自作の俳句

長谷川圭雲

0809健太郎日記健太郎の創作・行乞の俳人種田山頭火(9)・翁のつぶやき(51)

2013-01-31 08:52:13 | インポート

行乞の俳人種田山頭火(9)

( 行乞のシーンその二)

〈ある裕福そうな家の玄関先で托鉢(たくはつ)のお経(きょう)を読み始める。玄関の戸が開き、五、六歳位の女の子が顔を出す〉

女の子:御免ね、お坊さん。今お母さん留守なの。御免ね、お母さん、中にいるけど留守なの。

山頭火:お母さん、中に居るけど留守なんだね。

女の子:だって、お母さんが、そう言えって、言ったんだもん。

山頭火:ではお母さんが帰って来たら、お坊さんが、こう言ったと言ってくれる。

「正直な子供の心を頂いて帰ります」って。

女の子:うん、御免ね。

山頭火:君はとってもいい子だから、このお菓子をあげるね。(托鉢で貰ったお菓子をあげる)

女の子:有難う。今度お坊さんが来る時は、お母さんに家の中に居る時は「中に居ない」って、言わないように、言っておくね。

山頭火:いい子だね。〈その場を去るとすぐ、一人の老婆が、山頭火に手を合わせて拝み、鉢(はち)の子に一枚の黒ずんだ硬貨を入れる〉

山頭火:財法二施(ざいほうにせ) 功徳無量(くどくむりょう) 檀波羅蜜 (だんはらみつ)具足円満(ぐそくえんまん) 乃至法界(ないしほうかい)  平等利益(びょうどうりやく)・・・・・

(老婆のくれた硬貨を手にし、それが一銭銅貨ではなく黒びた五銭の旧白銅貨である事に気がつき、老婆を呼び止める)

山頭火:お婆さん、こんなに沢山頂いては申し訳ない。一銭で、いいんですよ。これは五銭の白銅貨ですよ。

老婆:あら、まあ、そうでしたか。では、こちらの一銭を二枚入れさせて頂きます。

山頭火:ありがとう 

     *****

0809健太郎日記・翁のつぶやき(51)

     不気味な国民共通番号法案

「国民全員に番号をふり、住所や生年月日、顔写真、給料、医療費などの情報を、政府や自治体がまとめて把握できるようにする仕組み」。

 これが2013・1・29日の朝日新聞朝刊の記事である。その仕組みが完成した時から即座にあなたは全てを、監視されることになる。今では街中や交差点の監視カメラからも人物を特定できる。原子力発電も環境を護るクリーンエネルギーとして国民は洗脳された。

 そしてまた、国民番号制度は、生活保護の不正受給、脱税の防止に役立つと宣伝する。勿論それに異論はないが、民主主義はもともと手間ひまのかかるものである。それを惜しめば、民主主義は吹き飛んでしまう。

役人は横の連絡で生活保護の不正受給、脱税の摘発は出来るはずである。国民全員に番号をふって、国民を番号で呼ぶ(勿論表立ってではなく、裏で)ことだけは是非とも避けたい。 

まさに国民に番号を振る事は、将来に「不気味」な国家を招来することになる。

言論界が真っ先にこれに対して反発すべきなのに、何の反応もない。これが今の日本の言論界の体質なのかもしれない。

 とにかく我々は、「誰が国民の尊厳を奪う、総背番号制度に賛成しているのか」を次の選挙までに見極めていく必要がある。安倍首相には、これよりも最優先の拉致問題の解決に全力を注いでもらいたい。


0809健太郎日記健太郎の創作・行乞の俳人種田山頭火(8)・新かげろうの詩(73)

2013-01-29 10:08:13 | インポート

行乞の俳人種田山頭火(8)

第三場

…・行乞(ぎょうこつ)の各シーン……・・

(一)

