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Kの思い出(その1)

この前ここに書いたのが9日だからそれから結構いろんなことがあった。ただ何を書いても的外れなようで書けなかった。この年になってぼーずはもう半世紀以上生きている。従って多くの誕生と別れを経験してきた。身内では父親、祖父母。そして友人の幾人かは故人だ。ただ今回のKの死にはかなりの衝撃を受けた。

いきなり去ったわけではなかった。そう長くKの顔を見ることは出来ないのだと無念だが覚悟は決めていた。本人の口からそれを聞いたのは今年の1月だった。12月に検査を受け、すい臓のガンだと言われすぐに手術した。それは成功だったが、他の部分にも転移が見られたというのだ。

十数年前、社内異動でジェット機のプロジェクトに足を踏み入れた。それまではレシプロエンジンしか担当したことが無かったぼーずにとって、そこは未知の領域だった。部品を発注しようにも材料から違う。おまけに機能部品の知識が無い。妙な例えだが、大根1kgが欲しいと言われても用途によって必要なものは変わる。タクワンなら葉付の練馬、おろしそばなら辛味大根だろうか。

料理の知識が無かったら大根ですら困る。そういう状態だったのだ。その時、助け舟を出してくれたのがKだった。プロジェクトの責任者でありながら時間を見つけてはお茶に誘って、タービンのレクチャーを授けてくれた。手帳を開くと、いまでもK手書きの説明図が残っている。無論一枚の説明図で理解できるほどタービンは簡単なものではないが、判り易い例えを交えながらつぼを押さえたKの説明は文系のぼーずにも理解できるものであった。

1月に会社の食堂で、すい臓ガンについて淡々と説明してくれたKの姿を見てそのころを思い出していた。これからおとずれるかもしれない最悪の結果さえも可能性のひとつ(但しかなり高い可能性だが)でしかないと語るKを見てエンジニアらしいなと思った。

『今年の桜はまず大丈夫だけど、来年の桜はどうだろうな』という彼に月並みな慰めの言葉はかけられなかった。4月の花吹雪の中、彼はどんな思いで桜を見たのだろう。

ここに続く 

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