きるなんて

  信じられない」と言うのは、禁句だと思う。

  「知らなかった」ということは気楽に口にするという事は

  報道人としては自殺行為に等しいです。

  「知らなかった」という言葉はメディア人間としては、

  「無能」を意味するのではないですか。

 →「知っておくべきことを知らないでいた。大変恥ずかしい。」

  と言うなら、わかる。でも、そうではない。

  いずれ「こんなこと」が起きるだろうと実は前から思っていた

  のだけれど、報道しなかった。

  でも「知っていたけれど、報道しなかった」と正直に

  言ってしまうと、「なぜ報道しなかったのか」と責任を

  問われる。

  そのような事態に巻き込まれるのが厭だから、

  「知りませんでした。聴いて、僕も驚きました。まさか、

  『こんなこと』がほんとうにあるなんて…」という芝居を

  して見せる。

 →責任逃れのためとはいいながら、ジャーナリズムが「無知」

  を遁辞に使うようになったら、おしまいじゃないだろうか。

  世の中の出来事について、知っていながら報道しない。

  その「報道されない出来事」にメディア自身が加担している、

  そこから利益を得ているということになったら、ジャーナリズムは

  もう保たない。

 →このメディアが好んで採用する「演技的無垢」は、それを

  模倣する人々の間に社会的な態度として広く流布されました。

  おのれの無垢や未熟を言い立てることで責任を回避しようと

  する態度。いまや一種の社会的危機にまで肥大化しつつある。

<クレイマーとは>

 ・自分の能力や権限の範囲内で十分に処理できるし、処理すべき

  トラブルについて、「無知・無能」を言い立てて、誰かに

  補償させようとする人々がそれです。

<無責任な権利>

 ・何年か前に「はしか」が流行したことがありました。

  発症したのが学内寮の寮生だったので、閉鎖空間である

  寮での感染の拡大を避けるために、寮生たちには帰省と

  自宅待機を命じました。その間も授業は普通に続けられました。

 →一週間ほどの待機期間が終わって、寮が再開された後に

  ある寮生の親から電話があって、

  「休んだ間に受けられなかった授業についての補償を

  大学はどういうかたちで行うのか」と訊ねて来ました。

 →自宅待機は「伝染病の感染を防ぐ」という公共的な目的

  のための措置であって、寮生はこの措置によって「病の

  感染機会から隔離される」というかたちですでに「受益」

  したと考える。

  でも、この親は「はしかに感染しなかったこと」は「利益」

  にカウントせず、学校伝染病の拡大を阻止する公的措置が

  もたらした学習機会の喪失だけを「損失」にカウントした。

 →公的な措置によって、私人がその利益を守られたことに

  ついては「当然の権利」であるとして無視し、多くの人の

  利益を守った公的措置に生じた「コラテラル・ダメージ」に

  ついては、被害者の立場から補償を要求する。

  これが、「クレーマー」たちに共通する発想法です。

 ・大学がきびしい卒業判定を行うのは、それによって

  学士号の質保証を行い、卒業証書の持つ価値を高く保つためです。

  「フランス語くらい、落としてもいいじゃないか、

  卒業させろ」と言ってきた親は、卒業証書が所有者の

  知的な質を保証することは「当然の権利」として要求

  しながら、それゆえに簡単には卒業させてくれないことに

  ついては、これを「被害」事実として語ろうとする。

 →自分が市民的に享受している利益は「当然の権利」であり、

  それについては少しも「負債感」を持っていない。

  しかし、自分の私益が侵害された場合にはうるさく言い立てる。

<患者は「お客さま」か>

 ・「『患者さま』と呼びましょう。」というお達しが

  厚労省から出ていた。

 →「患者さま」という呼称を採用するようになってから、

  病院の中でいくつか際立って変化が起きたそうです。

 →一つは、入院患者が院内規則を守らなくなったこと

  一つは、ナースに暴言を吐くようになったこと、

  一つは、入院費を払わずに退院する患者が出てきたこと。

  以上三点が「患者さま」導入の「成果」だそうです。

 ・「患者さま」という呼称はあきらかに、

  『医療を商取引モデルで考える人間が思いついたもの』

  だからです。

  医療を商取引モデルでとらえれば、「患者さま」は

  「お客さま」です。病院は医療サービスを売る「お店」です。

  そうなると、「患者さま」は消費者的にふるまうことを

  義務付けられる。

  「消費者的にふるまう」というのは、ひとことで言えば

