小論講師の徒然草

大学受験予備校で小論文を教える者が日々思うところを徒然に…。

外国人看護師・介護士の受け入れの問題

2009年04月25日 00時18分54秒 | 時事ネタをぶつぶつ
インドネシアとの経済連携協定(EPA)によって昨年に来日したインドネシア人看護師候補が初めて国家試験に挑んだものの、全員不合格であった、その理由は日本語の障壁である、ということが報道されていました。今日は、この話題を。

我が国の医療・介護職は深刻な人手不足。医師不足は皆さんもご存じでしょう。看護師も、目下3万7000人が不足していると言われ、介護士も04年からの10年間で、新たに40~50万人が必要だと言われています。高齢化が進み、医療・介護のニーズが増大しているわけです。

そこで、日本政府は昨年の5月にインドネシア人の看護師と介護士を受け入れるという協定を結んだわけです。母国の資格を持ち、2年以上の実務経験ある人を対象に日本に呼んで、日本の国家試験に合格したら日本で活躍してもらう、という内容。その第1回の試験の結果が出たものの、全員不合格だったわけです。

さて、まずそもそも外国人の医療・介護職を受け入れるべきかという点が問題になりますが、これには有力な反対説があります。「日本人看護師・介護士の労働環境が悪化する」という主張。確かにその通りでしょう。おそらく、日本人の看護師・介護士より、外国人の方が待遇は劣後します。そうすると、いわゆる相場が下がっていって、いずれ日本人の看護師・介護士も「買い叩かれる」ようになる。それは避けなければいけない。

しかしながら、講義で紹介した視点を思い出しましょう(小田原の皆さんは今日)。外国人看護師・介護士の受け入れは、「何のため」にするのか?それは、人手不足問題の解消、ひいては、医療の充実のため。とすると、待遇という視点からの反対論は必ずしも説得的ではない。それよりも、国民全体の見地から、医療の充実をはかることが必要。

もっとも、「言語」の問題は重要。医療・介護は、コミュニケーションが重要な仕事(だから医療系学部では小論文や面接を課す)。コミュニケーションの失敗は、医療ミスを招来しかねない。そんなことになったら、医療の充実という目的に相反することになる。だから、この点はしっかりと手当てをしなくてはいけない。

なお、「外国人労働者の受け入れ」については、非常に激しい議論がなされています。これまた頻出テーマですので、夏期講習か後期の本科講座で扱います。

そもそもこの問題、適正なマンパワーの配置ができない政治の責任は大きいと思います。医師不足、看護師不足、介護士不足、しかし他方で、歯科医余剰…。その他の分野も同様にバランスが取れていない分野は多い。スポーツでも同じですが、「足りなければ外国人助っ人を…」というチームはなかなか強くならないのです。坂本、山口、越智、山口、東野、松本あたりをきっちり育て上げていったらやっぱり強いのです。

(参考文献)

「日本の論点」
「医療・介護CBニュース」


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
分野的に…… (オンバト)
2009-04-25 02:38:10
ピッタシな大学なので、つらつら書き込みます。

私は、現在介護福祉士を目指して勉強してますが、介護福祉士を目指す人は減っています。

それは、ズバリ「労働に対しての見返り」なんじゃないかと私は思います。

夜勤などもある介護福祉士の給与は、平均の6~7割程度でしかないにもかかわらず、その労働は結構過酷。自分の生活すらままならない人も多くいます。そのため、離職率も高いです。

しかし、お役所は給与を改善しようとはしません。(しようとしてるつもりはしてますが……)

そんなこんななのに、日本人よりは賃金の低い外国人看護師・介護士なんて呼ばれたら、たまったもんじゃないです!!

