はんたろうのがらくた工房

えーと、えーと…。

やぶから生まれたやぶ太郎

2004-10-13 20:25:02 | 嘘部(うそべ)
むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、むこうに大きな薮がありました。
どのくらいの薮かというと、なにしろ選挙をしたのに、誰が何票取ったのか、数もきちんと数えられないほどの深い薮でした。
そういう薮の中から男の子が生まれました。薮から生まれたので「やぶ太郎」と名付けられました。

ある日のこと、大きくなったやぶ太郎は言いました。
「おじいさん、おばあさん、ぼくは鬼が島へ鬼退治に行きます」
「やぶ太郎や、鬼退治といったって、鬼が島の鬼たちは、べつに悪いことはしていませんよ」
すると、やぶ太郎は言いました。
「いいえ、あの鬼たちは人をおおぜい殺す武器を作って、攻撃する機会をうかがっているのです。だからなんとしても、退治しなければなりません」
村のみんなは声を揃えて、もう少し待ってはどうかと言いましたが、やぶ太郎はひとりで鬼退治に出かけてしまいました。

やぶ太郎が 、鬼が島に向かってずんずん進んでゆくと、一匹の犬に出合いました。
「もしもしやぶ太郎さん、どこへ行くのですか」犬は聞きました。
「鬼が島に、鬼退治に行くのです」やぶ太郎は答えました。
「それではお供をいたしましょう、お金もいっぱい出しましょう」犬はしっぽを振って言いました。

やぶ太郎と犬がずんずん進んでゆくと、今度は一匹のさるに出会いました。
「もしもしやぶ太郎さん、どこへ行くのですか」さるは聞きました。
「鬼が島に、鬼退治に行くのです」やぶ太郎は答えました。
「それではお供をいたしましょう」さるもすぐについてきました。

鬼が島に着いたやぶ太郎は、たくさんのざんこくな方法で鬼を苦しめました。
やがて 、やぶ太郎は鬼の大将をつかまえて、大勝利だと言いました。
けらいの犬は、安全な後ろのほうで見ているだけでした。

さて、鬼が島では、大将とその息子たちはいなくなりましたが、いまだにあちこちで戦いが続いています。
時間をかけてよく調べたところ、やぶ太郎がはじめに言っていた、ひとをたくさん殺す武器など、はじめからなかったことがわかりました。さるも、まちがっていたと言いました。
でも、やぶ太郎は「鬼は悪い奴だからやっつけてもいいんだ」と言い続けています。
いぬは、あいかわらずやぶ太郎の下でぺこぺこしています。
人生いろいろなのだそうです。

めでたくない、めでたくない。


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