シューマッハカレッジ留学記

英国トトネスにあるシューマッハカレッジ。その在りし日々とイギリスのオーガニックな暮らしを記録した留学記です。

追悼 Prof. Brian Goodwin

2009-07-18 | カレッジ関連記事
シューマッハカレッジの、
ブライアン・グッドウィン教授が
一昨日の晩、亡くなられたとの連絡がありました。
78歳でした。

グッドウィン教授は、
若い頃に、数学者であり有機体論的な自然観を主張した、
アルフレッド・ノース・ホワイトヘッドに影響を受け、
数学を学んだ後、オックスフォード大学では、
ジョン・メイナード・スミスの研究室で、
理論生物学を専攻されました。

構造主義生物学の中心的な研究者として、
形態発生の研究などで世界的に知られる人となり、
その後、複雑系の考え方を用いた研究を行い、
アメリカのサンタフェ研究所の創立メンバーとして、
創立後は外部アドバイザーをされていました。
日本の京都学派にも関心が高く、
今西理論などにも造詣が深かったようです。

多くの研究者に影響を与え、
特に日本でも知られた人達としては、
スチュワート・カウフマン、
メイ・ワン・ホー
柴谷篤弘先生、岡田節人先生、
などと、親交が厚く、
共同研究などを行いました。
カウフマンの“At Home In the Universe”
(邦訳 自己組織化と進化の論理)
には、カウフマンがグッドウィン教授に、
影響を受けたときのことが書かれています。

機械論的な視点から研究している、
一般の研究者にとっては、
根本的な自然観の違いから、
受け入れられないとの批判も多く、
特に、利己的な遺伝子を主張する、
リチャード・ドーキンスとは、
お互いの考え方を尊重する一方で、
何度も対談や紙上討論を行われました。

先生は12年前、
イギリスのオープンユニバーシティーで教鞭をとられた後、
シューマッハカレッジに来られ、
様々なショートコースの講師を務めるとともに、
世界で始めての、
ホリスティックな視点での学究を行う大学院である、
MSc. in Holistic Scienceコースを立上げました。
これは、まさにグッドウィン教授の
科学哲学、方法論、研究の集大成であるとともに、
ゲーテ、ホワイトヘッドから続く、
全体論的な視点での研究、
有機体的自然観を、
次の時代に継承する貴重な場となりました。
また、それに複雑系、システム論などを加味し、
自然科学のみならず、医療、社会、経済分野など、
幅広い分野にわたる、
ホリスティックな研究を扱う拠点となりました。

2002年に先生が心臓発作を起こされたとき、
先生は臨死体験に近い経験をされ、
そのことを最後の著書となった、
“Nature’s Due”に書かれています。
この本は、それまでに書かれた本とは違い、
先生の研究者としての枠を超え、
まさに人生の集大成として、
これからの地球で生きる人類のために、
必要となる考え方や視点、
そして、何が大事なのかが書かれています。

グッドウィン教授は、
時代の先を行き、
残された私たちに道を切り開き、
灯火をつけていって下さった方でした。

その偉大な功績と、
我々に多くを残していって下さったことに、
本当に心より感謝申し上げると共に、
ご冥福をお祈り申し上げます。
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