単純に数が足りないのではないです!!(この先は、そうなりそうですが……)

だから某巨人みたいに、外国人を助っ人で呼べばいいという考えはやめて、某広島のように、いる人材を大切にするようにすべきだ。


以上、長々と書かせてもらいましたm(__)m(←ホントはもっと書きたかった………)
返信する
 ()
2009-04-25 03:08:27
介護福祉士の場合はそうですね。もう、散々言われてますね。

「労働に対する見返り」=「報酬」って、金額が大きい必要はない(私はそう思う)けれど、最低限はないとできませんからな。

介護保険法は成立したけれど、規制緩和以降、ひっちゃかめっちゃかになっています。介護の仕事って、これやっぱり規制緩和に適さないと思うんですよね、私は。鉄道、電話、タバコ、高速道路、郵便局と違って、生存権に関わる分野ですから。

で、現行の介護保険法下では私人が行う事業としてビジネスモデルが描けない。その結果がコムスン事件。病院はお客(患者)の回転が早いし、また客単価が高いけれど、介護はそうはいかない。

しかしながら、介護は、元東大総長・小宮山先生の言うところの「課題先進国」において、まさにこれから世界中で直面する課題。まずは制度的に、少なくとも、無理なく存続する形で確立せにゃならん。現行よりも国庫負担割合を高めるのが安直な解決法ではあるけれど、これからさらに進む高齢化時代に存続できるものでないと。年金のように破綻が危ぶまれる制度になってはいかん。国も道路や箱モノ、果ては現金ばら撒きなんぞしている場合じゃありません。

オンバト君は次の選挙の投票権はあるのだっけ?今、各党とも(いつ来てもおかしくない)来る天下分け目の衆院選に向けて、マニフェスト作りの時期ですから、ぜひ各党に意見してみてください。各党HPから簡単に意見投稿できます。結構、リアクションがあるものです。私もたまに意見しますが、与党第一党も野党第一党もけっこうちゃんと返信くれます。もっとも、選挙直前のこの時期はどうかわかりませんが。で、できあがったマニフェストをよく見て、比べて、投票してください。介護の問題は、前回の参議院選でも各党ともマニフェストで触れていました。

オンバト君のような人材が、我が国の介護・福祉を背負って立つ人材になれば、私も安心して歳を取れます(笑)期待しております。

追伸)

今年、「外国人助っ人」チームはオリックスでしょう。某広島だと、主力になったら某阪神に行ってしまいますからなぁ。

あ、そうだ。「某予備校…」のくだりはカットしました。受講生も見ているのでダメー。
返信する
報告 ()
2009-04-25 16:38:56
2007年の夏藤枝で教わったKです。    報告が遅くなりましたが1浪して第一志望に受かりました。
今年は藤枝に映像配信してるんですよね?!
駅前に映画館ができたりなどいろいろ進化してるのでまた授業で来てくれたらと思います。
返信する
 ()
2009-04-26 01:05:41
302教室の、私から見て最前列の一番右にいらっしゃったKNさんかな?

合格、おめでとうございます!一年頑張って、立派!

藤枝は受信校舎で、発信は静岡校です。当時、藤枝校にいたS木さんがクラス担当で、楽しくやっております。S木さんは元気いいですからぁ。

藤枝に映画館ですかぁ。ほほーう。シャンボール・カフェに置いてある、冶一郎のバウム・クーヘンもまた食べたいなぁ。静岡には毎週通うことは確定しているのですが、久しぶりに藤枝にも出講したいですな。毎回発信校舎を変える、なんてことはできないですかね?撮影用のカメラは静岡にしかないので無理なのでしょうけど。夏期講習も静岡から配信の予定なので、可能性があるとすればテーマゼミや直前講習かと。ならば、プライベートでふらっと行ってみますか(笑)

大学での4年間、ぜひとも充実したものに。やりたいことはやれるだけやってください。そして、静岡校でしたら、毎週おりますので、ぜひぜひふらっと。S木さんやS藤さん、英語のT先生もいらっしゃいます。

当時、隣に座っていたNさんなんかは元気してますかねー?
返信する
ありがとうございます (K)
2009-04-26 01:56:48
おぼえててくれたんですね~
そうです。一番右でした。
映画館だけでなくお店も入った大きな建物ができたんです。シャンボール・カフェのある南口にあるのでバウムクーヘンを食べた帰りにぜひ♪時間があったらふらっと行きますー
Nは元気ですよー!先生に会いたがっています。
返信する
 ()
2009-04-26 12:44:03
覚えてますよー。あの時の藤枝校は少人数クラスでもありましたし、突然花火が打ちあがったり、印象に残ることが多かったですからね。

「ふらっと」をお待ちしています。出講予定は一番上の記事の通りですー。
返信する