(あるカフェー、接待をする女給のいる西洋風の酒場の入り口で托鉢(たくはつ)を始める。

「観自在菩薩(かんじざいぼさつ) 行深般若波羅蜜多時(ぎょうじんはんにゃはらみーたじ) 照見五薀皆空(しょうけんごうんかいくう) 度一切苦厄 (どいっさいくやく)舎利子(しゃりし) 色不異空(しきふいくう) 空不異色(くうふいしき) 色即是空(しきそくぜくう) 空即是色(くうそくぜしき) 受想行識(じゅそうぎょうしき) 亦復如是(やくぶにょぜ) 舎利子(しゃりし) 是諸法空相(ぜしょほうくうそう) 不生不滅(ふしょうふめつ) 不垢不浄(ふくふじょう) 不増不減(ふぞうふげん) 是故空中無色(ぜこくうちゅうむしき)無受想行識(むじゅそうぎょうしき) 無限耳鼻舌身意(むげんにびぜつしんに) 無色声香味触法(むしきしょうこうみそくほう)…・・」

 (女給が三人中から出てくる)

女給一:あら、お坊さんだ。ねえ、お坊さん、寄っていかない。サービスは中でうんとしてあげるわ。

女給二:もらった金、いっぱい持ってるでしょう。ここで使いなさいよ。

女給三:観音様の功徳があるかもよ。さあ、中に入りなさいよ。

〈三人がかりで、山頭火を中へ入れようとする。山頭火、足を踏ん張って、般若心経(はんにゃしんぎょう)の読経(どきょう)を続ける〉

女給一:入らないんだったら、さっさと行っちまいな。

女給二:あんたが居たんじゃ誰も入って来ないんだよ。

女給三:それとも思い直して入ってくれる?

(山頭火、読経を続ける。女三人、お互いに顔を見合わせる)

女給一:とにかく、あげる金は一銭も無いよ。

女給二:私達だって、金を稼ぐためにここで働いているんだからね。

女給三:さあ、とっとと、帰えんな。

〈山頭火、そのまま読経を続ける。女給三人、呆(あき)れたように何か囁(ささや)く。一人が中に入り、出てくると山頭火の托鉢(たくはつ)の鉢(はち)に小銭をいれようとする〉

女給二:あんたの勝ちだよ。

山頭火:有難う、でも、もう、それは貰ったも同然だから、その金は君たちに私からのチップとしてあげるよ。

女給三人:(げらげら笑いながら、去っていく山頭火に、後ろから言葉を投げる)お坊さんチップ有難うね、こんなに沢山のチップを頂いて。

     *****

   新かげろうの詩(73)

心は悲しい風車(かざぐるま)

     旅館を出るとき

     「車で送る」と

     宿の主人。

     

     「景色見て

      歩いて行く」と

      断った。

      

      歩く途中

      ふと雑念。

      「車で行けば良かった」と。

      

      本数少ない

      下りの列車。

      

     それでも雑念


0809健太郎日記健太郎の創作・行乞の俳人種田山頭火(7)・新かげろうの詩(72)

2013-01-27 09:41:47 | インポート

行乞の俳人種田山頭火(7)

山頭火:それは、私です。今でも何故あんな事をしたのか分りません。酔っていたのか、死にたかったのか、何かに怒りをぶつけたかったのか、まったく覚えていないんです。

気がついてようやく自分に返った時、報恩(ほうおん)寺という市内の禅寺に預けられていて、そこで正式に出家しました。

薬売り:よく警察にしょっぴかれなかったですね。確かあの時、電車に乗っていた人の中には急停車でけが人も出たとか新聞には書いてあったはずですけど。

山頭火:まったく、覚えていないんですよ。巡査に、その場を取り繕(つくろ)ってくれた方は、私を寺に連れて行くと、名前も言わずに帰って行かれたそうなんです。

薬売り:でも、あんたは運がよかったよ。普通だったら留置場行きですよ。

香具師:こげんな大人(おとな)しか坊さんでもとんでもなか事をすっとじゃね。俺(おい)はとってもそげんな事は出来(でけ)ん。

山頭火:あの時私はまるで憑(つ)かれたように、走ってくる電車の前に両手(もろて)を挙げて立ちはだかった。それははっきり覚えている。でも、何故そうしたのか、今もって私にも分らない。酔っていたからか、死にたかったのか。

