シューマッハカレッジ留学記

英国トトネスにあるシューマッハカレッジ。その在りし日々とイギリスのオーガニックな暮らしを記録した留学記です。

Grow Small, Think Beautiful

2011-10-22 | カレッジ関連記事

Grow Small, Think Beautifulは、
世界がこれから、
25年程度をかけて行きつく、
着地点を表現している言葉でしょう。

これは、
シューマッハカレッジに関わる面々が、
世界が直面している危機に対して、
それをどのように解決し、
いかなる新たな社会を作っていくかの議論を収録した、
シューマッハカレッジが、
この20年間の集大成として、
このほど初めて出版した本のタイトルです。
Grow Small, Think Beautiful: Ideas for a Sustainable World from Schumacher College
Floris Books


編集したのは、
この学校を20年にわたって支えてきた、
エコロジストでガイア理論の研究者である、
ステファン・ハーディング。

執筆者にはシューマッハカレッジを立ち上げてきた人々や、
その卒業生が名を連ねています。

ガイア理論のジェームズ・ラブロック

理論物理学者でエコリテラシー研究所の、
フリチョフ・カプラ

日本でも近年注目され、
来年も来日が予定されている思想家であり活動家でもある、
サティシュ・クマール

「懐かしい未来」の著者で、
映画「幸せな経済学」の製作者でもある、
社会活動家のヘレナ・ノーバーグ=ホッジ

生物学者であり、形態形成論の提唱者である、
ルパード・シェルドレイク

ローカル経済、地域通貨の研究で知られる
リチャード・ダウスウェイト

ホールシステムアプローチ(全員参加型集会)のひとつ、
Cooperative Inquiryの中心的研究者である、
ピーター・リーソン

ホリスティックサイセンス修士コースの、
コーディネーターを長年にわたって務めるとともに、
ホリスティックな調和的な社会構造を研究してきた、
ギデオン・コゾフ

今年度からスタートした、
サスティナブル経済学修士コースの責任者、
ジュリー・リチャードソン

その他、
ホリスティックサイエンス修士コースの卒業生で、
それぞれの分野で研究を続けている、
研究者や大学教員たちの文章などが収録されています。

テーマは、
地球生命系のことから、教育の在り方、科学論、
経済、貨幣システム、トランジションの考え方、
エネルギー、ビジネス、組織論、デザイン論まで、
多岐にわたっていますが、
一般向けに書かれていますので、
比較的読みやすい文章になっています。

そもそも地球生命系は、
時計仕掛けのような、部品が積み重なってできたものではありません。

地球生命系は、
極めて複雑に相互影響し、
相互に依存しあいながらお互いの生命を維持する系です。
従って、「個」ばかりを研究していても、
本当の姿はわかりません。
地球生命系の本当の姿を知るには、
「個」がどのように「他」と相互影響、相互依存を行い、
そこから「全体」がどのようにして形成され、
維持されているかを明らかにする、
全体性(ホリスティックな視点)を重視した研究が必須となります。

1970年代以降、
ガイア理論、オートポイエーシス、システム思考、複雑系科学、
などの研究の進展で、
地球生命系のしくみを全体性の視点でとらえなおす,
数々の研究が行われ、
それまでの生物学、地球環境学の常識を覆す事実が、
次々に明らかになってきました。

地球規模においては、
すべての生命と地球、宇宙とが、
お互いにうまく相互影響しながら自律機能を発揮する、
非常に安定した地球生命システムを作り上げてきた、
そのしくみが明らかになってきました。

そして、個々の生命においても、
その基本には数々の絶妙に調律された創発現象が積み重なって、
極めてレジリアンス(しなやか)な、
生命=自律を保つプロセス、が起こっていることがわかってきました。

地球の進化は、
それぞれの「個」の変化が、「全体」に変化を与え、
「全体」が変化すると、それが「個」の変化をさらに誘導する、
“共進化”によってすすみます。

従って、「全体」に調和できない「個」が現れた場合、
それは淘汰されるか、
あるいは、場合によっては「全体」の崩壊を招きます。

今、人間は、まさにその岐路に立っているのです。

私たちが自然界と共生しようとするのならば、
その相手である、自然界というものが、
どのようなものであるかをよく知る必要があります。
少なくとも、
自然界を形成している基本的なしくみを知ることは、
私たちのこれからの社会づくりを考えるうえで、
その唯一の拠り所となるはずです。
(概略は「新しい社会の基本がわかる」をご参照ください)

先日ご紹介した、
Occupy Wall Street運動を支える、
一つの論理的基盤を提供している、
デビッド・コーテンも、
そういった地球生命系の原理の知識をベースに考えを積み上げています。
Grow Small, Think Beautiful
の本の全ての著者も、
地球生命系の原理を理解した上で議論を展開しています。

まだアマゾンでは買えませんが、
出版社からは直接買うことができます。

私もまだ全部読んでいるわけではありませんが、
面白い論考がいくつもありますので、
何かの折に、順次ご紹介していきたいと思います。

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