自作の俳句

長谷川圭雲

0809健太郎日記健太郎の創作ー拾っちゃダメ(4) 長谷川圭一

2014-08-21 10:08:05 | インポート

「拾っちゃダメ」(4)

            長谷川 圭一

一、二時限目の授業が終って、三、四時限目の空き時間にと思っていたのだが、今井との会話のお陰で、それがすんなりと出来かねる事となった。

「それとも思い切って今、生徒部に持って行って事情を説明しようか」、と健一は悩んだが、授業が始まるとそんな些細なことは頭から消えた。

だが二時限目の授業が終って英語科に帰ると、健一は幾分ぐったりして椅子に深々と坐り、腕を組んでぼんやりと、机上の本棚の様々なファイルの背文字に目をあてていた。

「先生、どうかなさったんですか」と、隣の席の児玉裕子(ゆうこ)が心配げに声をかけた。

「いや、大丈夫です。ただ、ぼんやりしていただけで」

「なら、いいんですけど」

 里見健一は、今井に聞いた定時制の事件を話そうとしたが、喉(のど)まで出かかった言葉を飲み込んだ。言えば、更に自分の首を絞めそうになる気がした。児玉裕子がもっと年配であったら健一は「実は…」と相談したかもしれないが、裕子はまだ新卒で教員になったばかりである。

 空き時間といっても、担任は忙しい。教科としての宿題のチェック、小テストの採点、教材の準備。校務分掌としてのそれぞれの仕事の資料の整理、点検。学年としての修学旅行などの学校行事の準備などあげればきりが無い。それに、担任としてクラスで抱える様々な問題。その上、家庭からの相談もあった。うんざりするほど次々と仕事は湧き水のように湧いてきた。つい先月大きな学校行事の文化祭は終ったばかりであった。

 四時限目終了のチャイムが鳴ると昼食の時間である。定時制は食堂での給食であるが、全日制は家からの手弁当である。弁当の無い者は一階ピロティで販売される出張販売のパン屋へと急ぐ。

廊下は急に騒がしくなり、楽しげな笑いや、時には廊下を走る足音に何事かと眉をひそめる時もある。

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ハセケイ コンポジション(136)・hasekei composition(136)

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