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告知

2017-12-16 16:26:53 | お話
🌸告知🌸


60代の男性で胆管がんの患者さんがいました。

ある大学病院では本当の病名が告げられず、「胆石症」と診断されていました。

手術後に体調が悪くなったその方は、担当の先生に病気の説明を求めました。

でも詳しくは答えてくれません。

先生も本当のことを言えず、困っていたのでしょう。

次第に先生は下を向いて薬を出すだけになりました。

患者さんも不信感を抱き始め、病院に行かず家でずっとゴロゴロするようになりました。

それで奥さんが心配して、ご主人と一緒に私たちのホスピスに来られたのです。

その患者さんは

「とにかく自分がどうなっているのか知りたい」

と言われました。

そこでもう一度検査をし、1週間後に結果を伝えることになりました。

「どんな結果でも知りたいですか?」

と聞くと、

「はい、知りたいです」

と言われました。

1週間後に来られた時、

「お気持ちは変わりませんか?」

と聞くと、

「変わりません」

と答えられました。

そこで私は

「あなたの病気は悪性です」

と伝えました。

その方は肩を落とし、奥さんに

「知っていたのか?」

と問いつめました。

奥さんは

「はい。でもどうしても言えませんでした」

と謝りました。

その後その方は、

「私、頑張ります」

と言って帰られました。


この患者さんは4月に外来にこられて5月に入院し、7月3日に亡くなりました。

その後奥さんから、こんな手紙が届きました。

「3度目の外泊のためホスピスまで迎えに行くと、夫は

『これが最後だと思う』

と言って、ほろほろと涙をこぼしました。

そして

『孫たちに会いたい』

といました。

みんなを連れてきて2泊し、楽しい時間を過ごしました」

「7月2日、2階で眠る彼の様子を見に行き、

そのまま夜明けを迎えました。

白んできた窓の外で、スズメがさえずり始めました。

彼は言いました。

『ベットに入りませんか』。

思いがけない言葉に、私は静かに寄り添いました」

「私の肩を抱いて、最後は自分に言い聞かせているのでしょうか。

『人間は弱気になっちゃダメだよ。

頑張って生きていってくれよ』

と。

私は、枯れ木のような胸に顔を埋めて嗚咽するしかありませんでした。

この朝のことは一生忘れないでしょう」


この世を去ろうとしている人が「送る人」を励ましています。

奥さんは、この言葉によって、ずっと生きていけると思います。


「告知」とは、患者さんに「あなたの人生はもう残りが少ないんですよ」と伝える「最期の宣告」ではありません。

「告知」はつらことかもしれません。

でも私は、このご夫婦から、

「悪い情報を共有することの意味」

を教えてもらいました。

告知されるまでこの奥さんは悩み続け、

ご主人は医療に対する不信感を持ちながら、

全く違う思いの中で生きてきました。

しかし「悪い情報」を共有した時から、同じペースで歩けるようになりました。

つまり「告知」は、その後の1日1日を深く濃く生きることができるきっかけをつくるのだと思います。

もちろん告知の衝撃から立ち直るのが難しい患者さんもいます。

本当のことを伝えたからといって、患者さんの幸せを保証できるわけではありません。

ただ、生きていくのは患者さん自身です。

告知後もしっかりフォローしてあげることで、

患者さんは自分の人生を自分らしく生きていくことができるのです。


(「みやざき中央新聞」H29.12.11山崎章郎さんより)

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