小論講師の徒然草

大学受験予備校で小論文を教える者が日々思うところを徒然に…。

広島平和宣言…続き

2007年08月09日 00時29分50秒 | 時事ネタをぶつぶつ
昨日の続きです。

今年の広島平和宣言の全文に目を通しました。感想は、ものすごく「強い」表現であること。言葉遣いから、強いメッセージを伝えたいと言う意図がうかがえます。

例えば、「時代に後れた少数の指導者たちが、…(略)…、20世紀前半の世界観にしがみつき」というフレーズ。「20世紀前半の世界観」というのは、帝国主義世界観を指します。その時代、列強各国は力による支配を目指して植民地争奪戦を展開したんですね。その過程で各国の利害が対立し、2度にわたる世界大戦へと発展していったのです。「時代に後れた少数の指導者」が誰を指すのかは解釈が分かれると思いますが、後に「米国の時代遅れで誤った政策」と言っていることから、ブッシュ大統領は含まれるのでしょう。国連決議なきままに、イラクが大量破壊兵器を保有しているとして(実際は見つからなかった)、イラクに侵攻したことなどを指して「時代遅れで誤った政策」としているのでしょう。

それから、「唯一の被爆国である日本国政府は、まず謙虚に被爆の実相と被爆者の哲学を学び」「世界に誇るべき平和憲法をあるがままに遵守し」というフレーズも登場します。ニュースを見ていたら、広島市長がこの言葉を発した瞬間、カメラを列席の安倍首相に向けました。その時安倍さんは…、うつむいたまま。「(原爆は)しょうがない」発言に対する遺憾の念もあったでしょうが、改憲を進める立場として、広島市長を直視できなかったのだと思います。広島市長が「世界に誇るべき平和憲法」と賞賛した日本国憲法を、今まさに、初めて改正しようとしているのです。

日本国憲法は、戦後間もない1947年に施行されて以来、一度も改正されていません。もちろんこの間、改憲論議は絶え間なく展開されていましたが、それは実際に憲法が変わる、という前提ではされていませんでした。なぜなら、改憲のための法律がなかったからです。しかし、安倍さんは、本年5月14日、その改憲のための法律(国民投票法)を、半ば強引に成立させたのです。「世界に誇る平和憲法」を変える準備が整ってしまったのです。これが、広島市長の強い口調と、カメラのアングルと、安倍さんのうつむきの真相。

今回の広島平和宣言には、このような意味が込められているのです。広島市長のメッセージが皆さんにも伝わったかな?明日は、今まさに変わろうと(変えられようと)している憲法についてお話します。では。

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2 コメント

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Unknown (りーさん)
2007-08-09 20:36:39
核兵器の無い世界はいつくるのでしょうね…



僕は、昨年の長崎市長の平和宣言文の「人間は一体何をしているのか。」という文章。これが今の世界を表す言葉にふさわしいと感じます。



うちの大家さん、うなぎ屋です!
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2007-08-10 01:36:20
それもまた強烈な言葉だなぁ。特に今回の長崎の平和宣言は、重いメッセージでしょう。現職市長が刺殺され、長崎選出の議員であり閣僚であった人が「原爆はしょうがない」と言ったわけですから。長崎市長の平和宣言は、近いうちに原文を精査しようと思っております。

うなぎ屋か寿司屋に生まれたかった…。
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