  「最低の対価で、最高の商品を手に入れること」を

  めざして行動することです。医療現場では、それは、

  「患者としての義務を最低限にまで切り下げ、医療サービス

  を最大限まで要求する」ふるまいをとります。

  三つの変化まさにこの図式を裏書しています。

 ・厚労省がこんな奇妙な指示を発令したのは、彼らが

  社会関係はすべからく『商取引モデルに基づいて構想される

  べきだ』という信憑の虜囚になっているからだと思います。

 →小泉純一郎内閣のときににぎやかに導入された

  「構造改革・規制緩和」政策とは、要するに「市場に委ね

  れば、すべてうまくゆく」という信憑に基づいたものでした。

 →すべては「買い手」と「売り手」の間の商品の売り買いの

  比喩によって考想されねばならない。消費者は自己利益を

  最大化すべくひたすらエゴイスティックにふるまい、

  売り手もまた利益を最大化するようにエゴイスティックに

  ふるまう。その結果、両者の利益が均衡するポイントで

  需給関係は安定する。市場にすべてを委ねれば、「もっとも

  安価で、もっともクオリティの高いものだけが商品として

  流通する」理想的な市場が現出する。市場は決して選択を

  誤らない。というのが「市場原理主義」でした。

 →このモデルを行政もメディアも、医療にも適用しようとした。

 →こういうイデオロギーを刷り込まれた患者は、おそらく

  善意に基づいて院内規則を破ったり、看護師に暴言を

  吐いたりしているのです。

  人間が悪いことを平然と出来るのは、「そうすることは

  いいことだ」というアナウンスを聞きつけたからです。

<メディアの不調>

 ・メディアが急速に力を失っている理由は、決して巷間

  伝えられているように、インターネットに取って代わられた

  からだけではないです。そうではなくて、固有名と、

  血の通った身体を持った個人の「どうしても言いたいこと」

  ではなく、「誰でも言いそうなこと」だけを選択的に

  語っているうちに、そのようなものなら存在しなくなっても

  誰も困らないという平明な事実に人々が気付いてしまったのではないか。

<メディアの求めるもの>

 ・社会制度の劇的変化が起こると、「これから何が起こるか

  分からない」という不安が生まれます。

  「何が起きていのか知りたい」という情報へのニーズは

  メディアにたしかな商業的利益をもたらす。そういう図式

  がすべてのメディア人の無意識のうちには深く刻印されている。

  それが無意識のものである以上、メディアが「変化を求める」

  ことは誰にも止められません。変化のないところにさえ

  変化を作り出そうとする。変化しなくてもよいものを

  変化させようとする。

 →何も変化しないで順調に機能している制度に無理に手を

  突っ込んでも変化を起こそうとする。

  変化への異常なまでの固執。それは近代のメディアに

  取り憑いた業病のようなものです。

 ・自民党政権の末期、メディアは「総理の不適合性」を

  言い立てました。自民党が次々と総理を替えると、その

  たびに「かわりばえがしない」と批判されました。

  自民党から民主党への政権交代は大きな変化でしたので、

  メディアは大歓迎しましたが、わずか数ヶ月で集中的な

  批判に転じました。「これでは自民党と変わらない」と

  いうのがその主たる理由でした。

 →どうやらメディアが求めているのは安全でも繁栄でもなく

  変化なのです。そのことにメディア自身は気づいていない。

 ・「変える必要のないもの」「惰性が効いているほうがよいもの」

  はメディアにとっては存在しないと同じものです。

 →昨日と同じままのものには報道する価値がない。

  「報道する価値のないもの」は存在していないように

  扱われるか、あるいは存在させてはならないものとして

  扱われる。

<教育改革>

 ・教育の専門家たちというのは本性的に「新しい試み」を

  忌避するものです。

 →教育の根幹部分は「子供を成熟に導く」という目的

  のためにあり、それは人類学的機能ですから、政権交代や

  株価の高下とはなんの関係もありません。

  子供を成熟させるためにこれまで人類が考え出した装置は

  いくつか有効なものが知られており、世界中のどこの学校でも

  その装置を適宜ローカライズして使っている。

  それは、長い経験を通じて工夫されたものだから、場合によっては

  なんの役に立つのか教育現場にいる人間もよくわからない

  「取り決め」や「約束」がある。それを現代人の感覚で

  「よくわからない」から廃止するというようなことは

  しないほうがいい。その起源が歴史の闇に消えて知られて