だけど、連れて行かれた寺の住職の望月義庵(もちづきぎあん)師は私に何も聞かず寺に置いてくれた。それで私はまるで無意識に寺の本堂の拭き掃除を黙々とやった。

経を読み、座禅もやった。そして耕畝(こうほ)というお坊さんの名前を授かって、そのお寺から植木(うえき)の寺の堂守(どうもり)になったのですが、一年ほどで田原坂近くのその寺を去り、それから行乞行脚(ぎょうこつあんぎゃ)をしてます。

その植木の寺で詠んだ句がこれです。

(スピーカー)

松はみな 枝たれて 南無観世音

遍路夫婦の女:お坊さん、その俳句どこかに書いて頂けませんかね。

山頭火:いいよ、墨と筆があるから何処(どこ)にでも書いてあげよう。

遍路夫婦の女:では、私のこの白い日本タオルに。

香具師:坊さん、なかなか学があっとじゃなあ。そいじゃ、俺(おい)も久しぶりに田舎のお袋に手紙を書いて貰(もろ)おうか。よかな。

山頭火:では、寝る前に書いてあげますよ。

(スピーカー)

松はみな 枝たれて 南無観世音

     *****

   新かげろうの詩(72)

    水底(みなそこ)の町

     冬の谷川岳の麓(ふもと)

     谷間(たにあい)の地へ

     私はまた

     やって来た。

     

     夕暮れになると

     町が水底に沈んでしまう

     そんな

     ひっそりとした

     温泉の街。

     

     雪の積もった

     白い河原を

     一本の黒い線が

     せせらいで走る。

     都民を支える

     利根川の源流。

     

     私はこの地に

     降り立って

     この風景に同化する。

     

     あと二日

     2013年の新しい年。

     その年を迎える

     心の儀式。

     

     一年の

     心の澱(おり)を

     この水底の町に沈め

     そして

     私は

     新しい年を迎える。

       (2012・12・30 水上にて)

***

 「かげろうの詩」No・1 ~ 54を「旧かげろうの詩」とし、No・55の、本田美奈子さんへのレクイエム(2012・3・15のブログ人、春樹讃歌、の最後に公開)から以降を「新かげろうの詩」と致します。


0809健太郎日記健太郎の創作・行乞の俳人種田山頭火(6)・自作の俳句(49)~(53)

2013-01-25 09:41:47 | インポート

行乞の俳人種田山頭火(6)

山頭火:山頭火といいます。山と頭と火事の火ですね。

香具師:山頭火、あ、こりゃ、山頭火、山頭火、あ、こりゃ…。

薬売り:よし、歌でも歌うか。

「おどま盆ぎり盆ぎり、盆からさきゃ

 おらんど。 盆が早(は)よ来(く)りゃ 早よもどる」

これはここをずっと東の山奥に入った、五木(いつき)村の哀しい歌でね、貧しい村の女の子が口減らしに他所(よそ)へ奉公に出されて、家へ帰りたい気持ちを歌に託したものなんですよ。

「おどま勧進(かんじん)勧進、あん人達や よか衆(しゅう)

 よかしゃ よか帯 よか着物(きもん) 

 おどんが打死(うっち)んだちゅて 誰(だい)が泣(にゃ)あてくりゅか  裏の松山 セミが鳴く」

山頭火:勧進というのは?

薬売り:物乞いをして歩く乞食の事ですよ。

山頭火:じゃあ、私も勧進ってわけですね…

香具師:まあ、似たりよったりじゃな。

遍路夫妻の女:とんでもない、お坊さんは勧進なんかじゃないですよ。

山頭火:いや、私にぴったりの歌ですよ。

香具師:よし、今度は俺(おい)が『田原坂(たばるざか)』を歌(うと)で。

 『雨は降る降る 人馬(じんば)は濡れる 越すに

越されぬ 田原坂

 右手(めて)に血刀(ちがたな) 左手(ゆんで)に手綱 馬上(ばじょう)豊かな 美少年 シャカホイ シャカホイ』

こん歌は、西郷隆盛の軍が、官軍に負けて田原坂を瀕死の重傷を負いながら撤退していく時の歌じゃ。

山頭火:私は五年程前、その田原坂のある植木(うえき)村の味取(みとり)の観音堂で堂守(どうもり)をしていたんです。

薬売り:山頭火・・・山頭火・・・、あなたは何、山頭火って言うんですか。

山頭火:種田です。

薬売り:たねだ、たねだ、種田山頭火、もしかして、確かあれは五年ぐらい前の事だったな。あの新聞記事は今でもはっきり覚えている。もしかして、あなたは熊本の市内で路面電車を止めませんでした?

