簡単に説明をしますと、法律をつくることが決まると省内に「タコ部屋」と呼ばれる法律案作成専門のプロジェクトルームが設けられます。プロジェクトルームと呼べば聞こえはいいですが、ここは一種の生活空間で、大量のカップラーメンや冷蔵庫、仮眠用のソファ、簡易ベッドまで揃っています。チーム員はこの部屋でまさに文字通り「寝食を共に」して、日々、政策立案に対外調整に奮闘します。このころの僕の標準的な生活は、朝9時半ごろにソファから起き上がることから始まっていました。午前中は、前日にチームの担当者が徹夜でつくりあげた条文案およびその説明資料をまとめるとともに、関係資料のコピーを取って対外説明用の資料としてセットします。午後になると、内閣法制局や財務省といった審査部局に政策概要の説明に回るチームに同行し、関係者にメールで共有します。この前後に、しばしば関係省庁と制度間の調整のための交渉が設定され、そこにも随時同行してメモ取りと議事作成を行います。このころには、業務時間(18時15分)をとっくに終えた20時も過ぎるころになっているのですが、そこから審査部曲の指摘事項も踏まえた徹夜の修正作業が始まります。僕の場合、最年少職員として、資料のコピー、国会図書館や省庁の倉庫での数十年前の資料の発掘といった雑用もしなければならず、実際に自分が担当する条文の修正作業を始めるのは23時を過ぎたころでした。深夜1時も過ぎると仕事に嫌気が差してくるので、気分転換がてら経済産業省の地下になるシャワールームで身体を洗い、近くのコンビニで夜食のカップラーメンやチョコレートを買ってきて「タコ部屋」に持ち帰り、チーム員としばしの休憩を味わいます。深夜2時を越えたころからぽつぽつとチーム員が作業を終えてタクシーで家に向かい始め、だいたい3時~4時ごろには条文の修正案出そろいます。たいてい僕と中堅補佐のチーム長が最後まで残ることになり、どちらか力尽きたほうが簡易ベッドかソファにむかいます。そして、また9時30分ごろを迎えるとむくむくと起き上がって、といった生活で、週に1度か2度しか家に帰れない生活をしていました。(「30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと」(宇佐美典也氏著,p80より)
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