  いない制度については、出来るだけ謙虚に接したほうがいい。

  それは教師たちの中に深く内面化した経験的確信です。

 →メディアが教育への市場原理の導入に終始好意的であるのは

  それが間違いなく教育制度を根本から揺り動かし、改変し、

  場合によっては解体してしまう見込みがあるからです。

  制度がめまぐるしく変化すれば、それについての情報価値は

  高騰します。

  いったい教育現場で何が起きているのか、誰に従えば良いのか

  どうふるまえば有利なのか…

  教育制度にかかわりを持たずに済ませることのできる国民は

  ひとりもいませんから、教育制度が「一寸先は闇」になる

  ことは巨大な情報市場を創出します。

  ですから、メディアが「教育は市場原理に委ねられねば

  ならない」という結論へ導かれるのは論理的には自明なことです。

<買い物上手になる学生>

 ・一流大学を出たはずの若いサラリーマンと話したときに、

  彼があまりに無知なので、「いったい君は大学で何を勉強

  していたのだ?」と訊いた事がありました。

  すると、彼はなんと「何も!」と胸を張って答えたのです。

 →彼にとっては、一流大学を出ているにも関わらず無知である

  ことは少しも「恥ずかしいこと」ではなく、無知である

  にもかかわらず一流大学を出たことこそが「誇るべきこと」

  だったのです。

  彼の笑顔はわずかな手銭で驚くほど高級な商品を買ってみせた

  「買い物上手」の自慢顔だったのでした。

 ☆市場原理を教育の場に持ち込んではいけない。

  「社会制度は絶えず変化しなければならない、それがどう

  変化すべきは市場が教える」という信憑そのものが

  教育崩壊、医療崩壊の一因ではないのかという自問に

  メディアがたどりつく日は来るのでしょうか。

<電子書籍の真の優位性>

 ・電子書籍が読者に提供するメリットの最大のものは

  「紙ベースの出版ビジネスでは利益がでない本」を

  再びリーダブルな状態に甦らせたことです。

 →「読者が読みたかったけれど、読むことの難しかった本」への

  アクセシビリティを飛躍的に高めたことです。

  そういった本へのアクセスが困難であった最大の原因は

  そんなものを出版頒布してもビジネスにならないと

  判断されたからです。

 →「採算ラインを超える数に達しない限り、存在しないもの

  として扱われる」というルールを僕達はずっと黙って

  受け容れてきた。

 →電子図書館サービスは「読む人が現時点にいようがいまいが

  いつかアクセスしたい人が出てきたときに、すぐにアクセス

  できるようなシステム」を作り上げました。

  また、存在しない読者さえも読者として認知して、その

  利便性を配慮した。

 →これまで読者として認知されなかった人たちを読者として

  認知したこと。それこそが電子書籍の最大の功績だと思う。

★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆-★-☆

<コメント>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

内田樹氏の「街場」シリーズの第4弾。

今回のテーマは「メディア論」です。

神戸女学院大学で行われた「メディアと知」という題目の

大学二年生対象の入門講義が基になっているようです。

20歳くらいの女子大生が分かるロジックで書かれているので、

非常に読みやすかったです。

「メディア」だけでなく、大学生向けの授業であるので「仕事」

に関しても、書かれています。

マイケル・サンデル氏が書かれた、ハーバード大学の授業を

基にした「これからの正義…」とは、一味違った良い本でした。

おすすめです。

<編集後記>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

9月末で上半期が終わり、現在は決算の真っ盛り。

日々の仕事が忙しくて、ブログの更新が滞りました…

話は変わりますが、突然ですが講師デビューをする事になりました。

会社の朝礼でスピーチをする事はありますが、本格的な講師は

初めてです。何が一番不安かと言うと、60分も喋れるのかどうかです。

会社の朝礼は、長くても10分です。精一杯準備をして望もうと

思います。

忙しい時に限って、こういうチャンスは巡って来る物ですね。。

<お知らせ>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

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