現在では非科学的な悪魔やお化けを恐れる人はほとんどいなくなった(まったくないとは言えぬようだ)が、これは決して、われわれの心の中にある非合理な影の消滅を意味していない。このため、現在の人たちは、がん恐怖症にかかる。いつも合理的に生きている人が、少しの腹痛から胃癌だと自己診断を下し、医者にゆくのを恐ろしがったり、なかには医者の科学的判定を疑ってまで、まだくよくよと心配したりする例は、すぐに見つけ出すことができる。。ここに大切なことは、がんそのものは実在することが科学的に証明されているが、その恐怖の方はきわめて非科学的なものが多いことである。非合理な恐れを、科学的な対象に向けることによって、自分の恐怖心を近代的だと思っている人は、悪魔を恐れて祈った昔の人たちの心性とあまり差がないというべきだろう。われわれは、昔話の主人公たちを笑ってばかりもいられないのである。もちろん、がんそのものは実在し、恐ろしいものであり、われわれはその対策に力をつくさねばならない。しかし、それと、非合理ながん恐怖症とはまったく別物であることを知らねばならない。(「ユング心理学入門」河合隼雄氏著より)
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