走ってくる電車の前に両手を上げて。

遍路夫婦の女:まあ、怖い。そんな事をこのお坊さんがする訳がないじゃありませんか、ねえ、お坊さん、そうでしょう。

***

健太郎自作の俳句(49)(50)(51)(52)(53)

  べた雪で 渋谷駅前 池となり

  ドカ雪で 渋谷駅前 シャーベット

  初雪が 手荒く迎える 成人式

  初雪の ドバリと降りて 成人式

  成人式 急なドバ雪 初試練

      (いずれも2013・1・14)

***

成人式の日渋谷駅前で晴れ着姿の女性たちが悲鳴をあげている姿を目にして同情しながら詠んだ句です。


長谷川圭一

2013-01-24 15:20:07 | インポート

長谷川圭一 

昭和19(1944)112日中国、旧満州国奉天省鞍山にて出生。昭和21(1946)8月中国遼寧省南西部葫蘆(ころ)島より博多へ引き揚げ、父の郷里鹿児島県伊佐市(旧大口市)へ。県立加治木高等学校。北九州市立北九州大学外国語学部米英科。卒業後一時丸の内の外資系旅行会社帝国ホテル内営業所にて旅券、ビザ、航空券等の業務。退社し郷里鹿児島へ。昭和44(1969) 9月品川区立中学校教諭。昭和46(1971)1031日 銀座中央通にて、やなせたかし氏に「長谷川圭一さん(27)」の素描による肖像を描いてもらう。昭和47(1972) イギリス・ロンドンの語学学校のサマースクール自費参加。昭和50(1975) 大田区立中学校へ転任。昭和53(1978)年結婚。昭和54(1979) 都立高校教諭(品川)。同年大田区から川崎市中原区へ転居。昭和557月~8月 ソ連ナホトカ経由でロンドンへ。昭和56(1981) 1月長女誕生。昭和57(1982) 4月長男誕生。昭和62(1987)年世田谷区の都立高校へ。平成10(1998) 目黒区の都立高校へ。平成16(2004) 同校定年退職。中野区の都立高校へ嘱託勤務。平成20 (2008) 3月嘱託退職。現在横浜市都筑区在住。

著作:高校生のモラル:昭和49(1974)自費出版:国会図書館所蔵

   かげろうの詩:昭和52(1977) 自費出版:国会図書館蔵

   漱石と龍になった少年:平成22(2010) 自費出版:国会図書館蔵

   同上英語版:Kegon Dragon Boy and His Teacher Natsume Soseki.

0809健太郎日記:平成22(2010) 自費出版:国会図書館蔵

ブログ発表

 201196日~2012315日:ブログ人にて「0809健太郎日記番外編・

勝手に春樹讃歌1Q84」。「勝手に春樹讃歌1Q84BOOK2」より昭和52 (1977) 出版の「かげろうの詩」を順次添付掲載。BOOK3・30章で完了。BOOK3・31章の最終章よりNo.55・本田美奈子さんへのレクイエム」として新しい詩を旧詩集の「かげろうの詩」のタイトルまま継続発表。201241日~20121012『0809健太郎日記本文公開』。同時に詩No.55についでNo.56から継続公表2012年4月7日より『健太郎自作の俳句』も同時公表。413日から『健太郎日記翁のつぶやき』を加える。平成24 (2012) 121日、3『小さな謀反』の短編小説発表。平成24 (2012) 125日より 絵のコレクションを「健太郎コレクション」として公開。平成25 (2013) 115日より『0809健太郎日記健太郎の創作・行乞の俳人種田山頭火』の公開開始。